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無題

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無題【むだい】

甜歌


俺ははっきり言ってモテる方だと思う。
――…確信は無いけれど。



「甜ちゃん!」

ぶらぶらと歩いていると前方に見慣れた後ろ姿を見付けた。
高いような低いような背丈、少し派手めの服。
あれは紛れもなく、甜ちゃんだ。

「あっ、のんちゃんー!」

やっぱりね。
俺は甜ちゃんに手を振って歩み寄ろうとする。
"とする"。

そう、そこから動き出す事は出来なかった。

「…望くん」

俺は後ろから凛に抱き付かれていた。

凛の体は小さい。そして俺は大きい。
だから甜ちゃんからは見えなかったんだと思う。
不思議そうに、俺を見ていた。

「り…凛?どうしたの?」

なるべく前方を見たまま話し掛けた。
凛は何も喋らない。

甜ちゃんが駆け寄って来ないのがせめてもの救いだ。
「ごめん、用事思い出した!」
そう叫ぶと、甜ちゃんはばーか。と言いながらまた歩き出す。

姿が見えなくなったのを見計らって、俺は凛に向き直った。

「…どうしたの」

膝をついてしゃがむ。
凛はようやく俺から離れて俺の顔を見た。

「あのね、次元くんと…」

そこまで言い掛けて、凛はまた黙った。

無理に聞く事も出来ない俺は、凛の頭を撫でる。
すると、少し嬉しそうに微笑んだ。

本当は七割方甜ちゃんを追い掛けたかったけど、
今は凛の傍に居てあげる事が俺の出した答えだ。

俺ははっきり言ってモテる方だと思う。
――…兄として。

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