無題20【むだいにじゅう】
今は後悔しかしていない。いつもは笑って過ごしているから、冗談だよと言えば笑ってくれると思った。君の泣き顔を見た時には、あぁもう遅いんだと掴もうと伸ばした手は空を切る。バタバタと出て行くのを見つめていたのにも後悔。思う事は大体が遅い。
「りょーまん、追いかけへんの?」
「うん、ななかがいてくれたらいいし」
「うん、ななかがいてくれたらいいし」
笑って言えばそばにいる子も笑う。人間は単純で相手に気を持たす事を言えばすぐに気持ちが寄りかかる。ただあの子は違ったみたいだ。俺の事を全て見透かしたように笑うから、意地悪言いたくなったんだ。
(笑うな、うざいから。)