「そう言えばコレってなんて名前だっけ?」
10月31日。
通称・ハロウィン。
梓宅に遊びに来ていた唯は梓の部屋に飾られたカボチャの置き物を興味津々に見つめていた。
「ジャック・オ・ランタンです」
「おぉ、そうだったよ!」
「ふふっ、唯先輩ったらカワイイ♪」
梓の助言(?)で疑問が解決してスッキリした後も唯はソフトボール大のソレを手に取ってまじまじとソレを眺めていた。
「うーん……ランタン……ランタン……はっ!」
「どうかしました……って、唯先輩?」
カボチャのランタンを見つめていた唯はなにか考え込んでいたかと思いきや突然ソレを持ったまま立ち上がった。
「うんたん♪うんたん♪ランタン♪ランタン♪」
突然の踊りだした唯。
梓はただ楽しそうに踊る唯を見つめていた。
「なーんちゃって♪」
てへへと笑う唯。
その照れ笑いに理性を軽くブレイク限界した梓は唯をベッドに押し倒し、『Trick&Treat』してしまうのだった。
―――――――――。
「一般的には橙色のカボチャが主に知られてますけど昔はカブだったらしいですよ」
ベッドの中でイタズラと唯と言う最高のお菓子を堪能した梓はハロウィンの象徴たるカボチャ、『ジャック・オ・ランタン』について語りだした。
「そーなの?」
「はい……昔、ものすごく悪賢い男が悪魔を罠に嵌めて『自分が死んだ後、地獄に行かないようにする』と契約させたんです」
「私も地獄には行きたくないなぁ」
「唯先輩は天使だから行くワケないです」
「天使はあずにゃんだよ」「ゆいにゃん……」
二人の天使はベッドの中で二回目の天国を感じる事にした。
―――――――――。
「さて、さっきの続きですけど……悪魔と契約した男はその後、寿命を全うして亡くなったんです」
「その人は天国に行ったの?」
「いいえ、その人の悪行を見ていた神様は『オマエのようなヤツは天国にも地獄にも来る事は許さない』と言って男を追い払ってしまったんです、男は永遠にこの世をさ迷わなくてはいけなくなったんだそうです」
唯は「そうなんだ」と呟くと梓を強く抱きしめた。
「……唯先輩?」
「私ね、天国とか地獄に行けなくなる事よりもあずにゃんとお別れしなくちゃいけなくなる事の方が嫌だし、怖いよ……」
「……唯」
唯の唇は梓のソレで塞がれていた。
「大丈夫……天国でもどこでも私はずっと唯と一緒にいます、約束です」
「じゃあ、今一緒にいる事をもっと感じさせて欲しいな……」
「はい……たくさん感じさせてあげますね……」
再び唇が重なり、二人は一緒にいる事の確認を始めた。
―――――――――。
「永遠にこの世をさ迷わなくてはいけなくなった男を哀れに思った悪魔が地獄の業火の中にあった石炭の一つを明かりとしてくれたそうなんです」
「ほぇ~、優しい悪魔さんだね」
「男はカブをくり抜いてその中に石炭をいれてランタンにしたそうです、そしてこの伝承がアメリカに伝わった時にカボチャに変わったんだそうですよ」
「そんなお話があったなんて知らなかったよ~」
梓の話に感心しながら唯はカボチャの置き物を指で突っついた。
「ところで唯先輩、お腹空きません? カボチャのプリンがあるんですよ」
「うん、空いてるよ~……あずにゃんがステキ過ぎてちょっと運動し過ぎちゃったしね……」
唯の頬がほんのりと朱に染まる。
「唯先輩がカワイ過ぎるからですよ、カボチャのケーキもありますけど……」
「また後で……ね」
「そうですね……」
今日何度目かの『Trick&Treat』。
唯と梓のハロウィンはまだまだ続くのだった。
- 次のハロウィンが楽しみだ!! -- (4ℓの噴水(赤)) 2010-11-04 22:05:24
- ハロウィンいいね。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-12 07:41:43
最終更新:2010年11月04日 13:53