「吏族は普段はいたって平凡な事務作業をこなしております。(物語上)
一定期間で、各藩国の書類等に不備が無いか調べるのが主な仕事です。
ただ、一人で淡々とこなすのではなく、見落としが無いよう他の人に見直してもらったり、他の藩の人とチームを組む事もします。
ですので、他人に情報を伝える力がある方が有利な役かもしれません。
そして、戦闘の予定が出るといちばん忙しくなるのが我々吏族です。
戦闘関連の事務作業を一手に引き受けます。
今日はそのときに使う計算用のシートを持ってきておりますので、その使い方を少しお教えいたします。
さて、皆さんは、『エクセル』というものを使った事はありますか?」
Y君とM君は首をふるふると横に振っている。T君とGさんは少しだけとつぶやいている。
Sさんだけが手を上げ、簡単にならと言った。
「そうですか、では使い方からはじめましょう。まずこれをどうぞ。」
持ってきていた表を生徒達に配る。
「これは、実際に私達が使う計算表です。四角で囲まれたものをセルと呼びます。
セルの場所を示すのに、将棋板のように縦の数字と横のアルファベットを使います。
例えば、アルファベットのQと、数字の2が交わるセルを『Q2』と呼びます。
では、今Q2のセルにはなんと書かれているでしょう?」
M君とT君が同時に手を上げ、
「タイプです。」
と同時に答えた。
「正解です。ではセルについては大丈夫ですね。」
と、ここまで言ったと同時に教室の戸が開いた。
「すみません、おそくなりました。A(君)です。」
「まだ始めたばかりですから大丈夫ですよ。座ってください。A君はエクセルについて少しは分かりますか?」
「んー、ちょっとだけなら。」
「セルの呼び方などは?」
「それはだいじょうぶです。」
「では、話を続けて大丈夫ですね。ではみなさんC11というセルを押してみてください。」
一斉に表を押す生徒達。
「すると、表の上の方の空欄だった場所に『=SUM(C3:C10)』というものが浮かび上がってきます。
これは、『C3からC10までの数字を合計する』という計算式なんです。」
「いまは『1+0+(-1)』のけっかがでているってことですか?」
「Gさん、正解です。
ここで出た数字は
アイドレスの『評価』というものです。ただ、この評価をそのまま使うわけではありません。
『リアルデータ』と呼ばれる数値に一度直す必要があります。
C11の一つ下、C12には『=1.5^C11』という計算式があります。
この式は『C11の数字の回数だけ1.5を掛け算する』という意味です。」
「はい、どうして1.5なんですか?」
「A君、確か君には以前説明したと思いますが。まあ、他の皆さんに見ていただけるよう、
この間の君とのやり取りをまとめたものがありますので、皆さんは後でこれを見ると分かると思います。
今は、とりあえず1.5の掛け算だと覚えておいてください。
ちなみに、評価0は1.5×0ではありません。
評価0のリアルデータは1になりますので、これも覚えておいてください。
あとは、-1など、0以下の数字だと、掛け算ではなく割り算になりますので注意してください。」
ここで、さらに邪魔が入る。
「Rです、遅れました。ごめんなさい。」
「どうぞ座ってください。ここまでの話はどなたかに聞いていただけますかな?」
「はい。」
「よい返事です。では、説明を続けましょう。
評価-1は割り算をすると先ほど言いました。1を1.5で割るといくつになるでしょう?」
「0.7です。正確には0.6666…です。」
「M君、その通りです。ひとまずそれを覚えておいてください。
次にC13のセルを見てください。
ここには『=ROUND(C12,1)』という計算式があります。
この意味は、『C12の数字を小数点第1位まで残してそれより下は四捨五入する』というものです。」
「これで0.666…が、0.7になるんですね。」
「はい、M君再び正解です。」
「せんとうで使うのは『ししゃごにゅー』したすうじなんですか?」
「ええ、Gさんの言うとおり、実際に使うのはこの四捨五入した後の数字になります。
30人の数値を出す場合、リアルデータの0.666…を足し算したりするわけなんですが、
実際には小数点第二位、つまり0.66で足し算して四捨五入します。
すると、一人当たりの誤差は多くても0.04で、100人集まってもせいぜい4しか誤差は出ません。」
「おおー、すごいですね。」
「A君、感心しているようですのでもうひとつ。
大規模戦闘の時のチェックは少し甘く見てもらえるようです。
このシステムは『象が踏んでも壊れない』と言われています。」
「すげー、ぞーさんふんでもこわれないのかあ…。」
「さて、ここまでが基本になります。
次に例えば、技を使って評価に変更が加えられるとどうなるか。
J8のセルに1を入れてみてください。」
「あ、4になった!」
「はい、J11のセルが4になります。これを『シフト演算』と呼びます。
ただ、技を使用すると燃料を消費しますので、忘れずに燃料に1を入れておきます。」
そこまで言ったところで、終了を告げるチャイムが鳴り響く。
「おや、もうおしまいですか。では、今日はここまでにしておきます。
この続きは又別の機会に致しましょう。」
「きりーつ、きをつけー、れーい。」
M君の声が響き生徒達は一斉に動く。
「ありがとうございましたー。」
「はい、ありがとうございました。」
かくたは答礼をしてから、教室を後にした。