放課後、いつものように音楽準備室の扉を開けた私は、
いつもの席に突っ伏している唯先輩の姿を見つけていた。
「唯先輩?」
声をかけて近づくけれど、唯先輩が顔を上げる様子はなかった。
まさかと思って側に立てば……
案の定、唯先輩はぐっすりと眠っていた。
半開きの口からは寝息が漏れ、
呼吸に合わせて規則正しく背中が上下している。
両腕を枕に眠っているその顔は本当に気持ちよさそうで、
そんな寝顔につい私の顔にも笑みが浮かんでしまった。
「もうっ……しょうがないですねぇ、唯先輩は……」
幸せそうな寝顔に、このまま寝かせておいてあげたい……
なんて少し思ってしまったけれど。
でもそういうわけにもいかなかった。
これから部活があるというのに、
いつまでも寝かせておくわけにはいかないだろう。
「澪先輩たちだって、すぐに来られるでしょうし……」
最初はティータイムなのだから、
練習が始まるまで寝かせておいてもいいかな、とも思うけれど……
でも唯先輩にとってみたら、
ティータイムを寝過ごしてしまう方が大問題だろう。
お菓子を食べ損ねてしまったら、
拗ねて泣いてしまうかもしれない……
私がそう思ったのと、
「ぅにゃ……私の、お菓子……とっちゃ……ダメェ……」
唯先輩が寝言を口にしたのは同時だった。
まるで私の考えを読んだかのような寝言に、
堪えきれず笑ってしまう。
「もうっ……お菓子とられたくなかったら、
起きなきゃダメですよ、唯先輩」
そう言って、私はふざけて唯先輩の頬を突こうと手を伸ばし、
「……はむっ」
「にゃっ!」
私の人差し指は、唯先輩の頬に触れることなく……
口にくわえられてしまっていた。
温かい感触に指を挟まれ、私は悲鳴を上げてしまう。
その声にも唯先輩は目を覚まさず、
目蓋を閉じたまま、不自然な姿勢で頭を浮かしていた。
苦しい姿勢にもかかわらず、しっかり私の指をくわえ続けていた。
「ゆ、唯先輩!」
驚きと恥ずかしさに声を上げ、唯先輩を起こそうとする。
ほとんど耳元で大声を上げているのに、
でも唯先輩は目を覚まさない。
そして、その代わりだとでもいうかのように、
「……ペロ」
「にゃぁっ!!」
指先に、湿った感触を感じた。
指先を唯先輩の舌になめられたのだと、すぐに気がついた。
温かい舌が皮膚の表面を撫で、私の指を濡らしていった。
「ゆ、唯せんぱ……や、やめ……」
「……ぅちゅ……ペロ……ちゅうぅ……」
「ひにゃっ!」
私の制止の声は届かず、唯先輩の口が、舌が動く。
人差し指を吸われ、指先をなめられて……
その度に私は悲鳴を上げてしまった。
温かい感触に力が抜け、こそばゆさに背筋が震えた。
「……あめちゃん……あまひ……」
私の指をくわえたまま、モゴモゴと唯先輩が言う。
その顔はお菓子を食べているときのように笑み崩れていて……
寝言から察するに、きっと夢の中で、
唯先輩は美味しいあめをなめているのだろう。
でも現実に口にしているのは、
あめではなく私の指なわけで……
「わ、私の指はあめじゃないです!」
そう叫んで、私は唯先輩を起こそうとした。
耳元で、繰り返し「唯先輩!」と名前を呼ぶ。
でもやっぱり、唯先輩は目を覚まさず……
「……ちゅっ……ペロ……ペロペロ……んちゅちゅぅ……」
「……にゃっ……ゆ、唯せんぱ……起き……ひにゃぁっ!」
……部室にやってきた澪先輩に、
「……普通に口から指を抜けば、それで済むことだろう……」
と言われて気がつくまで、
私は唯先輩に指を舐められ続けていたのだった……。
END
おまけ
「……もうっ、ひどい目にあいました」
「エヘヘ、ごめんね……
でも、夢の中で食べたあめちゃん、甘くて美味しかったなぁ……」
「……言っておきますけど、私の指はあめじゃないですからね」
「ん~、そだね」(ペロ)
「にゃっ」
「うん、あめちゃんよりも、甘くて美味しいよ……」
「……も、もうっ」
- あずにゃんってやっぱ天然? -- (名無しさん) 2010-08-26 23:28:00
- ↑そうかも。でもそれが萌え要素! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 00:05:53
最終更新:2010年06月23日 22:53