何も変わらない日常。
お茶を飲み、他愛もない会話を交わし、時々練習に勤しむ日々。

「真面目に練習するです!」
「だらしがない人ですね……」
「人前で抱きつくのは止めるですー!」

です、です、です、って……君は定型句のようなそれを繰り返すだけ。
どれだけ私がアプローチをかけようとも、君は私の本当の気持ちに気付いてはくれない。
進展しない関係に私はもううんざり。楽しいはずの毎日が何だか色褪せて見えた。

何か打開策となるきっかけはないものか……そんなことを考えていた矢先のことだった──



期末試験が近づいていたある日。
私は校内にある休憩用のベンチの上で勉強をしていた。
意外と知られていないこの勉強スポット。
たまに気まぐれな風が教科書をめくっていく以外は、勉強場所として非常に好都合な場所なのだ。
最近の休み時間は受験生がひしめき合う図書館ではなく、この穴場で勉強するのが私の日課となっていた。

「ふう……楕円の公式はえー二乗分のえっくす二乗たす……っと」
「数学はなんだかんだ言って暗記することが多いんだよね。はぁー」

数学公式を覚えるのに苦労していると、ふいに一枚の白い羽が私の視界を横切った。
モンシロチョウかな?と思いながら、その羽が描いていく軌跡をぼーっと眺める。
その蝶は八の字を描くように何度も往復飛行していたかと思うと、突然その羽を黒く染め始めた。

「え……?」

漆黒の翼を持つアゲハのような姿へと変貌を遂げる蝶。

「うっ……」

やがてそれは眩い光を放ったかと思うと、次の瞬間地面には黒い物体が落ちていた。

「眩しいなもう……」
「ん、何だろうこれ」

体勢を屈めて黒い物体を手に取る。
その正体は一冊の薄いノートだった。

「です……のーと?」

表紙には「DESU NOTE」と読みにくいアルファベットで書いてあった。
適当に中をパラパラと捲ってみる。筆跡も何もない真新しいノートらしかった。

「ん……?」

表紙の裏には何やら色々と箇条書きで書かれていた。
唯にとっては災難だったのは、それが全て英語で書かれていたということ。
辛うじて読めたのはヘッドラインに記された「THE RULE OF THIS NOTE」。
つまりこのノートを使用する際には、何か遵守すべきルールが伴うらしい。

「とはいっても、肝心のルールが読めないしなぁ……」

ここで英語と悪戦苦闘していても仕方ない。
そう思った私はそのノートを一旦鞄の中にしまい、後で英語の得意なムギちゃんあたりに翻訳をお願いすることに決めた。
【未完】


  • 未完表記が欲しいです -- (名無しさん) 2011-01-03 20:40:58
  • 楕円って数C… -- (名無しさん) 2013-01-24 13:13:01
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最終更新:2010年12月08日 09:39