確かに、横顔も素敵だと思いますけど
ライブの時の左肩越しに見た斜め後ろからの顔もいいと思いますよ
はっきりとその眼差しまでは見て取れないんですけど
きっと今真剣な眼差しで本当に楽しそうにギターを弾いてるんだろうなって
その表情が頭に強烈に浮かんできてドキドキするんです
唯先輩の動きに合わせて揺れる後ろ髪から垣間見える汗ばんだうなじとかも最高ですし
見蕩れてる時に「
あずにゃん」って振り返られて、視線だけで名前呼ばれるともう飛んじゃいそうになりますよ
それでですね、意外に唯先輩って視線に敏感って言うか――
私がそういう感じになってしまってるときは、大抵ライブの打ち上げが終わったあとメールで呼び出されるんですよね
もー、あずにゃん、またライブ中私のこと見てたでしょーって
ミスはなかったからよかったけど、ちょっと演奏が雑になってたよって注意されたりして
でも注意されてしょんぼりする私を、でも見ていてくれて嬉しかったよって抱きしめてくれるんです
昔はどちらかというと私のほうが注意するほうだったんですけど、最近はすっかり逆になっちゃって
であったあの頃からもう随分経ったんだなって、たくさんの時間をこの人と積み上げてきたんだなって感慨に耽ったりします
まあ、ぎゅうっと抱きしめられている間はそんな感慨なんておいておいて、その感触に耽っちゃうんですけどね
大抵そのあとはもう少し飲む?って唯先輩の部屋で二人だけの二次会って流れになるんです
というか、ライブのあとは大抵そういう感じになっちゃってますか
というよりこのところずっと、自室にいるより先輩の部屋にいるほうが長いので、自分の部屋解約しちゃいましょうかって先輩に言ったら
それもいいよね、いつでもおいでって言ってくれたから最近真剣に検討してたりするんですけど、ホント、何処まで本気なんでしょうね
ちなみに飲むって言ってもボーカルの先輩はライブ後のアルコールなんて厳禁ですからソフトドリンクで
必然的に私だけアルコールって形になるんですけど、それは何か卑怯だと思うんですよ
だって、私だけ酔ってしまって、私酔っちゃうと枷が効かなくなっちゃうから先輩にかなり甘えちゃうんですよね
それで先輩はまだ素面だから余裕の表情なんかしちゃって、私のことをよしよしあずにゃんなんて甘えさせてくれて
なんかちょっと負けてる気分がして悔しいんです。もちろん、すっごく気持ちいいんですけどね
で、そろそろ限界かなってくらいに私にアルコールが回り始めた頃に、そろそろお開きにしよっかって先輩が言うんです
本当にいいタイミングなんですよ。どれだけ私のこと見ててくれてるのかって
毎度のことなんですけど私それですごく嬉しくなっちゃって、きゅんってとろけちゃってまた先輩に甘えちゃうんです
唯先輩は仕方ないなあって優しい笑顔を浮かべてくれて、足腰多々ない私を抱き起こすとベッドに連れて行ってくれるんです
口にしなくても私の帰りたくない、今日はこのまま先輩と一緒にいたいってサインをちゃんと読み取ってくれるんですよね
本当に嬉しくて、唯先輩は優しくて柔らかくて暖かくて、――私の最高のパートナーなんです
朝、ほぼ確実に目を覚ますのは私が先ですね
昔に比べると随分大人になった唯先輩ですけど、朝弱いのは相変わらずなんです
だから私がそろそろ起きないとダメですよ、遅刻しますよって揺り起こすことになるんですけど
唯先輩はんぅ、とかふにゃとか可愛い寝言を漏らしながら、あと5分だけ~とかとろーんとなった顔で私に抱きついてくるんです
こういうところは変わらないなって思って、本当に可愛いって心の底から思っちゃうんですよね
変わったところ、変わらないところ、変わっていくところ、変わらないでいて欲しいと思うところ、変わらないでいようと思うところ
こうしてまた一瞬ごとに重ねていくこの人と共にある時間と記憶と、そして未来をもっとずっと重ねていきたいって思ってしまうんです
あの日先輩と交し合った約束、それをずっと守っていきたいって思うんです
まあ、それはそれとして、朝安眠をむさぼろうとする唯先輩に対しては容赦はしませんけどね
甘くすると本当に一日中ごろごろしてるんですから、この人は
というわけで掛け布団を引っぺがして、洗面台に引きずっていって、顔を洗わせて、その間にコップいっぱいの牛乳を用意してあげるんです
それをごきゅごきゅと飲み干して、ようやく目が覚めたかなーって顔で私を見る唯先輩に、こういうんです
「おはようございます唯先輩、今日も頑張りましょう」
――って
最終更新:2011年08月26日 00:16