梓「こんにちはー」
唯「あっ…さて、ギー太の手入れやらなきゃな~!」
――最近、どういうわけか唯先輩が私から距離を置いている。
唯先輩に話しかけても、まともに相手をしてくれなくなったのだ。
ある日
梓「唯先輩、ここなんですけど…」
唯「ひっ!み、澪ちゃんここ教えて!」
またある日
梓「唯先輩、このお菓子どうですか?」
唯「きゃあ!り、りっちゃんお菓子どう!?うんまいよう!」
さらにまたある日
梓「唯先輩、お疲れさまです」
唯「あひぃ!む、ムギちゃん!今日もいいたくあん眉毛だね!」
紬「えっ…」
こんな調子で、唯先輩は私と話すのを徹底的に避けるのだ。
しばらくはふざけているだけだと気にしていなかったけど、
1週間、2週間と過ぎていくにつれて、だんだんと不安な気持ちになってきた。
こんなことは考えたくないけど…私のことが、嫌いになってしまったのだろうか。
無理もない。日頃の先輩に対する態度を考えれば、生意気な後輩だと思われても仕方ないだろう。
まあ、部活に専念するなら、これくらいの関係でちょうどいい。
…そう思おうとしても、胸にポッカリと穴が空いたような感覚は、どうしても消えなかった。
そんなある日
梓「こんにちはー…あ…」
唯「う…」
二人きりの音楽室に、気まずい沈黙が流れた。
その雰囲気から逃げるように、唯先輩は無言で部屋を出ようとする。
そして私は衝動的に、すれ違う唯先輩の腕を掴むと、そのまま抱きしめた。
唯「きゃあ!な、なな…」
梓「…どうして、ですか」
唯「え?」
次の瞬間、堰を切ったかのように涙が溢れ出す。溜まっていた感情が、とめどなく溢れ出す。
梓「うっ…う…うぅ…うえ…」
梓「どうして…私としゃべってくれないの?
どうして、私と目を合わせてくれないの?答えてよ先輩…」
唯「……」
私は唯先輩を離してその目を見つめた。
しかし先輩はただ黙ってうつむくだけだ。そんな先輩を見て、私は確信した。
梓「先輩は…私のことが嫌いなんですね」
唯「ええ?」
梓「私が生意気だから…だから、私と話すのが嫌になったんですね」
唯「ち、違うよあずにゃん!」
梓「違わない!先輩は私と話したくないくらい嫌いなんだ!だから…」
私が言い終わらないうちに、今度は唯先輩が私を抱きしめた。
突然のことに、私は訳が分からなくなる。
梓「唯先輩…?なんで…」
唯「…きだから…」
梓「え?」
唯「好きだから!」
梓「は?す、好き…って…?」
先輩は確かに「好きだから」と言った。でも、好きって?なにそれ?どういう意味なの?
疑問符で埋め尽くされた脳内を整理できないでいると、唯先輩はぼそぼそと話し出した。
唯「…私、少し前からあずにゃんのことが頭から離れなくなっちゃったの…
それであずにゃんと顔を合わせると、頭が真っ白になって、
何も考えられなくなっちゃって…それで…」
梓「それで私と話をしなくなったんですね…」
唯「…うん」
唯先輩の話を聞いて、私はほっとしていた。
よかった。先輩は私を嫌いになったわけじゃなかったんだ。
梓「…先輩の、バカ」
唯「ええ?ば、バカ?」
梓「はい、バカです。先輩のせいで私…すごく寂しくて、すごく悲しい思いしたんです」
唯「うぅ…ごめんなさい」
唯先輩の申し訳なさそうな顔を見ていると、とてもいとおしい気持ちになる。
――そうか、私は唯先輩のこと…
梓「埋め合わせ、してください。そしたら許してあげます」
唯「埋め合わせ?って、なにすればいいの?」
梓「私に…好きって言ってください」
唯「ええ!?な、なな…」
梓「嫌ならいいです。もう二度と口聞きません」
唯「わ、わかったよぉ!もう…」
唯先輩は顔を真っ赤にして、おずおずと言った。
唯「あずにゃん…す、好き…だよ」
梓「先輩」
唯「な…なに?」
梓「私も…好きです」
唯「…!」
唯先輩は驚いたように目を見開く。そんな唯先輩に、私は続けて言う。
梓「これで私たちは両想いですね。だから…」
唯「だから…?」
梓「私たちは恋人同士です」
唯「ええ!?」
梓「嫌ですか?」
唯「嫌じゃ…ないけど…」
梓「じゃあ決定です!改めてよろしく、唯先輩♪」
唯「う…うん…」
梓「あ、先輩は変かな。唯、でいいですか?先輩もちゃんと名前で呼んでください」
唯「あ…あず、さ…」
梓「聞こえないな~?」
唯「もう!梓!私も大好きだよ!」
梓「きゃあ!」
思い切り抱きつく先輩の胸の中で、私はとびきりの幸せを噛みしめていた。
ありがとう唯先輩…じゃない、ありがとう、唯♪
- こう言う好きだからの避けるは許します。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-21 20:42:51
最終更新:2009年11月15日 00:07