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きゃんでぃ。

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yariba

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きゃんでぃ。【きゃんでぃまる】



「それじゃ、俺が手伝いますね!」

最初は、何で俺に構うんだろうと思ってた
気付いたら、それが楽しみになっていた

たった、それだけ

「わりぃな、運ぶの手伝って貰って」
「いやいや、俺も暇なんで全然いいっすよー」

放課後いつも俺の所へ来て、今みたいに何か手伝ってくれて
そうじゃなくても、色んな話してくれて
それが、ただ単に暇潰しなのだと分かっていても
今日は、来るだろうかと考えてしまうくらいに、それが楽しみになっていた

「着いたー!」
「重いのにありがとな。お礼に飴やるよ」

一番最初の時、タダで手伝って貰うのは気が引けるので何かしたいと思った
だけど成績をどうにかするのは贔屓になるのでそういうわけにもいかず
というかそもそもコイツは俺の教科は別に悪くもなく、寧ろ良いくらいだった
たまたまその日、喉が痛くて学校に来る途中で買ったのど飴をあげた
それから、毎回手伝って貰う度に飴をあげる事にしていた

「わーい」

最初は、何かして欲しくてやってるわけでも、何かが欲しくてやってるわけでも無いからと断られたのだが、それでは俺の気が済まないので無理矢理押し付けた
それから何度もそのやりとりをして、最近はもう諦めたのか素直に貰ってくれるようになった




「あ、えーじだ」

運んだ資料や書類などを机に運んで、机の引き出しに入れた飴を取り出す
荷物を置いて手ぶらになったそいつが、窓から見える教室に、知り合いを見つけた

「真面目に勉強してるなーえいじ」

えいじ、というのは、コイツにとって、一番の親友で、多分、好きな人

「ああやって、真面目モードだときっと今以上にモテるんだろうなぁ、えいじ」

えいじ

コイツの口から、一体今まで何回聞いただろうか

「あんまジロジロ見てやるなよ、いくら離れてても視線に気付いて集中できねぇんじゃねぇの」

そう言って、わざとらしくカーテンを閉めて
こうしたら、もうコイツの口からえいじという名前は出てこないと知ってるから

「…早くおわんないかな、授業」

カーテンを閉められた窓を見たまま、ソイツは言った
きっと、先程まで見ていたアイツの姿を思い出しながら

コイツが、俺に話しかけるようになったのは、ホントにただの暇潰しで
“大好きなえいじ”と一緒に帰るための、時間潰しで
それを分かっていたのに、俺は

「おい」
「え?」

“大好きなえいじ”がただの親友だと分かっているつもりでも、それすら悪い事のように思えるのは、俺が邪で居るから

まだ窓の方を見ているソイツを引き寄せて、

「…やるよ、その飴」
「………え、あ、うん…ありがとう、ございます」

驚いた様子で何が起きたか理解出来てなさそうに俺を見て、ソイツは礼を口にした

今、何が起きたのか理解したら、きっと俺の事しか考えられないだろうから
大分強引ではあるけれど

(俺の事だけ、考えてろ)

「…そろそろ、帰らなきゃ、なんで、帰りますね」
「おう、今日も手伝ってくれてありがとな。また明日」
「はい、それじゃあ、また明日」

赤くなった顔を隠すように、俯き気味に、手で顔を隠しながらソイツは俺の部屋を出て行った

少しでも多く、俺の事だけを考えて欲しいから

「…ちょっと強引過ぎたか」

自分も少し顔が熱いのを感じながら

(慣れねぇ事はするもんじゃねぇな)

アイツに俺の事だけを考えて欲しくてああしたのに、どうやら自分がアイツの事をもっと考えてしまう事になりそうだ

アイツ以外に抱きたいと思う奴がいねぇくらいに、アイツの事が、俺は

end

好きな人の好きな人を、俺も好きにはなれません

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