「……まったく、唯先輩は……」
あずにゃんの声が聞こえてきて、私は重たい目蓋を少しだけ持ち上げた。
青い布がすぐ目の前に見えた。
(あれ……これ……)
ぼんやりとした頭で、それでも青い布の正体はすぐに思いついた。
この青い布は、あずにゃんが今日はいていたスカートだ。
あずにゃんのスカートが、私のすぐ目の前、本当に目と鼻の先にあった。
……私の顔は、あずにゃんのスカートの上にあるようだった。
(えっと……)
布の正体はわかっても、どういう状況なのかがよくわからない。
ぼやけた頭では考えがまとまらず……ボーっとしたまま顔を少し動かしてみた。
スカートの下には、柔らかくも弾力のあるなにかがあった。
とても温かくて、気持ちがいいなにか。
その感触と温もりをもっと味わいたくて、また顔を動かした。
「ひゃうっ……くすぐったいですっ……」
すぐ近くからあずにゃんの声が聞こえてきた。
私の耳のすぐ側。声と一緒に、吐息もちょっと感じた。
(……ああ、そっか……)
私、あずにゃんに膝枕されているんだ。
ぼやけた頭で、ようやく状況を理解した。
そして同時に思い出した。
今日は日曜日で、ギターの特訓をするために
朝からあずにゃんのお家にお邪魔したこと。
お昼にあずにゃんがご飯を作ってくれたことが嬉しくて食べ過ぎて
……そして満腹の心地よさに、私は寝ちゃったことを。
(またあずにゃんに迷惑かけちゃってるなぁ……)
今日はギターの特訓にきたのに。
二人きりで集中して練習できますねって、あずにゃん喜んでいたのに。
満腹になって寝ちゃって、しかも膝を枕代わりにされて……
あずにゃんもあきれているだろうなぁ。
あきれているだけならまだいいけど、怒っちゃっているかもしれない。
怒ったあずにゃんもかわいいけど、
でもやっぱり喜んでいるあずにゃんの方がかわいいから……
(うん……もう起きないと……)
起きて、ギターの練習をしないと。
そう思って、私は起き上がろうとしたけど……
「ほんと……しょうがないんですから、唯先輩は……」
小さな呟きが聞こえて、同時にあずにゃんに頭を撫でられて……
起きようという意志は、溶けるように消えてしまった。
そのままあずにゃんは、私の頭を撫で続けた。
優しいその手が心地よくて、撫でられる度に全身から力が抜けていく。
顔はスカートの布に深く埋まり、肌の温もりに捕らわれてもう動けない。
薄くあけていた目蓋は、自然と閉じてしまっていた。
(ああ……気持ちいい……)
もう起きようなんて、とても思えなかった。
「気持ちいいですか、ゆい……にゃん……」
ゆいにゃんと呼ばれて……それに応えるように、私は頬をスカートにこすりつけた。
くすぐったそうに、あずにゃんが小声で笑った。
「今の先輩はまるでネコさんですね。私の……私だけの、ネコさんです……」
あずにゃんの声が聞こえてきて……ああ、今の私はネコさんなんだと、そう思った。
あずにゃんの先輩じゃなくて、ネコさん……あずにゃんだけのネコさんだ。
ネコさんなんだから……。
(……もっと甘えても、いいよね)
体を丸めて、スカートの端を指でつまんで、顔を深く布に埋めて……
私は小さくなって、あずにゃんの膝枕に甘えた。
(いいよね……だって今の私、ネコさんだもん……)
私の胸中の呟きに応えるように、あずにゃんがまた私の頭を、優しく撫でてくれた。
心地よい温かさに、また私は眠りに落ちていった……。
「エヘヘヘ……ゆいにゃん……」
「……にゃぁ」
- そして俺は萌え死ぬのであった -- (名無しさん) 2010-06-22 15:05:58
- さらに私も萌え死ぬのであった…。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 02:26:34
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最終更新:2010年05月12日 21:08