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忠犬な彼と。

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yariba

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忠犬な彼と。【ちゅうけんなかれと。】




「うわ、ホンマに降ってきた…」

天気予報通りの、雨



凜の言う通り傘持ってきて良かったぁなんて先程のメールの内容を思い出す
朝めっちゃ晴れとったし大丈夫やろ、って言うたら天気予報で昼からは雨降るって言ってたから傘要るよと返ってきたのだ

今日は久々にK-POP会
と言っても俺と稜駿と寿々歌と凜というK-POP好きメンバーが誰かしらの家に集まってDVD鑑賞したりグッズ買いに行ったりするだけなんやけど

今日は凜の家で最近日本デビューしたグループのPVを見る予定だ


「あれ」

ふと少し向こうにある駅で見知った姿を見つけた
その見知った姿の人物は駅の改札を出て少ししたところにあるベンチに座ってぼんやりと携帯を眺めていた


「公輝君?」

声をかけると、彼はゆっくり顔を上げて俺を見た

「…あれ、崚行じゃん。何してんの?」
「今から凜の家に行く所なんやけど、公輝君が見えたから。公輝君こそ何してんの?」
「ん?…人待ち?」

そう言って公輝君は笑ったけど、その笑顔はどちらかと言うと苦笑、って感じで結構長い時間待たされている様子だった

「どれくらいから待っとんの?」
「んー…ついさっき?連絡、取れなくなったから動くに動けなくて。もうホント困るよなー自分から言い出したくせに」

公輝君がまた携帯に視線を落とす
携帯が鳴る気配は無くて

ほんの少しだけ、誰を待っているのか気になった


「公輝君傘は?」
「傘?…あれ?」
「え?無くなったん?それかどっか置いてきたん?」
「何処かに置いて来たっぽい。何処にやったっけ」

「あれ?」と言った彼のその「あれ?」は「何処にやったっけ?」とは違うニュアンスだったのは気付かなかった事にしよう

「僕の折り畳み傘、貸そか?」

俺は折り畳み鞄に常備しとるから、今手に持ってる傘と合わせて二本ある

「いや、いいよ。どうせ帰るだけだし」
「でも、一人で帰るんちゃうんやろ?やったら…」
「や、ホント、いいよ。俺、もう帰るし」
「え?でも、人待っとるんやろ?」
「多分、来ないよ」

公輝君が、また苦笑いした


「…ええから使ってよ。返すんはいつでもええから」
半ば押し付けるように折り畳み傘を差し出す
公輝君は驚いたように俺を見て、それから「ありがとう」と言った

「…それじゃ、僕もう行くから。絶対傘使ってな!折角貸したのにささんと返って風邪引いたりとかしたら怒るでな!」

公輝君が笑って「分かった」と言ったのを確認してから俺は凜の家の方角へと歩き出した


あーあ、可哀想に
公輝君は多分朝からずっとああやって忠犬ハチ公しとったんやろうな
やから傘も持ってへんし、雨降ってきた事にも気付かなかった
あんな寂しそうな表情させて、ご主人様は何してんねや
今度会ったら俺が代わりに怒ってやろう

再びベンチに座って携帯を眺め始めた公輝君の姿を一度振り返って、そう心に決めた



「崚行ー傘ありがとな!」
「別にええよー!結局あの後会えたん?」

彼はまたあの時と同じ苦笑いを浮かべていた


(えー!あの日遅れてきたのは公輝君と会ったからだったの!?)
end

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