「唯先輩の部活での写真が欲しい・・・?」

それは蒸し暑い七月初めのことだった。放課後、下敷きをうちわ代わりにして
パタパタ忙しなく顔を仰いでいた私にクラスメイト数人が暑苦しい勢いで詰め寄る。。

モブA「お願い!唯先輩と梓ちゃんっていつも仲良いじゃん!」
モブB「写真の十枚や二十枚撮るの簡単でしょ?」
モブC「報酬はタイヤキ五つでどう?」

      • つまり彼女らは熱狂的な唯先輩の大ファンだということらしい。
秋山澪ファンクラブほどの大所帯ではないため、あえて組織化させず
少数精鋭が水面下で唯先輩を追っているというのだ。

モブA「あの天然で明るくてポワっとしてる所がたまんない!」ハアハア
モブB「年上なのに母性本能ガンガン刺激されるんだよねー!」ハアハア
モブC「私なんて廊下でぶつかったふりして頭なでちゃった!」ハアハア

私は何故か彼女達が夢中で唯先輩の話をしているのを聞いていると
こめかみがピクピクと脈打ち、顔が引きつるのを感じた。

モブA「それじゃデジカメ渡すから好きなだけ撮ってきて!」
モブB「できれば少しくらい露出多い写真も欲しいかも」ハアハア
モブC「梓ちゃんなら、きっと大丈夫だよね!」ハアハア

彼女達は半ば強引にデジカメを私の両手に押しつけると
返事も聞かずにキャーキャー言いながら自分達の席に戻っていった。

純「・・・梓ァ、大丈夫?」

自分の席からずっと、こちらの様子を窺っていた純が心配そうに
私の顔を覗き込んでくる。
あのクラスメイト達はクラスでも特に大人っぽいグループで
実質このクラスで一番目立っているグループだった。

秋山澪ファンクラブ会員のような大人しめな妹タイプとは違って
メイクばっちりのお姉さんタイプ。どう見ても唯先輩より年下には見えない。
きっと、ああいう子達だからこそ唯先輩のようなタイプに弱いのだろう。

梓「・・・写真を撮るくらい平気だよ。」

別にタイヤキに釣られたわけではない。彼女達の熱気に押されてしまったのと
やはりクラスを仕切るグループの頼みは断り辛いというのも多少あった。

私は先ほどから喉に何か詰まっているような不快感と、胸の中のモヤモヤを
暑さのせいだと思うことにして、なんとなく重い足取りで唯先輩達の待つ
部室へと向かった。

唯「よさこい!」

私が気まずそうに事情を説明すると唯先輩は、いつも通り屈託のない笑顔で
勝手にいろいろなポーズを取り始めた。

梓「い、いいんですか?写真いろいろ撮らせてもらって・・・」

唯「あずにゃんのお願いなら全然オッケーだよ~」

そう言いながら唯先輩は、いつも通り私に抱きついてくる。
唯「あ~つ~い~。でも、か~わ~い~い~!」

少し汗ばんだ唯先輩に頬擦りされて、私の胸はタイムリミット寸前の
爆弾みたいにと高鳴る。きっとこれも暑さのせいだ。
しばらく口から涎が垂れそうなほどの思考停止状態になってしまったが
周りでニヤニヤしている律先輩やムギ先輩の視線に気付いて、慌てて唯先輩を
突き飛ばすようにして離れた。

唯「あう・・・」
律「おいおい梓~それが頼み事した人に対する態度か~?」
紬「あらあらまあまあ」

まだニヤニヤしながら律先輩がイジワルな事を言ってくる。
私は最後の砦である澪先輩に助けを求める視線を送ったが
澪先輩は今手がけているサマーソングの作詞に頭をひねらせており
こちらの騒ぎに全く気付いていなかった。

唯先輩撮影会は当初のゴタゴタが嘘のように順調に進んだ。

笑顔でギターを弾きながら歌う唯先輩。
みんなと談笑しながらケーキを頬張る唯先輩。
様々な唯先輩の姿をデジカメに納めていくうちに私のテンションは
どんどん上がっていく。もっと可愛い唯先輩の姿が見たいと躍起になる。     
なんだろうコレ。コレも、きっと夏のせいだ。

「それじゃ次は少しセクシーなのも撮ってやるです!」

いつもなら絶対に言えないようなセリフも勢いでポンと出てしまう。
だがその瞬間、予想していた唯先輩の軽い反応とは違うリアクションが
返ってきた。

唯「・・・え?せくしーって・・・ど、どんなのかなァ?」

梓「え、あ、あの唯先輩・・・」

律「いつも唯とか紬がやってるスク水とかのコスプレだろ?」

頭に冷水を浴びせられたような衝撃ですぐに我に返った私がフォローしようと
したのを律先輩の呑気な声が遮る。

律「いつもみたいにチャチャっとやってやればいいんじゃないか?」
紬「梓ちゃん友達に頼まれちゃったんでしょ?」

唯「あ、でも写真ってあずにゃんの友達に渡すんだよね・・・?」

律「そうだぞー?それがどうかしたか?」
紬「梓ちゃん友達に頼まれちゃったんだものね♪」

律先輩とムギ先輩は唯先輩の微妙な変化に気付かないのだろうか?
私には分かる。いつも唯先輩に抱きつかれて一番近くで唯先輩の鼓動を
体温を感じている私には唯先輩が今明らかに恥ずかしがっていることが
手に取るように分かる。

唯「だ、だよね!あずにゃんが友達に嫌われちゃったら大変だもんね」
唯「そ、それじゃ着替えてくるからチョット待っててね?」

そう言うと唯先輩は、さわ子s衣装シリーズからスクール水着を取り出すと
トボトボとトイレに歩いていってしまった。

ほどなくして唯先輩の撮影会セクシー編が始まった。
恥ずかしがる唯先輩の水着姿にカメラを向けた瞬間、痺れのような不思議な
感覚が私の全身を駆け抜ける。

さっきまでの申し訳ないと思っていた気持ちは完全に消え失せて
私は無我夢中で何度も何度も執拗に水着姿の唯先輩にカメラを向けた。
自分でも異常なまで鼻息が荒くなっているのが分かる。
なぜだろう。きっと七月のせいだ。

その時、ふとカメラから外した私の目と唯先輩の目が合った。
唯先輩の目は羞恥のためか赤く潤んでる。
頭の中に今まですっかり忘れていたどうしようもない事実が浮かぶ。

この唯先輩は・・水着姿で目を赤らめている唯先輩の写真は・・・
わ・た・し・以・外・の人・間・の・手・に・渡・る・ん・だ。
彼女達は、この唯先輩の写真をどうするのだろう。

興奮するのだろうか。私の唯先輩が水着姿で恥ずかしがっている写真で。
ナニをするのだろうか。私の唯先輩で。私の唯先輩で。私の唯先輩で・・・

「そんなのダメダメですーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」

ドッカーン。私の頭で何かが大爆発した。

「ど、どうしたの!?あずにゃん!?」

慌てて駆け寄ってくる唯先輩に私は脱ぎちらかされていた服を投げつける。

「さっさと服を着るです!はしたないです!」

「な、なに言ってんだ!?唯は梓のために・・・」

「うっさいです!律先輩も今の唯先輩の姿は全部忘れるです!」

「む、無茶いうなーーーーーーーーっ」

「あらあら♪まあまあ♪」

「他人事じゃないです!ムギ先輩も忘れるです!」

「い♪や♪恥ずかしがる唯ちゃん良かったわ~」ハアハア

「ダメーーーーー!忘れるったら忘れるですーーー!」

ワーーー!ドッタンバッタンリッチャンムッギュン!ヤッテヤルデスーーー!

唯「・・・ふぇ?」

(今日、私が唯先輩に感じた熱い気持ちは何だったんだろう)
(きっと全部、夏のせいです!)


澪「・・・で、できた!け、傑作だぞコレは!」
澪「・・・ん?あいつら、なに騒いでるんだ?」
澪「ま、いっか。それにしても我ながら良い詩だな!」
澪「なんか曲のインスピレーションまで沸いてきたぞ!」

♪この胸の高鳴りは なんなんだろう
♪この頬の熱さは  なんなんだろう
♪あなたの言いたいことは わかってる
♪だけど これは きっと恋じゃない
♪だって恋には熱すぎる 私の恋は宇治金時
♪きっと それは夏のせい 永遠の夏が見せた幻ね

~~えんど!~~


  • …………宇治金時? -- (佐藤) 2010-06-16 00:58:02
  • 宇治金も良いが夏はやっぱり白熊 -- (名無しさん) 2010-06-16 08:16:09
  • アイスいいねアイス -- (名無しさん) 2010-06-22 22:10:55
  • あずにゃんかわいい -- (名無しさん) 2010-06-23 16:30:13
  • 渋い恋いだな -- (名無しさん) 2010-08-05 00:54:41
  • モブの気持ちすごくわかるわ -- (名無し) 2012-09-23 11:31:26
  • 宇治金時w -- (名無しさん) 2013-10-29 00:54:49
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最終更新:2010年06月15日 20:14