騒がしくて、落ち着きがなくて。
 だけど、とても優しく尊敬出来るセンパイ達と共に過ごした、軽音部での二年間。
 キラキラ、光り輝く、大切な時間。
 ひとりひとりに宛てて書いた手紙には、めいっぱいのありがとうを押し込めた。

「……」

 文字にしたい言葉なんてあふれるほどで。
 スラスラ、書きあげていったのだけど。
 最後の一つで、手が止まった。

「……唯、先輩」

 目を閉じなくたって網膜に焼き付けられている、力の抜けた締りのない……やわらかで、優しい笑顔。

 ――あずにゃん

 ねえ、唯先輩。
 恥ずかしい渾名を呼ばれて。
 抱き締められる、そのたびに。

 文字にも出来ない言葉が脳の中で生まれては、舌にのせる前に溶けて、でも消えずに。
 どこかやわらかなところに沁みこんでいったんですよ。

「    」

 音にならないかっこの中身は消しゴムで消して。
 並べたのは嘘じゃないけど全部には程遠い気持ち。




 夕焼け。
 抱き締められて、伝わる温もり。
 明日からは遠くなる、温もり。
 反射的に開きかけた唇を閉じて。
 肩にそっと顔を埋めた。
 どうせ言葉に出来るのは、可愛げのない憎まれ口だけだから。
 背にまわした腕に力を込めて、ぎゅぅっと抱き返して。

 「    」に温度。
 これが私の気持ちです。

「あずにゃん、だいすきっ!」

 ……ぎゅうぅぅ。

「い、いたた、痛いよ、あずにゃん」


 これが、私の気持ちです!


 *おわり*


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最終更新:2011年12月30日 23:25