夜中に不意に目が覚めた。
何だか胸がドキドキしている。
いつもよりも鼓動が激しい。
よく覚えてないけれど、少し怖い夢を見たような気がする。
「唯先輩・・・」
隣で寝ているその人にそっと声をかけた。
「・・・・・」
返事はない。
けれども、瞳を閉じたまま、先輩は私のほうを見てくれた。
部屋の窓から漏れる微かな月明かりに、無防備な寝顔が照らされる。
透き通った白い肌。
ふわふわの前髪。
綺麗な顔だなと思った。
そっと手を握ると、その顔がほんの少しだけ微笑んでくれた気がした。
辛い時も哀しい時も淋しい時も。
いつもこの人は優しく笑って、それから、弱気な私のことをぎゅっと抱きしめてくれた。
誰にでも幸せを分けてくれる、ちょっと頼りないけれど優しい先輩。
そんな先輩が私は大好きだ・・・。
「唯先輩・・・いつまでも傍にいてくださいね・・・」
手を繋いだまま、静かに瞼を閉じた。
今度は楽しい夢が見られるといいな・・・。
夜中に不意に目が覚めた。
薄暗い部屋の中で聞こえるのは目覚まし時計の針の音だけ。
気のせいかな?
誰かに呼ばれたような気がするんだけど・・・。
「
あずにゃん・・・?」
隣で寝ているその子にそっと声をかけた。
「・・・・・」
返事はない。
ただ、何かが触れている感触があった。
目をやると彼女の両手が私の左手を少し控えめに握っている。
細くて長いしなやかな指。
柔らかい体温。
ちっちゃくて華奢だなと思った。
そっと手を包んであげると、不安そうな寝顔がほんの少しだけ緩んだ様に見えた。
辛い時も哀しい時も淋しい時も。
いつもこの子は感情を素直に表して、頼りない私に飛び込んできてくれた。
しっかりモノでいつでも私を支えてくれる、ちょっとツンデレだけど可愛い後輩。
そんなこの子が私は大好きだ・・・。
「あずにゃん・・・大丈夫だよ、ずっと傍にいるからね・・・」
手を包んだまま、静かに瞼を閉じた。
夢の中でもこの子の傍にいてあげれるといいな・・・。
「ん・・・」
窓から差し込む陽の光で目が覚めた。
ベッドから起きてカーテンを開けるとどこまでも続いていそうな蒼空が広がっていた。
何だかとても良い事がありそう。
窓を開けて澄んだ空気を吸い込むとふとそんな事を思った。
「ふわぁ~・・・あずにゃん、おはよう・・・」
眠たそうに目を擦りながら、のそのそと起きだす先輩を見て、夜に見た夢がフラッシュバックする。
「お、おはようございます! 唯先輩!」
無意識に声が上ずって、顔が熱くなる。
「・・・?どうしたの?」
寝起きでも妙に鋭い先輩が私の顔を覗き込む。
「な、何でもありませんよ! それよりも先輩がちゃんと起きるなんて珍しいですね! いつもはお寝坊さんなのに」
誤魔化しで私は先輩に話を振ると、先輩は嬉しそうにニヤニヤと笑った。
「えへへ、実はすごくいい夢を見ちゃってさ~」
「ゆ、夢ですか?!」
何だか全てを見透かされているようで胸がドキリとする。
「そうそう・・・もしかしてあずにゃんも何か夢見たの?」
「わ、私は・・・」
図星を突かれて言葉に思わず声が出なくなる。
「あ~、あずにゃんも見たんだ? 見たんだよね?! ねぇねぇ、どんな夢?」
ワクワクして堪らないという感じの笑顔を浮かべたまま先輩は私を見つめてくる。
この無邪気な笑顔に私はとことん弱い。
「教えてよ、あずにゃん♪ あずにゃんの話、聞きたいなぁ~」
「そ、それは・・・」
目を閉じて、夢の内容をリフレインする。
はっきりと覚えている内容を繰り返しリピートして、胸の中で覚悟を決める。
「そ、それは・・・」
笑顔の先輩に抱きついて・・・そしてその口唇にそっと触れた。
「ん・・・こ、こんな夢でした・・・」
自分でも顔が真っ赤になっているのが分かる。
恥ずかしくて死んでしまいそう。
「・・・凄い!! 凄いよ、あずにゃん!! 私と同じ夢だよ♪」
「えっ?」
唯先輩の言葉に恥ずかしさが波のように引いていく。
「私もね、あずにゃんとちゅーする夢見たんだ♪ ホントに凄いよ♪ 運命だよ♪ 」
ぎゅっと私のことを抱きしめて、本当に嬉しそう先輩は笑った。
「ありがとうあずにゃん。 私、今とっても幸せだよ♪」
「唯先輩・・・わ、私も幸せです!」
夢の中でも私の傍に先輩がいてくれた。
それが私にも本当に嬉しくて・・・。
「いつまでもずっとずっと一緒にいようね、あずにゃん♪」
「はい・・・」
お互いに最高の笑顔で笑いあって・・・それから私達はもう一度、キスをした。
- や唯梓神 -- (風吹けば名無し) 2016-11-08 23:17:22
最終更新:2010年11月04日 13:52