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「藩王の宣言(国民かくたの場合)」   「いくさ、でございますか」 かくたは、敬愛するよんた藩王の宣言を聞き終わると、そう口にする。 「ええ。国民のみなさんには、ご迷惑をかけるとは思いますが」 「なんの、だごさんの仇を討ちたい、という思いは、我々もいっしょです。」 心からの同意を示すために、かくたは微笑みを浮かべる。 「藩王がおっしゃられなければ、お暇をいただいて私一人ででも、冬の京に向かうところでした」 「タキガワを守った、このあいだのように?」 かくたが動くのは、ただ義のためだけということを、よんた藩王はよく知っている。 受けた恩義に、報いる。 ただ、そのためだけに、先ごろ行われたアースでの戦いで、かくたはよんた藩国に飛び込んだ。 よんた藩王はかくたを快く迎え入れ、さらに先駆けまで任せた。 あのときのかくたは、すべからく戦場を疾く奔るべくメード姿だった。 だが今は、この藩国を再興することが、もっとも大事だ。 そのために、かつて身につけていたスーツを儀礼用に仕立て直し、吏族としてよんた藩王に仕えている。 だが合戦ともなれば、戦える者は一人でも多い方が良い。 また、あのメード服を身にまとって、戦場に立てる。 そう思うと、かくたは得も言われぬ昂揚を覚えた。 「違うんですか?」 どうやらよんた藩王は武者震いを見て、かくたが機嫌を損ねたとでも思ったのだろうか、少し心配そうな顔で尋ねてくる。 先ほどの演説では顔色一つ変えなかったというのに、やはり心の奥では不安がよぎるのだろう。 かくたは、慌てた気持ちを顔には出さず、努めて穏やかな声でよんた藩王を答える。 「いいえ、同じですよ」 そう聞くと、よんた藩王は安堵したらしい。 満面の笑みを浮かべながら、手近の椅子に腰掛けた。 「あんなに人前で緊張したのは、藩王になってから初めてですよ」 そう言いながら、机の上に用意されていたよんた饅を手に取る。 「緊張したら、お腹が空きました」 その言葉に、嘘はなかった。 顔と同じ大きさのよんた饅が、みるみるよんた藩王の口の中に消えていく。 犬猫合わせて藩王の数は多いけれども、その食と忠の大きさでよんた藩王にかなう者はいない。 巷間で人々の口に上る、その噂が本当であることは間違いない。 しかもよんた藩王の尊い心は、まず国民に向けられているのだ。 帝國への忠誠も、かのぽち王女がよんた藩国の名誉国民第一号だからである。 「しばらくは倹約だなあ。メシの量が減りそうだ」 堪えてるんのか、いないのか。 今ひとつ判らないが、よんた藩王の顔は晴れやかだ。 もちろんだごさんには、ひとかたならぬ恩があった。 だが、このいくさに出るのは、他ならぬよんた藩王のためだ。 そう言うのが少し照れくさくなって、かくたはもう一つ用意されていたよんた饅を手にとって、よんた藩王にすすめた。 「お代わりは、いかがですか?」   (文:かくた)

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