<前回までのあらすじ>
今年から茶屋高校に入学する玄田 望は、バラ色の高校生活を夢見るごく普通の女子高生。
しかし、おばあちゃんの言いつけを守らなかったがために、茶道部部長の緑沢 朗に朝からつきまとわれることになる。
なんとかその場を乗り切り、教室にたどり着こうとするも、学生証を人質にとられてしまった望は
緑沢と決着をつけるために茶室へと向かうのであった…。
「あのやろう…見つけたらただじゃおかないんだからっ…」
あれから、私は茶室を探して校内を歩きまわっていた。
しかし、さすが元名門校…敷地の広さが半端ない。
そして、今日入学してきたばかりの自分には、どの建物が茶室なのかも分からない。
イライラが募り、時間だけが過ぎていく。
「あぁ、もう!!何でこんな大切な日に!!」
…キーンコーン…カーンコーン…
校舎からチャイムの音が聞こえる。
もうすぐ、入学式が始まるのだろう。
「…疲れた。」
私はため息をつき、思わず近くにあった桜の木の下に腰をおろした。
どうして、私ばかりがこんな目にあわなければならないのか。
ただ、私はこの高校でミラクルロマンスな生活を送りたいだけなのに…。
そんなネガティブな思いばかりが私の頭の中をぐるぐる回る。
と、その時
「疲れた時には、緑茶が一番さっ!!」
湯のみを片手に、探していたあの男が木の蔭から現れた。
「あっ!生徒手帳泥棒っ!!」
私はそう叫び、緑沢の胸ぐらをつかんだ。
こう見えても、空手を習い始めて10数年。
腕っ節には自信がある。
「ちょ…緑茶が…」
「はぁっっ??(こんな時にもお茶の心配かよ!!)」
はじめから変なやつだとは思っていたが、本当に緑沢という男は変人のようだ。
「それよりも、私の生徒手帳を返して下さい!!」
さっきまでのイライラがまたぶり返し、自然と私の手にも力が入る。
「あぁ、返す…返すから。手を…首が、しまっちゃう…」
「あ、動かなくなった。」
これは、本気でしめすぎたか…と思い私は慌てて手を離した。
すると、
「はーっはっはっは!!油断したな!玄田君。生徒手帳を返してほしくば茶道部の部員になるんだ!」
突然、緑沢は元気になり、私の前で仁王立ちになった。
そして、
「受けてみよ!幸福茶柱ビームっ!!」
という変な掛け声とともに、急に湯のみが妙な光を放ちだした。
「な、なに…この光…」
いきなりの展開に、私は何回かまばたきをした。
「ふふふ…どうだ!これは我が最終奥義、幸福茶柱ビーム!」
「幸福茶柱ビーム…!?」
なんて、ダサいネーミングなんだろう。
私は、何だか怒る気力も失せて、緑沢を冷たい視線で見る。
しかし、緑沢は私の冷めた視線なんておかまいなしに、解説を続けた。
「そうだ。この湯のみから放たれるオーラはすごいんだぞ…なんと!」
「なんと?」
「なんと…俺が幸せになれるのだ!」」
私は、思わずずっこけそうになった。
ここまでもったいつけておいて、自分自身を幸福にさせるだけとは、何て使えない最終奥義。
もしかしてこの人、本当にバカなんじゃないのか?
今までの怒りが、緑沢のこの行為によって爆発した。
「ふざけんなぁっっ!!何が幸福茶柱ビームじゃいっ!!」
私の怒りの鉄拳が緑沢の頬にクリーンヒットする。
「ぐふぁぁっっ!」
軽く2~3mは飛ぶ、緑沢の体。
「まったく…世話やかせるんじゃないわよ…。」
足もとに落ちていた自分の生徒手帳を拾った私は、茶室を後にした。
「おばあちゃんが言っていた…色男は茶漬け飯ってね。」
<次回予告>
緑沢との決着も終わり、ようやく夢の高校生活に一歩踏み出した、望。
しかし、緑沢はまだあきらめていたわけではなかった。
果たして、望は茶道部に入るのか!?
次回、「親の甘茶が毒となる」。
お楽しみに。
<第二話 色男は茶漬け飯 完>
-
-
最終更新:2009年09月21日 17:30