「優しい国」
~エース鷹月の死(クビ)、それが全ての始まりであった。~
その影響でか?(元)エース鷹月の同一存在(と一応される)鷹月雅樹も義勇社員と言う職をとっぱらい
「ケッ、これ以上タダで働かされてたまんねー、やめてやんよ アバヨペンギン!」
…と思ったかは定かでは無いが(言っていればフリッパーとかでしこたま殴られて泣かされている気もする)、
エース集団・ダンスシックスを出奔した。抜け義勇社員である。
この時点でNPC、つまりプレイヤーの手を離れた鷹月雅樹は自動操作を行い始める。
(自動操作と言えば傲慢で、ただ本来の人生に戻っただけとも言える筈だが、世界移動者になった時点でそんな甘っちょろい運命が待っている訳が無いのだが)
わんわん帝國に潜り込むのは簡単であった、今は根源種族との戦いの真っ只中、人材をかき集められるだけかき集めようとする所で
何、「僕も志願したいんです」みたいな顔をしていれば良かった。(※どう言う交通手段で行ったのか筆者も分かりません。)
わんわんを選んだ理由はただ一つ。よんた藩国に行く為だ。
よんた藩国を選んだ理由はただ一つ。生きるのが楽そうだからだ。
おまんまも恵んでくれるし働かなくて良さそう、外で生きるのは寒くて大変そうだけど…
かくのごとく、まんまとよんた藩国に潜り込んだ鷹月雅樹の目論見は
一日で瓦解した。
何しろこの国の連中人の事を全くほっとかない。
恵んで貰おうと家をノックすればいかにも人の良さそうなお婆ちゃんが出てきて
「あの、食べ物を少し恵んで頂きたく」などとちょっと演技で言おうものなら
「あらあらまぁまぁそんな寒い格好でどうしたの、今暖かくするわね、今他の藩に出かけてる
孫の服があなたのサイズにあうと思うの、スープがあったまるところだからそれまでに
あらぁ、髪の毛もボサボサじゃない、まずお風呂に入ってピカピカにしてからね…」
三軒目までやったが殆ど同じ対応をされて怖くなって逃げた。
仕方無い、ダンボールでも囲って寒さを凌ぐかと橋の下に行って哲学していると(内容は「ダンボール箱、この世界にあるかなぁ…」だった。)官憲がやってきた。
な、なんですか、へへへ、俺は浮浪者なんかじゃないですよ…と言う卑屈な顔をしてその場を凌ごうとしたら
「君、他の藩国の人かい?これから寒いだろう?…とは言えこの藩ずっと雪が降ってるんだけど…
俺には分かるんだよ、子供の頃からずっとこの国で暮らしてきたからさ。
大丈夫、最近色々あるだろ、誰も咎めたてしないさ。こういう時こそお互いに助け
そこまで言われて「優しくするんじゃねー!」と涙声で逃げた。
何処まで逃げただろう、気がつけば夕暮れ、寒いのに子供達がサッカー(この世界でどう言うのかは知らないけれど)で遊んでいる。
…て事は児童公園…広場か。ここら辺りなら夜は人通りも少ないだろうし寝床には…
「ねーねー、何で泣いてんのー?
「いたいのいたいのとんでけーしたげる」
「あめちゃんあげるー」
俺に優しくするなぁぁぁぁぁああーーー ボキンッ(心の折れた音
(場面転換・軍の面接所)
「…では、こちらの書類にサインを…」
「はい、た、か…」
「ところで、何故こちらの藩国に入った後すぐこちらに来られなかったんですか?入国審査の後ここまではまっすぐですのに…」
「あー…、その、国を見て本当に仕えるのか判断すべきだと思いましてね。」
「そうですか、我が国はあなたから見てどうでしたか?」
「えぇその終わりの無いのが終わりと言うかうふんえふん …よきゆめが溢れていますね。」
「良き夢、ですか。当藩の国民として最大の褒め言葉ですよ。」
ばあちゃん達、警察の人、アメをくれたガキんちょ共…今度は職を得て、お前らを守って、堂々と礼を言いに行くからな…
…とまあ、恐らくはこの様な経緯で…よんた藩国に仕える次第だったのではないかと、言うお話。
(文:鷹月雅樹)
最終更新:2008年07月03日 18:03