恋のお話【こいのおはなし】
うちには、好きな人がいます。
一緒にいたら楽しくて、いつの間にか好きになってた。今は姿見るだけで緊張してまうし、前より会話も少ない。独占したいわけじゃない、いっそ誰かがあの人とできれば、うちはきっと諦めれる。
って思って、今日も待ち時間を散歩でつぶす。
ベンチに座って雲見上げても、くだらん事が頭ん中でぐるぐる。今ぐらいは忘れたいのに、アホやんうち。
目を閉じて、今日も頑張れますように、と心で唱え。目を開けた時にはもう忘れられますように!と強く念じる。
「何してんのスズチン様」
鼻から空気を吸い目を開けたら、空じゃなくてリョウマ君。
「えっ、何、え、あ、ちゃうねん」
びっくりしすぎて声ひっくり返った、ていうか何よこの状況!うち苦手やねん、こういうの。
「焦りすぎでしょ、何してんの」
「…そら焦るやろ、ほんまびっくり」
「…そら焦るやろ、ほんまびっくり」
念じたのに、なんでなん。むっちゃ笑われてるし…ていうか横座ってるし。
「スズカいつもここ来てんの?」
「いつもじゃないけど、散歩はしてるからたまにね」
「へー…」
「いつもじゃないけど、散歩はしてるからたまにね」
「へー…」
あかん、全然見られへん。平常心平常心平常心。
「スズカってさ、他の女子となんか違うよね」
「なにそれ」
「あ、怒った?」
「怒ってへん、どーせうちはがさつですよ」
「怒ってんじゃん」
「うっさい、ばんだむ」
「あはは、ごめんごめん」
「なにそれ」
「あ、怒った?」
「怒ってへん、どーせうちはがさつですよ」
「怒ってんじゃん」
「うっさい、ばんだむ」
「あはは、ごめんごめん」
上手く笑えへん。これじゃただの冷たい女やん。…でも嫌われた方が、いいんかな。
「…ナナカちゃん、待ってるんちゃう?」
「え、なんでナナカ?」
「いや、なんとなく。」
「え、なんでナナカ?」
「いや、なんとなく。」
このまま、嫌われてしまえうち。笑ってしまうぐらい最低や。
「ナナカと俺が付き合ってたらどうする?」
嫌、むっちゃ嫌。お似合いやから余計嫌。でも付き合ってたら諦めれるし…、でもでもでもでも。
「いいんちゃう?ほら、お似合いやし、うちもう付き合ってる思ってたし、周りのみんなも、きっと、…あれ…?」
「あ、泣いた」
「あ、泣いた」
バカアホ、うち。困らすだけやん、なに泣いてんねん。なんで泣くねん。
「あ、あれ、目にゴミ入ったなぁ」
「あはは、はい嘘ー。」
「うっさいー!」
「あはは、はい嘘ー。」
「うっさいー!」
あかん、涙止まらん、弱すぎやうち。
「泣きすぎ」
「うるさい」
「なんで泣いてんの?」
「知らん」
「かわいー」
「うるさい」
「かわいー」
「なんなんよ」
「俺スズカの事好きだよ」
「…は?」
「話しやすいし」
「それはどうも!」
「え、もう行くの?」
「うるさい」
「なんで泣いてんの?」
「知らん」
「かわいー」
「うるさい」
「かわいー」
「なんなんよ」
「俺スズカの事好きだよ」
「…は?」
「話しやすいし」
「それはどうも!」
「え、もう行くの?」
立ち上がって早歩きすれば、リョウマ君もついてきた。うちはきっと忘れられへん。これからもずっと、好きやと思う。でもいいねん、これからは積極的に頑張れるかも。
「うちも好き、です」
(種類が違う好きでも、その事実だけが幸せです)