彼と私の関係 - yariba @ ウィキ

彼と私の関係【かれとわたしのかんけい】

藍、公輝、裕太

「藍ならきっと、大丈夫！」

彼のその一言で本当に大丈夫に思える不思議

「藍って素直じゃないよな」

ふと言われたこの言葉
失礼しちゃう、と思えなかったのはきっと彼の人柄のせい

「どうして？」
「裕太とのやりとり、見ててそう感じた」
「私、素直だよっ？」

そう言うと彼は笑った

「本当は仲良くしたいんでしょ、ユータクンと」
「別にぃ。裕太君は私の事避けてるみたいだしぃ」
「だって藍怖いもん」
「ちょっとぉ。本人に向かって言うことぉ？」

あはは、と笑われる
裕太君もきっと怖いって思ってる
だから、避けてる

「藍って珍しいよな」
「何で？」
「超積極的だから」
「それは此処の男の子達が消極的すぎるからでしょぉ」
「そうかもな」

そういう公輝君だって全然攻めのモードじゃないもんね
そうボソリと言ってやると、彼は苦笑した

「俺、藍みたいに積極的な子って凄いと思う」
「えぇ？うざいだけでしょっ？」
「そうかな？誰にも言われた事ないっしょ？」
「そりゃあ本人に言えないでしょー」
「でもさ陰口で言った事とかってさ、いつか本人に伝わるんじゃん？」
「そうかもしれないけどぉ」
「誰かが藍をうざいって言ったとしたら、俺はその倍くらい藍の事褒めたげる」

くしゃくしゃと頭を撫でられる
ズルーイ…
凄い、子供扱いされてる…

「でも裕太君、酷いと思わないっ？こんな可愛い子が相手してあげるって言ってるのにぃ」
「可愛いだけじゃダメって事なんじゃねぇ？」
「可愛くて、積極的だよっ？」
「可愛くて、積極的で、…あと何だろう？裕太の好みかぁ…」
「何でそこまで裕太君の好みに合わせなきゃなんないのぉ？」

あんな逃げてばかりの人なんかに合わせる意味わかんなぁい
そう言って口を尖らせたら、公輝君は何も言わずに私を見た

「…でも、好きなんだろ？」

まさかそんな風に言う人が居たなんて
誰がどう見ても私は裕太君を嫌っている
それはきっと私が第三者だったとしてもそう思う

「…どぉして？」
「あれ、違う？何かそんな気がした」
「…不思議。普通の人なら私が裕太君を嫌ってると思うだろうと思ってた」
「何で？」
「だって毎回逃げられるんだよっ？イライラして色々文句言ってるし…」
「でも、逃げられてもまた迫るじゃん」
「迫るって…だって女としてのプライドが」
「本当は？」
「え？だからぁ」
「本当は？」

公輝君がじぃっと私を見る

「………好き」
「ほら」

公輝君は笑った

どうして気づかれたのだろう
どうして彼は私が裕太君を嫌っていると思わなかったのだろう

「俺、普通の人より何倍も普通すぎて普通じゃなくなったみたい」

そうやって笑う公輝君は、確かに誰よりも普通の人な気がした

「藍、見つめられるの苦手？」
「うぅん…苦手って言うかぁ…逸らせなくなっちゃうからぁ…逃げられないっていうかぁ…」
「裕太にも同じ事してみたらいいんじゃね？」
「えっ？」
「毎回逃げられるんだろ？」

公輝君の言った事は、それはもう普通の事で
だけど、思ってもみなかった事

そっか、その手があった

「公輝君、どうして私にアドバイスしてくれるの？」
「うーん…藍にも笑ってて欲しいから、かなぁ」
「ちゃらーい…」

公輝君は笑っていた

「藍ならきっと、大丈夫！」
その一言に背中を押された気がした

「裕太君、私の相手しに来るなんてよっぽど暇なんだねっ」
「戻ってきたら、たまたま藍が居ただけだよ。藍こそ、僕を待ってたの？」
「うん」
「え？」
「………」
「どうしたの？僕の顔に何かついてる？」

（公輝君、どうやら裕太君には効かなさそうだよっ）

「今まで気づかなかったけど、藍って綺麗な目してるんだね！」
「えっ？」

何かが変わる音が聞こえた
end