ある朝、いつものように登校しようと玄関を出ると…

唯「おっはー♪」

ほがらかに例のあのポーズを決める唯先輩が、門の横に立っていた。
私は一瞬あんぐりと口を開けたのち、すかさず突っ込んだ。

梓「なにやってるんですか!?」
唯「あずにゃん知らないの?これは昔流行ったんだけど、慎…」
梓「そういうことじゃなくて!なんで今ここに唯先輩がいるんですか!」
唯「なんでって…あずにゃんをお迎えに来たんだよ」
梓「お迎えって…そんな約束してないですよ!?」
唯「別に約束してなくたっていいでしょー?」
梓「そ、それは…ていうか先輩…」

唯先輩をよく見ると、頬は赤く染まっているし、鼻の頭も真っ赤だ。
一体どれくらいここにいたんだろうか…

梓「ところで先輩…いつからここに?」
唯「うーん…30分くらい前かなぁ」
梓「さ、30分!?なんで呼んでくれないんですか!」
唯「だって、あずにゃん起こしちゃったら悪いかなって思ったんだもん」
梓「だからって…」
唯「それにしてもあずにゃん、朝早いんだね!」
梓「か…」
唯「この時間、私ならまだ朝ごはん食べてるよー」
梓「か…」
唯「それに…へっきし!うー…」
梓「か!」
唯「か?」
梓「風邪ひいたらどうするんですか!」
唯「ふぇ…?」

私は大きな声を上げると、驚いたような顔をした先輩をそのまま抱きしめた。

唯「あ、あずにゃん…?」
梓「唯先輩のばか!なんであなたはそうなんですか!」
唯「え、えぇ?」

唯先輩の体はすっかり冷えていて、いつもの温かさは感じられない。
それがとても恐ろしいことのように感じられて、私はさらに力を込めて唯先輩を抱きしめる。

梓「こんなに冷えちゃって…どうしてこんなことしたの…?」
唯「だって…あずにゃんに早く会いたかったから」
梓「焦らなくたって、学校で会えるじゃない…」
唯「…ごめんなさい」
梓「もう…ばか」

しょんぼりとした唯先輩の頭を優しく撫でると、先輩はくすぐったそうに目をつぶる。
その姿はなんというか、かわいい。私は思わず唯先輩に頬ずりしてしまう。

唯「あずにゃん…くすぐったいよぅ」
梓「…いいの。あっためてるんだから」
唯「ねぇあずにゃん…もうお迎えに来ちゃだめ?」
梓「…だめじゃないよ」
唯「やったぁ♪」
梓「その代わり今度からはちゃんと家に入って待つこと!わかった?」
唯「…はい」

これだけ言っておけば大丈夫だろうか。
この人は変なところに気をつかうというか、自分がどうなるか考えずに行動する傾向があるからなぁ…
ま、そこもいいところと呼べるのかもしれないけど。

梓「…でも、うれしかった」
唯「え?なにが?」
梓「唯がこうして来てくれたこと…」
唯「えへへ…そっか♪」

先輩はうれしそうに笑った。今まで私に見せた笑顔と比べても、とびきり魅力的な笑顔だ。

梓「あ、学校…唯、そろそろ行かないと」
唯「うん、じゃあ行こう?」
梓「ちょ、ちょっと…手…」
唯「ん?繋ぐのやだ?」
梓「やじゃないけど…恥ずかしいよ」
唯「そっかー…でも残念、離さないよ~!」
梓「なっ…」
唯「だってあずにゃんの手、すごくあったかいんだもん♪」
梓「もー!唯のいじわる!」

私の手を引いて走り出す唯先輩の手を、私はぎゅっと握り返していた。
こういう姿を人に見られるのは確かに恥ずかしい。でも…

唯「ほーら急げあずにゃーん!」
梓「ま、待ってよ唯!」


…幸せだから、いいかな。


おしまい


  • やばいやばい・・・・・ 唯梓可愛すぎるっ!! -- (鯖猫) 2012-09-05 03:35:56
  • 2人共可愛いなぁ -- (名無しさん) 2014-06-14 20:16:05
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最終更新:2009年11月25日 11:17