唯先輩と恋人同士になって、数週間が過ぎた。
けど、それほど何かが変わったわけでもなかった。
いつもと同じように抱きつかれて、部室で練習をして、たまに遊びに出かける。
恋人同士ってみんなこんな感じなのかな?
確かに2人でいると楽しいけど、自分は何をしていいのかわからない。
何か恋人らしいことをしてみたいけど……。
「どうしたものかなぁ……」
悩んでいると、携帯が鳴った。
「あ、唯先輩からだ」
メールには、”明日、うちに遊びにおいでよ!”と書いてあった。
「よし、明日は恋人らしいこといっぱいしよう!」



翌日!
「さぁ、あがって~」
「お邪魔します」
私は唯先輩の家に来た。
「ジュースとか持ってくるからちょっと待っててね」
部屋に通され、唯先輩は1階までジュースを取りに行った。
「さて……、何をしたらいいのかな」
恋人らしいことって何だろう?
天井を見上げようと、床に手をついたら何かが当たった。
「何これ?」
見てみると、大学ノートのようだった。表紙には……
「あ、あずにゃんノート!?」
すごく恥ずかしい題字が書いてあった。
全く唯先輩は何を書いているのだろうか。こんなノート……。
「……」
決してやましい気持ちがある訳ではないが……、見たい。
「ゆ、唯先輩が変なこと書いてないか、確かめるためです!」
そうです。変なこと書いてあったら困るから見るだけです!
「それでは……」
私は表紙をめくった。

□月×日
あずにゃんに告白をしちゃった! あずにゃんの返事はOKだった! すごくうれしい!

「こ、これは、日記ですかね……」
あの日のことが書かれていた。思い出しただけでも少し恥ずかしい。
「しかし、あの唯先輩が日記を書いているとは……」
さらにページをめくっていく。

□月△日
今日はあずにゃんとデート! けど、遅刻しちゃってあずにゃんを怒らせちゃった……。
だめだね、私……。

「あのことですか……。ちょっときつく言いすぎて反省してます……」
こんなことまで書いてあるとは……。
読み進めていくと、私達の今までのことがずっと書き連ねてあった。
「……あれ?」
しかし、最近の日記まで読み進めてからあることに気がついた。
「昨日の日記、『あずにゃんとデートをした』って……」
当然、そんなことはした記憶は無い。
最近の日記はなぜかでたらめなことばかり書いてある。
「しかも、明日も、明後日の日記もある……」
『あずにゃんと手を繋いだ』、『あずにゃんと映画を見に行った』……。
何だろう、これ……。ひょっとして、見てはいけないものを見てしまった……?
「……見なかったことにしよう」
そういって、ノートを元の場所に戻そうとした瞬間、
「あっ、あずにゃんそのノート見ちゃダメー!」
いつの間にか部屋に戻ってきた唯先輩が、血相を変えて私からそのノートを奪った。
「あっ、ご、ごめんなさい!」
「見た!? 見たの!?」
「い、いえ! そんな、あの……」
すぐに否定すればよかったのに、私はどもってしまった。
「ううっ……、読んじゃったんだね……」
「……すみません」


読まれたのなら仕方ない……と唯先輩はノートについて泣きながら話してくれた。
「このノートは日記帳であって、私の願望を書いた『予定表』なの……」
「予定表……ですか?」
「うん……。こうなったらいいなぁ、とか今日はこうしよう、とか……」
「そうだったんですか……」
しくしく泣く唯唯先輩を見て、なんだか申し訳ないことをした気分になってきました……。
……よし!
「……いいですよ。唯先輩、そのデタラメな日記を正しい日記にしましょう」
「え……?」
「今日は……『あずにゃんと水族館に行った』……なるほど、さぁ唯先輩、水族館に行きましょう」
「あずにゃん……、いいの……?」
「恋人同士だったら当然です! どうせならその日記に書いてあること全部実現しちゃいましょう!」
ぱああぁ! と唯先輩の顔が明るくなる。
「じゃあ、ここも叶えてくれるの……?」
唯先輩はノートの最後のページを開いた。
そこに書いてあったのは『○月×日、あずにゃんとついに結婚』……。
「にゃっ!? け、結婚……!?」
恋人らしいことすっ飛ばして、もう家族になる予定まで!?
「さすがに、だめだよね……」
またしゅんとなっていく唯先輩。ま、まずい! ちゃんと言わなきゃ!
「……い、いいですよ! やってやるです!」
「本当に!?」
「はい……。というか、唯先輩の、お嫁さんにしてください……」
「あ、あずにゃあああぁん!」
唯先輩が思いっきり抱きついてきた。
「ゆ、唯先輩! 今日は水族館に行くんじゃ……」
「いいよ、いいよ! そんなことより早く結婚しよう!」
「ちょっと、予定表の意味がな……、ふにゃ!」
「あ、そうだ!」
抱きつかれていたと思ったら、いつの間にかお姫様だっこされていた。
「ちょ、ちょっと唯先輩!?」
「あのノート、『あずにゃんと×××した』とも書いてあるんだよ……?」
「え……?」
「日記に書いてあること、全部実現してくれるんでしょ?」
いつもの唯先輩からは考えられない艶めかしい笑顔。
そのままベッドに下ろされて、上から覆いかぶさってきた。
「あ、あの、まだ日記の日付じゃないですし……」
「そんなの、後から書き換えておけばいいんだよ……」
「ちょっと、あの……、心の準備が……」
「大好きだよ……、梓……」
急に名前で呼ぶなんて、卑怯です!
そんな声で迫られたら……!
「あの……、やさしく……、してください」
「うん……」

こうして、唯先輩の日記に新たなページが追加された。

END




  • 素直なあずにゃん?w -- (ダメですぅ〜) 2010-11-21 23:15:49
  • もう!なんて夢の詰まった予定表! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-12 08:11:40
  • 銀河の歴史にまた1ページ... -- (名無しさん) 2014-12-26 23:00:56
名前:
感想/コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年11月21日 22:03