「い…ぱ……ゆい…」
何処かで誰かが私の事を呼んでいる。
「せんぱ……ゆ…せんぱい」
優しさにあふれた心地よい声。
「唯先輩!」
起きなくちゃ…。
だって、私の大好きな人が呼んでるから。
『冬の日の二人』
「唯先輩! いつまで寝てるんですか?」
重い瞼を開けると、不機嫌そうに唇を尖らせた顔が私を覗き込んでいた。
知り合ってから毎日の様に見てきた表情に自然とニヤケ顔になってしまう。
「…ふへへ、おはよう、
あずにゃん」
「もう、何笑ってるんですか。 7時半とっくに過ぎてますよ」
目の前に差し出された目覚まし時計を見ると、7時半どころか、もうすぐ8時になろうとしてた。
どうやら、20分以上寝坊しちゃったみたい。
「……あっ!! 今日のゴミ出しと朝御飯の当番、私だよね?! 急がなきゃ!」
昨日の夜、寝る前に何度も何度も念を押された事を思い出して、一気に目が覚めた。
慌てて、布団から飛び起きる。
その瞬間、彼女の不機嫌そうな表情が崩れて苦笑いに変わった。
「ゴミは私がとっくに出しちゃいましたよ…」
「えっ?」
「あと、ハムエッグとサラダも作ってありますから。でも、トーストは唯先輩が焼いてくださいよ」
焼きたての方が美味しいですからね、そう付け加えながら、彼女は小さく溜め息を吐いた。
それは照れ隠しの意味が込められた溜め息だっていうことを私はよく知っている。
「あずにゃん…あ~ず~にゃ~ん!!」
「わっ! なっ、なんですか急に!」」
嬉しくて…凄く嬉しくて、私は思わず彼女に抱きつく。
細身で小っちゃい身体。
だけど、腕から伝わってくる感触は柔らかくて温かい。
「ありがと! いつもホントにありがと!! 私、あずにゃんをお嫁さんに貰って良かったよ!!」
「ちょっ?! なに言ってるんですか! べ、べ、べ、別に結婚してるわけじゃ…」
サラサラの黒髪の下の耳たぶが一瞬で真っ赤になった。
分かりやすいリアクションも私が好きな部分の一つだ。
「そ、それよりも今日は凄く寒いですよ! この冬一番の冷え込みだってニュースで言ってました」
「そういえば、ちょっと寒いね」
言われてみると、暖房が効いているこの部屋の中もいつもよりもちょっと肌寒い。
寒いのは子供の頃から大の苦手。
…だけど。
「でも、大丈夫だよ…」
華奢な身体を抱きしめる腕に少しだけ力を入れる。
「あずにゃんが傍に居てくれるから、私はあったかあったかだよ♪」
そう。
きみを抱きしめるだけで。
きみが居てくれるだけで
幸せが一杯で身体中、ポカポカだから。
「…もう、そんなこと言ってて風邪ひいても知らないですからね…」
真っ赤になった顔を埋めながら、ポツリと彼女は呟く。
その反応がまた可愛くて。
「ふふ。心配してくれてありがとうね♪」
私は腕の中の彼女の頭をそっと撫でた。
―――きみが傍に居てくれる それだけで大丈夫 どんなに寒くても 私は幸せ―――
- グッジョブ! -- (名無しさん) 2012-01-18 19:16:42
最終更新:2010年12月10日 20:10