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花火

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yariba

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花火【はなび】

公輝、千帆


「お、良いものやってんじゃん」

私が一人で線香花火をしていると、誰かの足音が聞こえた。
前方で止まった事を確認して顔を上げる。
そこには、公輝の顔があった。

「えへへ…えと、公輝もやるっ?」

正直一人で花火なんて虚しいって思ってたから、人が来て嬉しい。
しかもそれが公輝だなんて、数倍嬉しい。

うん、俺もやるー。って、子供みたいな無邪気な笑顔で手を伸ばして来た。
これはつまり、その、私から渡せって事。

手が触れたら、どうしよう。

「あっ…は、はい」

少し上擦った声を出しながら線香花火を一本、公輝に渡す。
幸い手は触れなかったけれど、内心どきどきだ。

「さんきゅー」

嬉しそうににこっと笑って、公輝は傍に置いてあったライターで火をつけた。

男の子が線香花火持ってるのって、結構綺麗かもしれない。
公輝の姿を見て、初めて思った。

「あ。どっちが長く持つかやろうぜ!」

漫画で言うと豆電球がパッてついたような、閃いた表情を浮かべてそう言った。

「うん、良いよ」

そう頷くと、袋の中から新しい線香花火を二本出す。
一本差し出そうと手を伸ばすけど、公輝はいらない。と首を横に振った。

「俺はこのままやるから、千帆は新しいの使えー?」

「え…うん」

よく意味が分からなくて首を傾げるけど、取り敢えず私だけ新しい線香花火を持つ。

「よーい…スタート!」

公輝のかけ声で、私達の小さなたたかいが始まった。

「うえーい、うえーい」

棒読みでそう言いながら、公輝は私の肩を少し揺らす。

か、肩が触れてます公輝!

なんて想いを隠しつつ、ちょっとやめてよー。と苦笑する。

それでも私の花火は消えなくて、暫くして公輝の花火が落ちた。

「あっちゃー、しくったー」

「私のこと揺らすからだよ」

くすくす笑いながら公輝の肩を揺らし返すと、公輝はフッと柔らかく笑った。


だってさ、長く持った方が願い事叶うんだって。
千帆、願い毎あるんだろ?
公輝はそう言って、最後の線香花火を手に取った。

(私の願い毎は、もう叶いました。)

(公輝と一緒に居れますように、って。)

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