素直になれずに【すなおになれずに】
「俺やっぱり熊木先輩のこと嫌いです。仲良くしたくありません」
いつものようにニコニコと愛想を振りまく先輩にイラっとしていた。
「何だよいきなり。俺なんか悪いことしたー?」
「俺の前で公輝とイチャイチャしといて何とぼけてるんですか」
「だーかーらー何回も言ってるじゃん。あれは公輝が俺の頭を」
「本当は嬉しかったくせに。」
「本当は嬉しかったくせに。」
話を切るように声を重ねた。俺の態度を見てごめん、ごめんと謝る熊木先輩。
……何妬いてんだろう、俺。
……何妬いてんだろう、俺。
「でも俺分かってるつもりだから。お前が公輝のこと好きなの」
……違う。熊木先輩は何も俺のことなんてわかってない。
俺、熊木先輩が好きなのに。
俺、熊木先輩が好きなのに。
熊木先輩にしがみつくように抱きしめると胸元で涙を流した。
「だって俺と話してるよりずっと楽しそうだし」
そんなことないっすよ、と微笑みながら卓也は話す。
俺が卓也を好きなように卓也も公輝のことが好きなんだろう。
俺が卓也を好きなように卓也も公輝のことが好きなんだろう。
「俺、他の誰よりも卓也のこと好きっていう自信あるんだけどなー」
「先輩の気持ちは嬉しいですけど俺は先輩として好きです」
「先輩の気持ちは嬉しいですけど俺は先輩として好きです」
「…なーんて。冗談だよ、冗談。」
好きと言えないもどかしい気持ちがあふれ出しそうでただ悔しくなった。