♪(ご一緒にどうぞ)
Welcome to the Hotel California,
Such a lovely place,
(サッチャロンリープレーイス)
Such a lovely face
Plenty of room at the Hotel California,
Any time of year,
(エニターイムオブイヤー)
You can find it here
チャララララ~……
※このレポートはイーグルス『ホテル・カリフォルニア』を脳内再生しながらご覧ください。
近年なにかと話題に上ることが多い「イヤミス」という言葉。
具体的な定義は存在しませんが、どうやら「読んでいて嫌な気持ちになる」「後味が悪い」。そんなミステリー全般を指す言葉のようです。
そこで今回は「イヤミスに挑戦してみよう!」ということで(流行に安易に乗っかりました)、
帯に“本年度イヤミスNo.1!”の謳い文句が掲げられたグラント・ジャーキンス『あの夏、エデン・ロードで』を取り上げました。
簡単なあらすじは以下の通り(Amazon.co.jpより)。
のどかな町を、くねくねと貫くエデン・ロード。自転車で快走していた十歳のカイルは車と衝突しそうになる。車は横転、血まみれの若い女が彼に迫る。
悪夢のような光景に逃げ出した彼は、だが翌日、愕然とする。現場に何も痕跡がないのだ――。
偶然“怪物”を目覚めさせたカイルと妹。人の心を支配する魔の闇に囚われた幼い二人は……。最悪の結末の予感に震える、禁断のダーク・ミステリ。
……と、ここまでは良かったのですが、内容が内容だけにどんな読書会になるかまったく予想できません(それはいつものことなんですけど、今回は特に)。
何とも説明できない嫌な予感が……(ちなみにこの胸騒ぎは良い意味で裏切られることになります)。
加えて著者のジャーキンスの情報が少な過ぎました。
どうしよう。このままでは、いつも薄口と悪名高いレジュメのほとんどが「MEMO欄」になってしまう……。
そこで参加者のみなさまから「あなたが選ぶ嫌な作品」を募集し、ブックガイドを作成することにしました。
呼びかけると、結構な数の作品とコメントが集まりました。ご協力感謝です。
ちなみにブックガイドに記載した作品のリストは、このページ下段「横浜メンバーが選ぶ「嫌な作品」ブックガイド」に列挙しています。
こうして迎えた当日、参加者は10人。
まずはレジュメとともに配布した「イヤミスブックガイド」の話題に。
リストに並べられたタイトルを見ながら「えーっ、これ嫌だった?」とか「わかる。後味悪いよね!」などという声(悲鳴?)が聞こえてきます。
改めてリストを見渡すと、人によって「何が嫌か」という基準が異なって非常に面白い結果になりました(そしてみなさま、嫌な気分になる作品をけっこう読まれている)。
また、今回はSさんが補足資料を作成してきてくださいました。
作中のキーワードとなる「ドラノ」「ワンダーウーマン」などについて詳しく触れられていて、議論の強力なサポートとなりました。
さて、例のごとく順に自己紹介を兼ねた感想発表からスタートしました。
――男子と女子で感じ方が違いそう。兄妹愛、幼少の頃の思い出がキーワードだと思う。
――S・キング『スタンド・バイ・ミー』を連想した(という方が多くいらっしゃいました)。
――生理的に嫌で仕方なく、クリスティーに逃げた。
――当時のアメリカ南部の閉鎖的な空気感がよく出ていたと思う。
――少年の無力さを痛感した。童話っぽい印象を受けた。
――かなり猟奇的だったけど、あんまり嫌じゃなかったかな。国産のイヤミスの方がひどい!?
――前半は「イヤミス」という感じだったけど、後半は展開が見えてしまった。
――「南部のステレオタイプ」など、アメリカ社会のモチーフが散りばめられていた。
――アメリカのことを知らないと楽しめないかも。
――マヒ男の造型が中途半端だったような気がする。
――サブタイトルは“カイルの夏休み”でどうだろう?
――無力な少年の行く末をただ傍観するためだけの小説だと思う。
などなど、主要な感想や意見はこんな感じですが、それ以外にもああだ、こうだと、とにかく議論が止まらない。
主人公であるカイルの決断、マヒ男がグレースに取った行動。
そしてラストシーン、事件後の兄妹それぞれの人生について……。
ここまで盛り上がるとは完全に想定外。空前の熱気を孕んだ3時間となりました。
正直不安で仕方がなかった回でしたが、完全に杞憂に終わってホッとしています。
どんな課題書でも、走り出すまでどんな読書会になるかはわからないということを再認識。
それもまた読書会の愉しさです。
課題書にイヤミス、意外とオススメでございますよ。
しかし思い返してみると、最も盛り上がったのは作中に登場する牛(バディちゃん。伏線でもなんでもなかった)の話だったような……。
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