木枯らし!
「うぅ……寒い」
むったんを背負って、登校するのも最近は辛くなってきた。
足元が木枯らしが吹きぬけて行くと、何とも言えない寒さが体を震わせる。
「あ、
あずにゃんおはよう!」
「唯先輩、おはようg……ぐふっ!」
後ろから声がしたので振り返ると、横から衝撃が来た。
「や、やめてくださいよ、こんなところで」
「まだ人がいないからいいじゃ~ん」
「そういう問題じゃないです」
こんなに寒いのに、この人は何で元気なんだろう。
「唯先輩、寒くないんですか?」
「うん。マフラーとろくぶてちゃんがついてますから!」
そう言って私に手を広げて見せる。そういえば、私はマフラーしかしていないな。
「手袋していると暖かいですか?」
「暖かいよぉ~? あずにゃんもしてくればいいのに」
確かに手袋をしていれば少しはましになるかも。
でも、私はどちらかと言うと足元が寒くて……。
そこまで考えて、私はあることに気づいた。
そうか……、これか!
「ん? どうしたの、あずにゃん」
「い、いえ。何でもありません」
次の日。
「唯先輩、おはようございます」
「お、あずにゃん。おはy……」
唯先輩が振り返ったけど、何故か私を見て止まった。
「どうしました?」
「い、いや、あずにゃん。その脚は……?」
「あぁ、今日は寒いので私もストッキングを穿いてきたんです」
昨日帰りがけに買いに行ってきたのだ。一応校則通りに黒を買って、穿いてきた。
いやぁ、これが意外と暖かくて驚いた。こんなのを穿いて唯先輩は登校していたのか。
「……」
でも、唯先輩の様子がおかしい。ずっと固まったままだ。
「あ、あの、唯先輩?」
「あ、あずにゃん……」
「は、はい?」
「……あんまり穿かないほうがいいよ」
「ええぇ!?」
唯先輩にそう言われてちょっとショック……。
何でだろう、おかしかったかな?
「駄目ですか? これ」
「いや、駄目って言うか……」
言葉を濁す唯先輩。
「じゃあ、何ですか。はっきり言ってください」
少し迷っていたけど、唯先輩は呼吸を整えて私に言った。
「あずにゃんのそれかわいすぎて我慢できません!」
「……はい?」
「だから、ムラムラするの!」
……すごくはっきり言われた。っていうかムラムラって……。
「……唯先輩、それ言っていて恥ずかしくないですか?」
「すっごく恥ずかしいけど、しょうがないじゃん」
私のことをちらちら横目で見ながら弁解する。
「……だから、あずにゃん。それ穿くのはちょっと……」
「別にいいじゃないですか。唯先輩が我慢すればいいだけですし」
「……襲っちゃうよ?」
「学校ではやめてくださいよ?」
「は~い」
それから私は度々ストッキングを穿いて登校するようになった。
理由? それは決まっているじゃないですか。
ね? 唯先輩……。
END
たき火!
いつもなら部活をしている時間。
「あ~ぁ。掃いても掃いても落ちてくる……」
「しょうがないだろ? 落ち葉ってそういうものだし」
ぶーたれる律先輩を澪先輩がなだめる。
「ちょっと疲れてきた……」
「そう言わないで、唯ちゃん」
「だってさぁ……」
「言い出しっぺは唯先輩ですよ?」
「わかってますって……」
私達は校庭て落ち葉の掃除をしている。
なんでこんなことになったのかと言うと……。
回想開始。
数十分前。
今日は珍しく5人揃って部室に向かっていた。
そんな時、律先輩が先生に呼ばれた。
「お、田井中。今、暇か?」
「いや、今から部活なんですけど……」
「少しの間でいいんだか、落ち葉の掃除手伝ってほしいんだ」
「ええぇ!? 嫌ですよ。疲れますし」
「終わったら焼き芋していいからさ」
「はい! やらせていただきます!」
先生がそう言った途端、唯先輩がすかさず言った。
回想終了。
まったく、唯先輩の一言でこんなことをしているわけです。
「唯があんなこと言うから悪いんだぞ?」
「だって、焼き芋だよ? 澪ちゃん、たき火しながらの焼き芋なんて最近じゃできないよ!」
「そうだけど、そんなので請け負うものじゃないだろ」
「でも、最後にたき火で焼き芋なんてやったのいつだっけな……」
「りっちゃん、たき火したことあるの?」
「あぁ、澪も誘って近所の公園でやってさ……」
「あの時か。律が調子に乗って火を大きくするからボヤ騒ぎになったんだよな」
「律先輩、校庭でそんなことしないで下さいよ」
「もうそんなことしないよ!」
「いや、律先輩ならやりかねないです」
「中野ォ!」
「まぁまぁ。もうすぐ終わるからがんばりましょう?」
それからみなさんで手際よく掃除していき、校庭に落ち葉の山が出来上がった。
「いやぁ、終わった~」
「疲れたぁ~」
丁度その時、先生が現れた。
「お、終わったか。お疲れさん。さつまいも持ってきたからみんなで焼くといい」
「わ~い! おいもおいも~」
「唯はちょっと自重しろ!」
律先輩の鋭い突っ込みが飛んだ。
でも、唯先輩がはしゃぐのも何となくわかる気がする。
たき火ってよく聞いたりするけど、実際にやったことなんてなかった。
だから、何となく憧れのようなものは私にもある。
「じゃあ、とりあえず火をつけましょうか」
「よっしゃあ!」
「焼き芋ってね、たき火をした後の地面に埋めると丁度よく焼けるのよ?」
「そうなんですか?」
「こういうの夢だったから、いつかみんなとしてみたいと思って調べていたの」
ムギ先輩もこういうのに夢を抱いていたんですね。
「じゃあ、早速火を……」
「律は危ないから却下」
「なっ! 澪、私だってもう成長しているからあの時みたいはへまはしないぞ!」
「だから余計に危ない」
「じゃあ、私がやります!」
唯先輩がマッチを受け取り、火をつけた。
少しずつ煙が出て来て、火が広がっているのがわかった。
「……何だか思ったよりしょぼいね」
「だろ? だからもっとばばーんと……」
「だから危ないだろ!」
「あだっ!」
澪先輩の鉄拳が律先輩の頭に落ちた。
「じ、冗談だよぅ……」
「律のは冗談に聞こえん」
律先輩は相変わらずだな。
「あずにゃん」
「何ですか?」
「寒いでしょ? こっちおいでよ」
そういって、自分の横をを指差す。
「どこでもいっしょだと思うんですけど……」
「こっちは風邪が来ないよ?」
「……じゃあ、失礼します」
唯先輩の隣にしゃがみ込む。
その途端、木枯らしが吹いた。
「うぅ……寒い」
「あずにゃん、大丈夫?」
「唯先輩こそ、そっち寒いでしょう?」
わざわざ風上の方に移動して、風邪を防いでくれている。
「大丈夫だよ。あずにゃんがそばにいてくれたら暖かいよ」
そういうと、私に抱きついてきた。
「もう……」
「どれくらいで焼き芋ができるのかな?」
「とりあえずたき火が終わらないとできませんからね」
「早く食べたいなぁ……」
そんなことを言っているうちに、落ち葉は燃え尽きて灰になっていた。
「よし、じゃあおいもを埋めるよ!」
アルミホイルに包んださつまいもを地面に埋めていく。
「これでよし!」
「あとはしばらく待つだけね」
「ムギちゃん、どれくらいでできるの?」
「1時間ぐらいかしら?」
「い……いちじかん?」
それを聞いて、白くなっていく唯先輩。
「ゆ、唯先輩しっかりしてください!」
「い、いちじかんだってさ……。あははは……」
「そんなに時間があるなら、一度部室に戻って練習しましょうよ」
「そうだな。外にいるのも寒いし、戻ろうか」
「そうね」
「ほら、唯先輩行きますよ?」
「あはは……」
それから1時間後。
「んんん~! おいしい!」
満面の笑みで焼き芋を頬張る唯先輩。
「確かにおいしいな」
「ムギのおかげだな」
「うふふ。喜んでもらえてよかったわ」
私も一口……。
「あ、おいしい」
決して形がいいとは言えないけど、程よく焼けていておいしい。
「おいしいね、あずにゃん」
「そうですね」
私は半分に割った焼き芋を唯先輩に渡した。
「え? いいの?」
「……風邪から守ってくれたお礼です」
「ありがとう♪」
それからしばらく、みなさんと焼き芋を食べた。
また、機会があったら焼き芋してみたいな……。
END
ゲレンデ!
律先輩が”卒業旅行に行こう!”なんて言い出したので、みなさんとスキー場にやってきました。
「ところで、唯先輩ってスキーとかしたことあるんですか?」
「無いよ?」
「大丈夫なんですか?」
「多分大丈夫だよ。あ! あのボードかわいい!」
はぁ……。また突発的に選んでいく。
「あずにゃん、これどう?」
「それ、スノーボードですよ?」
「でもこの模様とかすごくいい感じだよぉ」
まぁ、やったこと無いんだったら色んなものに挑戦してみるのもいいかもしれない。
「じゃあ、それにしてゲレンデに行きましょうか」
「うん。れっつごー!」
ここから分岐ルートです。お好みのルートでお楽しみください。
ゲレンデ!(かわ唯.Ver)
「わ、あっ! これ足動かない!」
スノーボードに足を固定したはいいけど、うまく移動できないようだ。
「危ない!」
ぽすっ! っという間抜けな音と共に唯先輩が雪の中に倒れた。
「はぁ……。これ難しいよ」
「大丈夫ですか?」
「うん。ありがとう」
手を引いて立ちあがらせようとするけど、足が雪に沈んでとても不安定だ……!
「ゆ、唯先輩。もうちょっと強く引いてください!」
「だって、あずにゃんが動くから……。あっ!」
「うわっ!」
ドスンッ!
「いったぁ……」
「大丈夫?」
「はい、何とか」
思いっきり唯先輩にのしかかってしまった。
ゴーグルについた雪を払うと、唯先輩の顔がとても近くに見えた。
「あずにゃん、顔が雪だらけだよ」
「そういう唯先輩こそ」
「取ってあげるね?」
唯先輩が私の顔を撫でて、雪を払い落す。
「私もしてあげます」
お互いに雪を払い合った。
「おぅ、お二人さんお熱いですわね」
律先輩が後ろからにやにやしている。
「ちゃかさないでください!」
「そう向きになるなって」
むぅ、何だか癪にさわります。
何とか立ちあがって、体勢を整える。
「ごめんね、あずにゃん」
「初めてなんですから、私の目の届く範囲にいてください」
「えへへ」
そういって笑う唯先輩
「……」
「どうしたの?」
「へ? ……あ、何でもないです!」
まずい。唯先輩の笑顔に見とれてしまった。
ゲレンデで女の子は何倍増しかかわいく見えるって聞いたことがあるけど、本当みたいだ……。
「あずにゃん、どこかに行っちゃいやだよ?」
「どこにも行きませんよ。唯先輩こそ勝手にどこかに行かないで下さいよ?」
「あずにゃんから離れないようにするよ」
そう言っているそばから、スノーボードはあらぬ方向へと唯先輩を連れ去っていく。
「わ、とととと!」
「ちょっと、どこ行くんですか!」
はぁ……。先が思いやられます。
END
ゲレンデ!(かっこ唯.Ver)
「ふふふ、私もゲレンデデビューだよ!」
「初めてなんですから調子に乗らないで下さいよ?」
「わかってるよ」
すごく不安だ……。
「わっ!」
ぽすっ! っという間抜けな音と共に唯先輩が雪の中に倒れた。
「はぁ……。これ難しいよ」
「大丈夫ですか?」
「うん。ありがとう」
少しは滑れるようになってきたけど、止まっちゃうとだめみたいだ。
「あそこの人、上手に滑っているね」
「そうですね」
唯先輩が見ている人は確かに上手だ。ゲレンデを華麗に駆け抜けて行く。
「私だってあれぐらい!」フンス!
「変な対抗意識を持つのやめましょうよ……」
それから唯先輩は上手な人の観察を始めた。
確かに上手な人の動きを真似してみるのもいい手だ。
「よし、やってみよう!」
「無理しないで下さいよ?」
「いざとなったらお願いね?」
そう言い残して、唯先輩はゲレンデを滑りだした。
「ちょ! いきなりそんなスピードで……」
慌てて追いかけて行くが、唯先輩は思ったより安定して滑っている。
「おぉ! 何だかわかってきた気がする!」
それから唯先輩はどんどん上達していって、気がつけば私よりうまく滑れるようになっていた。
「私、何だか滑れるようになった!」
「おめでとうございます!」
ちょっとかっこいいと思ったのは内緒だ。
「あずにゃんにも教えてあげるよ!」
何だろう。すごく輝いて見える……。
「どうしたの? 顔が赤いよ?」
「え? あ、あの……ゆ、雪焼けです!」
「そうか、あずにゃん日焼けしやすいもんね」
はぁ……ちょっとドキドキしちゃった。
「これであずにゃんと一緒に滑れるね」
「そうですね」
「よし、じゃあ行こう!」
「はい!」
私は唯先輩に手を引かれて、ゲレンデへ繰り出した。
END
最終更新:2010年12月10日 13:51