オリキャラ(二人の子、柚と愛)注意
柚…唯似、6歳
愛…梓似、5歳
日曜日の午後。
居間のラグカーペットの上でつい眠ってしまっていた私が目を開けると、
ニコニコ笑顔の唯が見えた。
横になった私から少し離れた位置に中腰で立って、手には携帯電話を持って。
その持ち方から、
携帯のカメラがこちらに向けられているのがすぐにわかった。
私の寝顔でも撮ろうとしたのだろうかと、少し寝ぼけた頭で考えて……
上体を起こして声をかけようとしたところで、
と唯に言われてしまった。
あいた片手の人差し指が唇にあてられ、
携帯電話を持った手の方はこちらを押さえるように上から下に動かされる。
それは、静かに、そして動かないで、のジェスチャーだ。
そんな唯のジェスチャーに、私は思わず動きを止め……
そこで意識がはっきりとし、気が付いた。
お腹の上に何かが載っていて、身動きがしづらいことに。
「なんだろう?」と首を傾げながら自分のお腹の方を見ると、
「くー……んぅ……むにゃ……」
「スー……スー……スー」
私のお腹を枕にして、穏やかに寝ている柚と愛の姿が見えた。
互いに向き合うように体を横にして、
身を丸めるような格好で眠っている。
子供二人の気持ちよさそうな寝息を聞いて、
唯のジェスチャーの意を悟った。
なるほど、確かにこれは、「静かに」「動かないで」、だ。
こんなに気持ちよさそうに寝ているのに、起こしてしまったらかわいそうだ。
と、柚と愛の寝姿に笑みを浮かべたところで、
携帯電話のカメラのシャッター音が聞こえてきた。
視線を唯の方に戻せば、丁度携帯電話の画面を見て、
満足そうな笑みを浮かべたところだった。
「もうっ……唯っ」
写真を撮った唯に小声で文句を言って、私は頬を膨らませた。
一応目は覚めているけれど、まだ私は横になったままなのだ。
そんな姿を写真に撮られてしまうのは、
親しい相手であっても恥ずかしいし、照れくさいものだった。
「エヘヘ……うまく撮れたよ、あずにゃんっ」
そんな私の文句も気にせず、小声でそう言いながら唯が身を屈めた。
私の方に近寄って、手を伸ばして携帯電話の画面を向けてくる。
そこには撮ったばかりの写真が映っていた。
横になる私と、私のお腹を枕にして眠っている柚と愛と。
自分が寝ている姿はやっぱり恥ずかしいけれど……
気持ちよさそうに寝ている柚と愛の姿を見ては、
もう文句は言えなくなってしまった。
可愛い娘二人の寝姿の写真。
是非アルバムに入れておきたい写真だ。
「エッヘヘ……私の今週の待ち受け、決定~♪」
写真を見て自然と笑みを浮かべてしまっていた私だけど、
唯のその言葉に、思わず表情が固まってしまった。
「待ち受けって……私も映ってるじゃないっ」
柚と愛を起こさないよう、小声で文句を言う私。
唯の性格だと、きっと他の人にも待ち受け画像を見せたりすることだろう。
可愛い娘二人だけならともかく、
横になった私まで見られてしまうことにはやっぱり抵抗があった。
でも唯はまるで気にした様子もなく、
「三人とも可愛いんだからいいじゃ~ん」
携帯の画面を見ながらそんなことを言った。
「よくないわよっ、恥ずかしいでしょっ」
「まぁまぁ、あずにゃんさん、可愛いんだからそう恥ずかしがらないで」
「もうっ……恥ずかしいものは恥ずかしいのっ」
「よしわかったっ、じゃ、私も一緒に横になるねっ」
「解決になってないっ」
小声でそう言いあう私たち。でもいくら小声でも、
こう言いあっていたらやっぱり騒がしい空気にはなってしまうもので、
「う、う~ん……」
「……ん、んぅ~……」
柚と愛が小さく身じろぎをした。その動きに、私と唯は慌てて、
「「しーっ」」
同時に人差し指を唇の前に立てていた。
お互いの顔を見て、口を閉じて黙り、それから横目で柚と愛の方を見る。
幸い、柚と愛が起きてしまうことはなく、
すぐに穏やかな寝息が戻ってきていた。
その様子にほっと息をつき、視線を互いの顔に戻して……
同時に、私たちは笑みを浮かべていた。
「……よかった、起きちゃわなかったみたいだね」
「うん……よかった……」
携帯をしまった唯がそう言い、
私も柚と愛の寝姿を見ながら小さく頷いて見せる。
本当に気持ちよさそうに眠っていた。
夜のお休みとはまた違う、窓から入る温かい日差しの中でのお昼寝。
もし夢を見ているのなら、
きっと温かくて優しい夢を見ているのだろうと思った。
「……それじゃ、あずにゃん。私、ちょっとお風呂掃除してくるね」
「えっ、今日は私の番じゃ……」
「いいよぉ。柚も愛もこんなに気持ちよさそうなんだから、
お母さんはもうちょっと二人の枕になっててあげなきゃ」
「フフ……うん、わかった。じゃ、お願いね」
「うんっ、任されましたっ」
小声でそう言って、部屋を出ていく唯。
もう一人のお母さんを見送ると、私は視線を柚と愛の二人に戻した。
穏やかに眠っている柚と愛。
寝息にあわせて小さく胸が動いているのがわかる。
私のお腹に顔を埋めている姿に、
お母さん猫に甘えている子猫の姿が連想された。
「ふ、わぁぁぁ……」
と、自然と口からあくびが漏れていた。
温かい日の光と、柔らかいラグカーペットの毛、
そして柚と愛の穏やかな寝息が、私のまぶたを優しく引っ張っていた。
次第に意識がぼやけていき、考えがまとまらなくなっていって、
「私も、もうちょっとだけ……」
その呟きを最後に、私も眠りに身を任せていた……。
END
- 子供ネタはコミックアンソロジーにできる! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-08 01:33:07
最終更新:2011年09月16日 22:31