『週間唯先輩予報』
「…んと、明日は数学と古文と……」ブツブツ
翌日
「おはよ~、憂、純」
「梓ちゃん、おはよ~」
「おはよっ、梓っ!」
バッグから教科書を取り出すと、ハラリと落ちる一枚の紙。
純がそれを拾い上げる。
「ん?梓、何か落ちたよ?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
♪週間唯先輩予報♪ (XX/XX~XX/XX)
月 火 水 木 金 土 日
登校 × × △ × ×
1休 × × × △ × × ×
2休 × × × × △
3休 △ × × × ×
昼休み × △ × △ ×
5休 × × × × × ○ ×
部活 ○ ○ ○ ○ ○
下校 ○ ○ ○ ○ ○
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「へ?…ああっ! 見ちゃダメっ!!」
「…梓…なに、これ?」
「あぁぁぁ……」
「…なんだったの、純ちゃん?」
「ほれ」
「ちょっ、純!」
「…週間唯先輩予報? …へ? お姉ちゃん予報?」
「え、えーと…」
「さて、梓…説明してもらおうかね?」
「え、えっと…あはは…」
「梓ちゃん…私もその、知りたい…かな?」
「…あーもぅ!わかったよ!説明すればいいんでしょ?」
「お、梓が開き直った…」
「こほん…週間天気予報ってあるでしょ?」
「あ、うん、あるね」
「んと…これはその…唯先輩がね?
私に抱きついたり、スキンシップをしてくる可能性を
週間天気予報みたいに一週間分まとめたものなの」
「…え?」
「…え?」
「…いや、え?じゃなくって…二人ともちゃんと聞いてた?」
「あ、うん…聞いてたけど…ね、純ちゃん…」
「…ごめん、梓…意味がわかんない」
「いや、だからさ…唯先輩ってさ、いつもいきなり抱きついてくるでしょ?」
『あーっ!
あずにゃんだー!』 って感じでさ?」
「あ、似てる似てる」
「そ、そっかな? えへへ///」
「それはいいから」
「でね、私としてはいきなり抱きつかれるとその、ドキドキ…いや
びっくりしちゃうんだよね?
ほら、心臓に悪いっていうか、寿命が縮まるって言うか、そんな感じでさ?」
「本音が少し聞こえた気がするけど、まぁ、確かにびっくりするだろうね?」
「でね? 唯先輩がいつ私に抱きつきに来るかが分かれば、対処のしようがあるのよ」
「対処?」
「”抱きついて来るな”って分っていれば驚かないで済むし、寿命も縮まらないでしょ?
余裕を持って、唯先輩を迎え入れ…向き合えるのよ
そのための一週間分の予報なの」
「…梓…あんたバカでしょ?」
「なっ! なんでっ!?」
「いや、だってねぇ、憂?」
「あ、あははは…」
「まぁそれは置いといて……この表のマークはどうゆう意味なのさ」
「あ、んとね…この○は、抱きつかれる可能性がすごく高いってこと。
で、△が抱きつかれるかもしれない、×は抱きつかれないっていう意味だよ」
「ああ、なるほど、○ばっかりなのは部活の時間だからか」
「うん、そゆこと」
「天気予報で言うなら、○は晴れ、△が曇りで、×は雨…かな」
「梓…やっぱりあんた、唯先輩の事、大好きなんだね~」
「なっ! なんでそうなるのよ!///」
「…梓ちゃん、お姉ちゃんに抱きつかれるのを警戒してるんだったら、”○”じゃなくて”×”つけないとだよ?」
「え?」
「天気予報で言うなら抱きつかれる=雨=×、抱きつかれない=晴=○ っていう事なんでしょ?
でもこの書き方だと抱きつかれるのが嬉しいとしかみえないよ」クスクス
「…はっ! あ、あれ? ちょっとまって…あれれ///」
「もう遅いわ!」
「で、唯先輩大好きの梓さんや」
「ちょ!何言っちゃってんのよ! だから、違うんだって!///」
「はいはい…で、この表って時間割に合わせてあるんだ?」
「へ? あ、うん 休み時間に合わせてあるんだ
だから、基本的に×ばっかでしょ?」
「ふ~ん、でもたまに△があるのはなんで?」
「それは教室移動がある科目のとこ」
「おー…なるほど」
「あ、ほんとだ、今日4限目の家庭科の前が△になってる」 (#3休のところです)
「ひょ~っとしたら廊下でばったり会っちゃうかもって事だから△なの」
「…梓、あんたが頭いいのか悪いのかわかんなくなってきたよ…」
「ひどっ!」
「まぁまぁ、梓ちゃん」
「じゃあさ、この水曜日の登校中が△なのは?」
「あー…えっとー…」
「ん?」
「私と唯先輩って、基本的に登校時間が違うから朝は会わないんだよね~」
「そうだよね~ お姉ちゃん、朝起きるの遅いから」
「でもさ、唯先輩だってたまには早起きして、早めに登校するかも知れないでしょ?」
「…なくは無いけど…」
「それに、私もたまには寝坊しちゃって、遅くなることだってあるかもしれないし!」
「…梓……水曜日、遅れて来る気まんまんだね?」
「なっ!そんな事ないって!
天気予報だって、明日雨ってあっても、絶対降るわけじゃないよね? それと同じだよ!
あくまでも、予報なんだから!」
「いや、そんなムキにならんでも…」
「梓ちゃん、落ち着いて」
「あ、ご、ごめん」
「じゃ、じゃあ、火曜と木曜の昼休みが△なのは?」
「あ、それは購買でバッタリ…とかかな?」
「でもお姉ちゃん、お弁当だよ?」
「うっ…でも、でも、唯先輩の事だからうっかりお弁当箱忘れちゃったりするんじゃないかな~とかさ?」
「私がお姉ちゃんの鞄にお弁当箱いれてるから、それは無いよ?」
「…う…」
「それにアンタだって弁当でしょ? パン買いに行かないじゃん」
「…その日はパンだもん…」ジワ・・・
「ああ、あずさちゃん、か、火曜日はパンにするから!」
「ぐすっ…うん…ありがと、憂…」グスン
「…だんだんめんどくさくなってきたなぁ…」
「じゃあさ、梓ちゃん、土曜日の○は何?」
「…うん…その日は午後から唯先輩と遊ぶんだ…」
「あ、約束してあるんだ~」
「…ううん…今日約束しようかなって…///」
「って、まだなんかいっ!」ビシッ
「あだっ」
「っていうかさ梓、この表ってさ…」
「な、何?」
「”唯先輩に会いたい予報”だよね?完っ璧に!」
「~~~~っ!!///」
「ありゃ、図星みたいだね~」ニヤニヤ
「もう純ちゃん、 梓ちゃんこまってるよ?」
「……最初はね…」
「ん?」
「最初は、ほんとに、いつ抱きつかれるかを予測して表をつくってたの…
でもね、表にしてみたら、私と唯先輩って、部活と帰り以外はほとんど会ってないんだって気づいてね…」
「それは、学年違うから仕方ないじゃん」
「うん、そうなんだけど…そう気づいたらもっと会えてもいいんじゃ無いかなって思えてきて…」
「梓ちゃん…」
「軽音部でいつも一緒だから、いつでも一緒いるような気になってたの…」
「…なーに湿っぽくなっちゃってんの、この子は!」グリグリ
「ちょ、ちょっと…なにすんの…」
「アンタ達軽音部の仲のよさってさ、同級生の私達が羨ましくなるくらいなんだよ?」
「…え?」
「特に梓と唯先輩なんてさ、誰から見てもすっごく仲が良くて
確かに会えない時間の方が多いんだろうけど、その分会ってる時の密度がすごくって…
…多分唯先輩が梓に抱きついてるせいだとおもうんだけどね
本当に幸せそうに見えるんだよ?」
「そうだよ、梓ちゃん お姉ちゃんも言ってたんだ
”あずにゃんに会えない時間はちょっと寂しいけど、そうならないように会えた時には目一杯抱きつくんだ~” って
”あずにゃん分” って、寂しさを少しだけ紛らわせる効果もあるんだって」
「ゆ、唯先輩…」
「よかったね、梓……唯先輩も同じ気持ちみたいだね
だからさ、無理に朝寝坊したり、パン食にしたりするより、昼休みくらい素直に会いに行けばいいんだよ」
「そうだよ、梓ちゃん」
「で、でも、純や憂を放っておいてそこまで…」
「毎日じゃなくてもいいしさ、それに私らも一緒に行けばいいじゃんか」
「え?」
「そうだよ?私だってお姉ちゃんに会えるのは嬉しいよ?」
「純…憂…」
「ついでにさ…告白しちゃうってもアリだと思うよ~?」ニヤリ
「んなっ! こっ…こっ…こく……ってっ! えぇぇぇぇっ!!」
「わぁ~、それいいかも~」
「もぅっ! ういまでっ!」
「やれやれ…
じゃあ梓、この表はもういらないよね?」ビリビリビリーッ
「あ…純、それ… 宿題のプリント…なんだけど…」
「…あんた、どこ何書いてんの…」
FIN.
- 素晴らしい、ちょっと頭悪いあずにゃんは可愛いな -- (名無しさん) 2012-02-21 18:16:35
- バカにゃんの可愛らしさと言ったら -- (名無しさん) 2012-03-01 19:33:12
- 天然あずにゃん可愛い -- (あずにゃんラブ) 2013-01-04 08:30:42
- 2828(  ̄▽ ̄) -- (名無しさん) 2013-10-27 00:52:28
最終更新:2012年02月19日 16:03