無題の凛視点【むだいのりんしてん】
次元くんが好きな訳じゃない。
好きな訳じゃないけど――…
好きな訳じゃないけど――…
今日は友達と映画を見に行った。
あんまり慣れないけど、可愛い服を着たりちょっとお化粧なんかもしちゃったりして。
映画は楽しかった。
あんまり慣れないけど、可愛い服を着たりちょっとお化粧なんかもしちゃったりして。
映画は楽しかった。
でもその帰り道は、全然楽しく無かった。
「だーから、あたしはわざと冷たくしてるの!」
曲がり角から声が聞こえた。
このハスキーボイスはきっとことりちゃん。
このハスキーボイスはきっとことりちゃん。
そのことりが出した名前は…次元くん。
「でも、ことりの冷たさは愛情があるよ」
声だけで分かる。
次元くんが嬉しそうに笑ってること、声だけで。
次元くんが嬉しそうに笑ってること、声だけで。
「そうかなあー?」
何だかちょっと胸が痛んで、
思わずその場を引き返した。
思わずその場を引き返した。
何で逃げちゃったんだろう。後ろめたい事なんて無いのに。
暫く走ると、今度は望くんを見付けた。
「り…凛?どうしたの?」
もう無我夢中で望くんの背中に抱き付いていた。
自分の気持ちを押し殺すように。
望くんは困ってたみたいだけど、あたしの相手をしてくれた。
自分の気持ちを押し殺すように。
望くんは困ってたみたいだけど、あたしの相手をしてくれた。
「次元くんが…」
そこまで言うと、後に何て続けて良いのか分かんなくなって、
黙り込んだ。
それでも望くんは頭をよしよしって撫でてくれて。
黙り込んだ。
それでも望くんは頭をよしよしって撫でてくれて。
明日からは頑張らなきゃって、思ったんだよ。
望くんごめんなさい。
望くんごめんなさい。
次元くんが好きな訳じゃない。
ただちょっと、胸が痛んだだけ――…。
ただちょっと、胸が痛んだだけ――…。