そう思った瞬間、その疑問を遮断させるように、部屋のドアがコンコン、と鳴った。
返事をする元気はあまりない。でもとりあえず生きてるよと暗示させるために小さく「あーい……」と返事してみた。
多分憂だろうなー、ごはんかなー。おなかすい……
「し、失礼します」
「たぁぁぁああぁぁあずにゃああああん!!??」
「うわぁ、なななななんですかーーーー!!??」
なんとなんと、部屋に申し訳なさそうに入ってきたのは愛しの
あずにゃんではないですか!!
わああすごい。夢かな?夢?痛い?痛くない!!
「ちょ、唯先輩、何自分のほっぺなんてつねってんですか。大丈夫ですか?」
「えっ!?あ、うん!へいきへいき。だいじょーぶだよー」
どうやら無意識のうちにやっちゃってたらしい、確認。
もー、とあずにゃんは怒ってるようだけど、ドアの閉め方はすごく丁寧なところを見ると、あんま怒ってないみたい。
ベッドで横になってる私に近づくと、あずにゃんは、ずい、と持っていた紙袋を目の前に差し出した。
「これ、軽音部のみなさんからです。って、まぁ、今日のティータイムのお菓子なんですけど……」
「お菓子!本当!?わ~今日食べられないって思っててすっごく残念だったんだ~。ありがとうっ」
袋を受け取り中を見る。ケーキ屋さんみたいな入れ物に入ってるから、ケーキかなぁ。まぁ、今は食べる元気なんてないけどね……、残念。
「……唯先輩、ホントに熱あるんですか?なんか、すごい元気ですけど」
「えっ。やだな、ホントだよぅ。ああ~頭が痛い~っ」
「今更ですかっ。……まぁ、唯先輩らしいですね。ふふっ」
猫みたいに笑うあずにゃんは、なんというか、やっぱりかわいい。
おっと、いけない。こんなこと思ってたらまたあずにゃんになんか言われるね、顔に出ちゃうから。危ない危ない。
「でも、その調子だと、あんま悪くなさそうで安心しました。今朝、憂すっごく暗かったんで、なんかすごく大変な状態なのかと」
「憂は大袈裟だからね~。仕方ないよ」
私も、今朝の憂の慌てぶりを思い出し、少し苦笑する。
それを見たあずにゃんが、おんなじように苦笑して、私のそばに座る。
「やっぱ、顔赤いですね、唯先輩」
「え!?そ、そう?」
あずにゃんの顔が近いれす!!ヤバい!!なんで近づけるの!!?うっひょうなんか変なテンションになってきたよう……!!
「熱、何度くらいですか?」
「え?う、う~ん……。39、とか?」
「高っ!!ちょ、大変じゃないですか!!」
えっ、なんか今テキトーに頭に出た数字言っただけなんだけど……。
てゆうか、何度とか、そんなの一回寝たら覚えてないよう……。
「だ、だめです!ちゃんと寝てないと!!ほら、布団ちゃんとかぶって!!」
「うにゃ、あずにゃん、大袈裟だよ~」
「大袈裟なんかじゃないです!唯先輩が、もしいなくなっちゃったりしたら……」
「したら?」
あっ、と小さく呟いて、口元をおさえる。
すると、あずにゃんの顔がみるみる赤くなっていく……、わぁすごい。なんで赤くなってるんだろう。かわいいけど。
「ななな、なんでもないです!!とにかく、寝るんです!!」
「あわわ、分かったって、あずにゃ~ん」
あんまりにも必死に私を寝かそうとするので、仕方なくそれに応じる。
でも、あずにゃんが折角来てくれたのに、ゆっくり寝ちゃうなんて、そんなの勿体ないよね……。
「ところであずにゃん、今日はなんであずにゃんだけなの?」
なので、あずにゃんとお話タイムにすることにします。
「へ?あ、ええと。なんか、他の先輩方が、そのほうがいいって……」
「他って、軽音部の?」
「はい。私は、皆さんとで行ったほうがいいと思ったんですが、なんか、私一人だけのほうが唯先輩が喜ぶって……」
はぁ、なるほど。流石澪ちゃんたち。私の好みを知ってるなぁ。
でもなんか、事を率先して決めたのがムギちゃんなような気もするけど。はて、なぜだろう。風邪で変になっちゃったのかな?私。
まぁ、嬉しいことには変わりないけどねっ。
「で、あのう、先輩……」
「んぅ?なに?」
あずにゃんが改まってもじもじとしながら、言葉を選んでいる。
女の子座りで、手をもじもじとさせるのは、ずるいと思うんだ、あずにゃん。
「わ、私だけで、良かったのでしょうか?」
「ん?なにが?」
「だ、だから、そのぅ。……お見舞い……」
ああ、なんだ、そんなことかぁ。
流石にまだ体がダルいので、手だけあずにゃんのほうに伸ばして、やや下を向いているツインテールな頭の中心部をなでなでしてあげる。
「うん。あずにゃんが来てくれて、あずにゃんとお話しできて、すっごく嬉しいよ」
だってあずにゃんの表情は誰よりも心配そうで、
私がそれほど体調が悪くないと分かると、ものすごく安心した顔をしてくれて、
そんなあずにゃんに、来てほしくなかったなんて、心にもないこと、言える訳がない。言う必要もないしね。
するとあずにゃんは、一瞬驚いたような顔をして、かと思うと、またいつものような、