スピンオフ読書会4「皇帝のかぎ煙草入れ」

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日時 2012年8月10日(金)
場所 横浜駅近郊のとある居酒屋
参加人数 8人

課題書

「皇帝のかぎ煙草入れ」ジョン・ディクスン・カー/井上一夫訳、駒月雅子訳(新訳版) 東京創元社



レポート

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読書会参加者のレポートを紹介します。未読の方はご注意ください。

・tkdさんのレポート
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前回惜しくも一票差で課題から漏れましたところのジョン・ディクスン・カー『皇帝のかぎ煙草入れ』、満を持してのご登場でございます。
ついでにもう古典大会にしちゃえ! ということで、クリスティが大好きなわたくしことtkd(本名ミエミエだな)と、若さに似合わず古典好きの幹事O青年とで結成されたチーム・クリスティが、予断と偏見にみちみちた「オススメ・クリスティ!」のプレゼンテーションを行なう予定。

まずは、『皇帝の…』の感想を交換。
O青年はいつも素敵な資料を用意してくれますが、今回は気合いの入りようが違っていて、課題図書のみならず、ギデオン・フェルもの、ヘンリ・メリヴェールもの、ノン・シリーズもの、それぞれのおすすめまでも。私は『火刑法廷』のほかフェル博士ものを一つ読んだことがあるはずなのだが、すっかり記憶を喪失していたので助かります。いずれHMにチャレンジします。

―新訳(駒月雅子)と旧訳(井上一夫)、双方読んだ参加者多し。えらい。でも、特に新訳の方が読みやすいということもなかった模様。部分的にはむしろ新訳の方が古風で上品なくらいでは? → あ、でも、旧訳「脳震盪」で新訳「脳挫傷」なので、そこは後者の方が実際を表しているでしょう。「脳震盪」ではいかにも軽い。
―近所の二軒の鍵が同じって、ひどくね? → いやでもほらそれは、別荘地だし、おそらく当時は、上流階級同士の間では防犯の必要なんてなくて、鍵は「外部」すなわち強盗目的のビンボー人たちを防ぐ目的さえ果たせばよかったんじゃないですか?(知らないけど) → えー。ただのミステリ的ご都合じゃないの?
―ふだんのカーはもっと怪奇趣味なのに、この作品ではそういった要素を全く排していて、だから誰にでも読みやすいってことですよね。「ちょっと本気出せば本格も書けちゃうオレ」なカー?
―「肝心の部分」に至るまでの描写は、どうともとれるように工夫してあるし、そもそもタイトルの「かぎ煙草入れ」からして既に、読者に意識を植え付ける作戦が始まっているとも言える。そのあたりはさすがです。赤い鰊もばらまいて。
―あれ、ちょっと待って下さい。このトリック、クリスティもこの数年前に使っているって先ほど気がついたんだけど、そう考えてみれば、動機までソックリじゃないか!! え、えええ・・・パク・・・オ、オマージュ。オマージュで。
(筆者注 : 気になって検索したのですが、日本語だと、類似を指摘したブログが一件見つかったのみ。うそーん。みんな、もっと騒ごうぜ? あ、皆さんネタバレをおそれてタイトルを挙げないだけでしょうか、今わたくしがしているように。それにしても私の中でカーの評価が急激に冷え込んでしまいました。だってクリスティの方がギスギスした人間関係が面白かったし。)
―主人公のキャラがなー。いかにも「ザ・男好きのするオンナ」って感じで、どうもなあ。「はすっぱな女に見えるけど、実は純真なのよ」っていう説明がまた、くだくだしいんですよねえ。(女性一同、うなずく。)
―でもいいコなのに男運悪くてかわいそう。 ← やさしい読者もいたものだ。
―ところで、かぎ煙草って何? という素朴な疑問が。え・・・は、鼻から吸い込むんじゃないの? それは麻薬ですか?
(筆者注:ご参照(Wikipedia「タバコ」)。やはり鼻から吸い込むようです。紙巻きたばこといい、水ぎせるといい、外国の喫煙ってヴァリエーション豊かですね。)
―イヴがトビーの10円ハゲに気づいてキレる描写がよかった。意味が分からん。

まあ、なんだかんだのハッピーエンドだ。よかったネ! ということで、カーについてはそんな感じでした。
それから、各々平素はどのように古典と親しんでおるのか? ということについて皆さんから一言ずつコメントをいただきましたが、まあそれは興味深いとはいえ個別の話ですので、話題はクリスチィへ。

クリスティに関しては、ミス・マープルもの、エルキュール・ポワロもの、ノン・シリーズもの、それぞれにつき、読むべき作品を5-10-10ずつ選定。いやー、この選定作業は楽しかったです。決めかねた。
でも、先に面白いものばかり読んでしまったら、後でコンプリートしようとなったときに(え? ならない?)つまらないものばかり残ってしまうことになるんじゃないかー、とか、私がベストに挙げたものは、もしかしたらその他たくさんのベストじゃなかった作品の屍が肥やしになった上でのベストなんじゃないかー、だからベストだけ読んでもクリスティの魅力が十全に伝わらないんでねえかー、とか、あらぬ妄想を抱いては不安にかられて、うだうだするわたくし。相棒Oさんの「みなさんに少しでもクリスティや古典を好きになってもらえたら、われわれの任務は完了です」という、さわやかさ満点の励ましに励まされました。さわやかさをありがとう。

しかし、ここに至るまでに、カーばかりか、またしても『アイアン・ハウス』の話題が再燃したりなどして盛り上がってしまったため(ほんと、この話は終わらない)、クリスティについて語る時間はそれほどありませんでした。ですが作成した資料が十分に暑苦しい内容なので、そのくらいでちょうどよかったと思います。
その他、同時代の女流といえばドロシー・L・セイヤーズ、ディテクション・クラブつながりでアントニー・バークリーやG.K.チェスタトン、などなどなどとの比較など、古典といえども話題は尽きず、今後は新刊―古典を交互に取り上げることができたら、我々の幅もますます広がるのではありますまいか! という素敵な決意とともに、散会となりました。
ちなみに、次回スピンオフの候補は今話題の『わたしが眠りにつく前に』でーす。一足はやく原書を読んで絶賛されている方がいらして、期待度高し! その前に、9月は久方ぶりの本編『スイート・ホーム殺人事件』ですね。皆さん、お会いできるのを楽しみにしております、ではご機嫌よう!



話題

読書会で上がった本の紹介。
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  • 『火刑法廷』ジョン・ディクスン・カー/加賀山卓朗訳 ハヤカワミステリ文庫
  • 『三つの棺』ジョン・ディクスン・カー/三田村裕訳 ハヤカワミステリ文庫
  • 『ユダの窓』カーター・ディクスン/砧一郎訳 ハヤカワミステリ文庫
  • 『シャーロック・ホームズの復活』アーサー・コナン・ドイル/深町眞理子訳 創元推理文庫
  • 『タンゴステップ』ヘニング・マンケル/柳沢由実子訳 創元推理文庫(上下巻)
  • 『青い虚空』ジェフリー・ディーヴァー/土屋晃訳 文春文庫
  • 『愛おしい骨』キャロル・オコンネル/務台夏子訳 創元推理文庫
  • 『王者のゲーム』ネルソン・デミル/白石朗訳 講談社文庫
  • 『エリア51 世界でもっとも有名な秘密基地の真実』アニー・ジェイコブセン/田口俊樹訳 太田出版
  • 『酔いどれに悪人なし』ケン・ブルーウン/東野さやか訳 ハヤカワミステリ文庫
  • 『ブラックアウト』コニー・ウィルソン/大森望訳 ハヤカワポケットSF
  • 『王者のゲーム』ネルソン・デミル/白石朗訳 講談社文庫
  • 『真鍮の評決』マイクル・コナリー/古沢嘉通訳 講談社文庫(上下巻)
  • 『本格ミステリー宣言』島田荘司 講談社文庫
  • 『キングを探せ』法月綸太郎 講談社
  • 『13階段』高野和明 講談社文庫