梓「こんにちは!」
憂「いらっしゃい、梓ちゃん♪」
今日は唯先輩の家にやってきた。一応宿題をする、という名目で来たのだけど、実は本当の目的は別にある。それは…
梓「うっ、憂!」
憂「なに?」
梓「宿題、唯先輩も一緒にやるっていうのはどうかな!?」
憂「え?なんで?」
梓「えーっと…ほら、どうせ唯先輩も宿題終わってないだろうし、3人でやって唯先輩に教えてあげられたらなって」
憂「なるほど…さすが梓ちゃん、お姉ちゃんのこと考えてくれてるんだね!」
梓「そっ、そそ、そんなことないし!な、なに言ってんのかなもう…」
い、言えない…本当は唯先輩にぎゅってされたいから、なんて!
――そう、私は夏休みになってから唯先輩欠乏症に陥っていた。
毎日毎日、考えるのは唯先輩のことだけ…抱き締められたい。笑顔を見たい。あぁ唯先輩、唯先輩、唯先輩…
こんな感じで、もう昼に夜に朝にthinking yui!なのだ…
いつもなら一目散に私に飛び付いてくる唯先輩が、今日は暑さのせいか寝転がったまま挨拶をするだけ。
寒気がするほど古いネタ使ってる場合じゃないんですよもう!
憂「じゃあ冷たいもの用意してくるから待っててねー」
梓「う、うん!ごゆっくり!」
憂「やだなぁ梓ちゃん、それは私のセリフじゃない?」
この状況では私のセリフなの!さぁ早く部屋から出て!
私はもう今にも唯先輩に飛び付きそうなくらいうずうずしてるんだから!
パタン…
梓「ゆっ、ゆっ、ゆ…」
唯「ふあぁ、宿題かぁ、めんどくさいなぁ」
梓「あ、あ、あの…」
唯「後で澪ちゃんかムギちゃんに見せてもらえないかなぁ…あ、和ちゃんに教えてもらうっていう手もあるよね!」
梓「唯先輩っ!」
唯「ほ?なに?」
梓「え…えと…な、何か忘れてることありません?」
唯「へ?何かあったっけ」
梓「ほら…いつもやってることというか、習慣になってることをしてないっていうか」
唯「うーん…あ!」
梓「思い出しましたか!さぁ、思う存分…」
唯「おやつのアイス食べてなかったや!ういー!」
なんでそうなるの!あぁ、そうこうしてるうちに憂も来ちゃったし…うぅ、チャンスがぁ!
…結局、私たちは普通に宿題をすることになった。
でも目の前に唯先輩がいて、なおかつ自分の溢れんばかりの欲求を満たせていないこの状況でまともに集中できるはずもなく…
憂「梓ちゃん、そこの文法間違ってるよ?スペルも違うし…そもそもこれ数学のノートじゃない!今してるのは英語の宿題だよ!?」
梓「あ、あはは、あははは…ちょっとトイレ!」
…はぁ、私なにやってるんだろ。唯先輩は抱きついてきてくれないし集中できないし、さっぱりだよ…
…どうして、こんな風になっちゃったのかな。唯先輩なんてだらしなくて頼りなくて、全然先輩らしくないのに。…なのにこんなにも気になっちゃうなんて、どうしてかな。
そりゃたまにはかっこよく見えることもあるし抱きつかれるとあったかくてほわほわしてるよ?一緒にいるとすごく幸せな気持ちになれて、いつまでもそばにいたいって思えるし…
あ…唯先輩は、いつだって私のことを見てくれてる。私はそれがすごくうれしい。だから…なのかな。
…なんにしても、向こうからなにもアプローチがないこの状況はすごく辛い。
梓「…もう、帰ろっかな」
唯「やだよ」
梓「…!」
廊下の隅で呟いた直後、いつもの感触が私を包んだ。確認しなくてもすぐ分かる、幸せなぬくもり。
私がずっと望んでいた、唯先輩のぬくもりだ。
唯「もう帰っちゃうなんてやだよ。まだいて?」
梓「ゆい…先輩、なんで…?」
唯先輩は私を抱き締める腕に力を込めて、囁くように言った。
唯「一度こうしたら、しばらく離したくないから…あまり憂に見られたくないでしょ?だからここでしようって」
梓「…なんで、ですか。さっきは忘れてたくせに」
唯「わざとだよ♪」
梓「…あやしいです」
唯「最近あずにゃんのことぎゅってできなかったでしょ。だからその分、いつもより…ね」
後ろから私を抱きしめる唯先輩は、私の胸をそっと撫でた。
こうして抱きしめられてるだけでもドキドキして胸が苦しいのに、こんなことされたら私…
唯「ねぇあずにゃん…あずにゃんは、私にぎゅってされるのやだ?」
梓「…やじゃ…ないです」
唯「じゃあ、うれしい?」
梓「……」
唯「あずにゃん?」
私は唯先輩に向き合うと、思いきり抱きついた。もう、我慢なんてしたくなかったから。
梓「うれしいに…決まってるじゃないですか。すごくすごくうれしくて、ずっと離れたくないくらいです」
唯「…そっか。うれしいな」
梓「唯先輩…」
廊下で抱き合って見つめ合う私たち。もしこの状況を憂に見られたらどうしよう…なんて不安は、わき上がる衝動にかき消されてしまった。
私は、私は、唯先輩のことが――
唯「…あずにゃん、私の部屋行こっか」
梓「…はい」
私たちはそっと唯先輩の部屋に入った。そろそろ憂が不思議に思う頃だと思うけど、もうそんなのどうでもよくなっていた。
西日が差し込む中、私たちはベッドに倒れこむとさらに強く抱きしめ合う。
好き、好き、大好き…ずっと抑えてきた気持ちは、もうどうしようもないほどに爆発してしまっていた。
梓「ゆい…先輩、その」
唯「ん…?」
梓「…かわいいって、言って?」
唯「珍しいねぇ。あずにゃんからおねだりなんて」
梓「い、いいじゃないですか別に…」
唯「ふふ…♪かわいいよ、あずにゃん」
梓「…えへへ、うれしいです」
唯「あずにゃん…だいすきだよ」
唯先輩は私の胸に顔を埋めた。まぁ、埋めるほどないんだけどさ…
でも唯先輩はとても穏やかな表情で、私の胸の上で目を閉じて微笑んでいた。
なんだか、唯先輩のお姉ちゃんになった気分。
唯「あずにゃん、いい匂いがする…甘くて、おいしそうな匂い」
梓「…食べても、いいんですよ?」
唯「いいの?」
梓「…はい」
唯「じゃあ…いただきます♪」
真夏のある日の午後、こうして私は唯先輩においしくいただかれてしまったのだった――
END
- お二人は恋仲って事でよろしんでしょうか?(ハナヂ -- (鯖猫) 2012-09-06 02:26:13
- そうだよ!鯖猫さん!…っていうか…あれ!?優さん放置? -- (あずにゃんラブ) 2013-01-17 18:00:03
最終更新:2010年08月18日 04:22