驚かないでください【おどろかないでください】
俺が何をやっても、あの人の隣には行けない。きっとあの人は俺の事なんか見えてないし、最愛の人がいる。
「…あ、なぁ稜駿ー。」
おいでおいで、と動かす手につられて小走りに近付いてみる。
「稜駿はどっちが可愛いと思う?」
テーブルの上に広げられた雑誌には今をときめくグラビアアイドル。毎日毎日飽きないのかこの人は。
「…またですか」
こっち、と指を指すと驚いたような目で見上げられた。こんなに目が合う事今まであったかな。
「稜駿って好みまで公輝と似てんのなー」
「2択なんですから偶然でしょ」
瑛士さんとはいつも意見が合わないみたいで、公輝みたいって言われて笑われる。不思議と嫌じゃないんだけど、どっかに複雑な気持ちがあったり。
「いやー…稜駿くん。公輝そっくり、言う事とか発想とか」
「どっちみち発想じゃないですか」
「そこ!そゆとこ!」
公輝さんと似てるんなら、俺とも遊んでほしい、見てほしい。
「僕でもいいんじゃないですかね」
そう言うと、その人は優しく微笑み「そうかもな」と頭を撫でてくれた。