「……んん」
眠たい目をあけてベッドの側に置いてある目覚まし時計を見る。
ただ今午前6時43分。

まだベルが鳴る前の目覚ましのスイッチを切り、ふぁ~と小さく欠伸をして、
まだ夢の中にいる隣の二人を起こさないようにそっとベッドから降りる。

「うう、さむっ」
パジャマの上から肩に掛けただけのカーディガンの中で手を擦りながら寝室からリビングを通り、
てるてる坊主が吊り下がるベランダの窓のカーテンを開けると、
まだ薄暗いけれど雲一つ無い空が広がっていた。
昨日はずっと雨が降ってたから心配だったけど。
よかった、この様子なら晴れそうだ。

今日はHTTの新曲のレコーディングが予想外に早く完成したため昨日急遽決まった休み。
しかも日曜という事で親子三人で動物園にピクニックに行く事になっているのだ。

顔を洗って髪をまとめ、簡単に身仕度していると、炊飯器の出来上がる音に呼ばれ台所へ向かう。
さてと、お弁当の準備に取り掛かりますか。

先ずはおにぎり。具はシャケと梅干しとおかかの三種類。
よしっ、おにぎり完成。一人三個もあれば足りるよね?

お次は揚げ物に取り掛かる。
鶏の唐揚げと海老フライ。
寝る前に下ごしらえしてあったから後は揚げるだけだ。
熱っ!油跳ねた…。

プチトマトをピックに刺し、ブロッコリーと星型にした人参を炒め、
ほうれん草の胡麻和えに、卵焼きは甘いのと塩味のと二種類。
あとウインナーをタコさんにしてっと。
うん、とりあえずこんなもんかな。

ひと通り準備が済んだところで壁の時計を見る。7時32分。
もうこんな時間か、そろそろ起こしておかないと。

寝室を伺うと二人ともまだ熟睡中。
ふふ、同じ寝相で寝てる。
さすが親子だね、なんて思わず口元が緩む。
でもせっかくの可愛い寝姿だけど起きてもらわなくちゃ。

「唯、ゆず、起きて!朝だよ!」
「「う~ん、あと5分~」」
そこはシンクロしなくていいです。

「ほら、ゆず!今日動物園行くんでしょ!」
「!!」
動物園の言葉に飛び起きた小さな体を抱きしめる。

「あずさおかあさんおはよ。…おそとはれてる?」
ゆずが不安げな顔で尋ねてきた。
「ゆずのてるてる坊主のおかげでバッチリ晴れてるよ」
「ほんと?」
憂いわく『見た目はお姉ちゃんで性格が梓ちゃん』らしいゆずがほにゃっとした笑顔になる。

そうして目を覚ましたゆずが隣の寝ぼすけを一生懸命揺すって起こそうとするけれど、
「うーん、あずにゃんがちゅーしてくれたら起きる~」
そう言って唯は布団を被り直してしまった。

…いや、あずにゃんて。朝から何言ってんのこの人。
「ちょっと、ゆ「もう!あずさおかあさん、はやくちゅーしたげて」
ちょ、ゆず?!

「ゆず、おかおあらってくるから。はやくおこしたげてね」
そう言うとゆずはさっさと洗面所に行ってしまった。
ええー。我が子ながら空気読みすぎだよ…

「もう、しょうがないですね。唯先輩は」
私はやれやれとため息をつきつつ、布団をめくってもにやにやを隠す気の無い唯に顔を近付けた。

「おはよ、梓」
えへへっと笑いながらようやく起き上がった唯に、ゆずの前でこういう事をしないよう釘を刺しておく。
しゅんとしてるけどホントに反省してるのかな。

「いやぁ、何時まで経っても梓は恥ずかしがり屋さんだねぇ」
朝食の準備に取り掛かろうと部屋から出る寸前、唯に後ろから抱きしめられた。
あ、全く反省してないみたい。

…別に、いまさらキスしたり抱きしめられるのが恥ずかしいわけじゃない。
昔と比べれば気持ちもわりと素直に言えるようになったし。
でも、我が子とはいえ人目が気になるのは仕方ないよ。

「……こういうのは二人きりの時だけにして欲しいな」
腰に回された手を掴んで振り返る。
あれ?唯の顔が赤い。

「…ずるいよ梓、今のは反則だよ」
そう言うと唯はおでこを私のおでこに合わせて、そのまま目を閉じて近付いてきた。
思わず反射的に私も目を閉じた瞬間、

「ゆいおかーさん、もうおきたー?」
「「!!」」
愛娘の声で唯も私も我に帰った。

「お、起きてるよ!おはよう、ゆず」
「おはよ。ゆいおかあさん」
「そ、それでは、わたくし、顔を洗ってくるであります!」
「い、いってらっしゃーい」
「ねえ、あずさおかあさんどしたの?おかおまっかだよ?」
「え?な、何でもないよ!あ、朝ご飯の支度しよっか」
「わかったー」
…危なかった。

気を取り直して、ゆずがお皿を並べてくれている間に食パンをトースターにセットして、サラダを準備する。

パンが焼けると、タイミング良く唯が食卓にやって来た。
唯がバターとイチゴジャム、ゆずはピーナッツバターとハチミツ、私はイチゴジャムのみ。
それからゆずと唯に砂糖たっぷりのカフェオレ、私はブラックコーヒーを用意して、

「「「いただきまーす」」」

なんやかんやで朝食の後片付けまで済ませて、お弁当もきちんと詰めた。
時間は9時11分。二人とも準備終わったかな?
玄関に荷物を運んで二人の様子を見に行こうとしたら声が近付いてきた。

「ゆいおかあさん、わすれものしてない?」
「あ、携帯無いっ!すぐ取ってくる!」
バタバタと足音が一人分離れていく。
…子供に確認されるなんて。
苦笑いしていると、唯とゆずが手を繋いで玄関にやって来た。

「あーずさ、お待たせ!」
「おまたせ!」
「唯、本当にもう忘れ物無いよね?」
「だ、大丈夫です!」

「それじゃあ、どうぶつえんにれっつごー!」
「「おーっ!!」」

今日も楽しい一日になりますように!

おしまい!


  • 子供ネタ、良いですね。 -- (名無しさん) 2012-09-26 21:54:29
  • あずにゃんめでたく結婚か?いいね -- (あずにゃんラブ) 2012-12-29 10:31:55
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最終更新:2011年02月09日 22:50