迷うのは呼び方と【まようのはよびかたと】
昌暉、瑛士
「えーいじさんっ。」
「あ、えーっと…矢部君」
「まーくんです!」
「あ、えーっと…矢部君」
「まーくんです!」
記憶力が悪いのは知ってる、自分で言ってたから。だけど、覚えてほしくてあんなに名前を連呼したのに。何処か悔しい気持ちを抑え、楽しい風が舞い込みますように。
「矢部君、これさぁ」
「まーくんじゃないと返事しませんからね。」
「…矢部君」
「大先輩」
「まーくん!」
「まーくんじゃないと返事しませんからね。」
「…矢部君」
「大先輩」
「まーくん!」
先輩のくせに先輩と呼ばれるのが嫌いな事。ほんとは馴染みたいくせに誰にでも壁を作る事。
全部分かる、丸分かりですよ先輩。
全部分かる、丸分かりですよ先輩。
「えいじ先輩」
「返事しませんよ。」
「えいじ先輩」
「返事しませんよ。」
「えいじ先輩」
あんなにかっこよかった先輩。こんなに可愛くなっちゃって、年上とはいえぐちゃぐちゃにしてしまいたい。
「えいじ先輩、今日から僕と」
ハッとした顔にまたそそられる。バカじゃん、って笑って言ってくれたけど、冗談なんかじゃないんです。
(甘い遊びを始めませんか?)