無題7【むだいせぶん】
最悪の寝起き、だって起きたら公輝の周りに人。今日の控え室は人が多くてごちゃごちゃ、それはいいけど、なんでよりによってコイツらがいるんだ。俺が寝てる間にふざけんなよ。…とも言えず、俺は鞄の中にあったゲームに手を伸ばす。ああ、早くこの時間が終わればいい。
「公ちゃん俺ね、いっぱいチョコ貰ったんだ!これ、公ちゃんにあげる」
「うっそ、まじで?ありがとー。」
「うっそ、まじで?ありがとー。」
ハート型ですか。しかも「本命!」と大きく書かれた大胆なチョコ。それくれた女の子が可哀想だが、翼くんの気持ちそのものなんだろうね。
「公輝さーん、俺公輝さんとカラオケ行きたい」
「行こ行こ、暇な時行こうな」
「行こ行こ、暇な時行こうな」
小さい体を押された翼くん、可哀想だぞ稜駿。どっちもにこにこ笑いやがって。
加藤さんだって見たくないからって寝たふりして、貧乏揺すりでバレてますよ。シャイなのかな。いつもは公輝といちゃいちゃしてるくせに。
「公輝、今日この後暇?飯行かない?」
「あ、いいね。二人で?」
「もちろん二人で」
「あ、いいね。二人で?」
「もちろん二人で」
肩抱く必要はないよな斗真。稜駿も翼くんも後ろですげぇ顔して睨んでるよ。加藤さんも斗真の声聞いて気になったのか公輝の方を向き薄く目を開けて確認してる。おかしいだろこの状況、公輝もずっと笑顔だし。
でもみんなの知らない公輝を知ってるのは俺だけ。見た事のない顔だって、聞いた事ない声だって、この中で俺だけしか知らない、多分。
ゲームの電源を切り雑に置くと、大きな音を出し立ち上がる。みんなの目線が俺に集まる
気がつけば公輝の腕を掴んで、人のいない部屋へ向かってた。
これから、俺しか知らない公輝を見て、勝ち誇る。バカみたいに誘わなくてもチョコあげなくても、俺だけの公輝なんだ。