気付くと、いつの間にかムギちゃんを目で追っている自分がいる。
ムギちゃんの横顔。ムギちゃんの瞳。ムギちゃんの唇。ムギちゃんの髪。ムギちゃんの指先。
ただ見ているだけなのに、すごくドキドキする。すごく苦しくなる。
ムギちゃんの横顔。ムギちゃんの瞳。ムギちゃんの唇。ムギちゃんの髪。ムギちゃんの指先。
ただ見ているだけなのに、すごくドキドキする。すごく苦しくなる。
…好きだよ、ムギちゃん。私、ムギちゃんのことが好き。
そうはっきり自覚してるのに、なかなか口に出すことができない。伝えたくて伝えたくてたまらないのに、それを形にできないんだ。
「唯ちゃん」
「な、なに?」
「今日のショコラどう?お口に合うかしら」
「…うん、すっごくおいしいよ」
「そう、よかった♪」
「な、なに?」
「今日のショコラどう?お口に合うかしら」
「…うん、すっごくおいしいよ」
「そう、よかった♪」
もし告白して断られたら、この笑顔を二度と見られなくなるかもしれない。話すらもしてもらえなくなるかもしれない。
そう考えると手が震えて、たまらなく怖くなって、何もできなくなる。
そんな弱虫な自分が、たまらなく嫌になる。
そう考えると手が震えて、たまらなく怖くなって、何もできなくなる。
そんな弱虫な自分が、たまらなく嫌になる。
「唯ちゃん、今日二人で帰らない?澪ちゃんたち、先に行っちゃったみたいだから」
だから、ムギちゃんがそう提案してきた時はチャンスだと思った。
もう弱虫のまま足踏みしてるだけじゃだめだ。思いきって告白しよう。
もう弱虫のまま足踏みしてるだけじゃだめだ。思いきって告白しよう。
二人きりになれれば、きっと…
「ム、ムギちゃん!」
「なに?」
「えっと…今日寒いですね!」
「そうねぇー」
「うん!」
「?」
「なに?」
「えっと…今日寒いですね!」
「そうねぇー」
「うん!」
「?」
…やっぱり現実はなかなか上手くいかない。
ムギちゃんと二人きりになれたのはいいけど、緊張でまともに話もできない。
この分じゃ告白どころじゃないや…
ムギちゃんと二人きりになれたのはいいけど、緊張でまともに話もできない。
この分じゃ告白どころじゃないや…
「そうだ…帰る前にね、唯ちゃんに一つ聞いてみたいことがあるんだけど」
「え?」
「唯ちゃんには、好きな人とかいないの?」
「なっ!…なな、何を…!?」
「私たちだってお年頃の女の子なんだし、そういう人がいたっておかしくないでしょ?だから…」
「そ、そう…」
「え?」
「唯ちゃんには、好きな人とかいないの?」
「なっ!…なな、何を…!?」
「私たちだってお年頃の女の子なんだし、そういう人がいたっておかしくないでしょ?だから…」
「そ、そう…」
…一瞬、変な期待を胸に抱いてしまった。
そういう風に聞くのは、ひょっとしたら私のことを…なんて。
そんなことあり得ないってわかってるのに。
そういう風に聞くのは、ひょっとしたら私のことを…なんて。
そんなことあり得ないってわかってるのに。
「どうかしら?」
「そ…そういうムギちゃんはどうなの?好きな人いないの?」
「私?……うん。いるよ」
「えっ…?」
「そ…そういうムギちゃんはどうなの?好きな人いないの?」
「私?……うん。いるよ」
「えっ…?」
その言葉に、私は思わず息を飲む。…ムギちゃんに好きな人がいる…
一瞬それはどんな人なのか色々なことを聞きたくなって、そして…黙り込む。
一瞬それはどんな人なのか色々なことを聞きたくなって、そして…黙り込む。
そんなこと知ったって意味ないよ…だってムギちゃんの好きな人は、私じゃないんだから。
それをはっきりと自覚した瞬間、ずっと今まで抑えてきた感情がふつふつと胸の奥からわき上がる。
それは自分に対する情けなさと、ムギちゃんに対する理不尽な憤り。
それは自分に対する情けなさと、ムギちゃんに対する理不尽な憤り。
――どうしてムギちゃんは私のことを見てくれないの。私はあなたのことをこんなにも見てるのに。こんなにも想ってるのに。
なのに、どうして…
なのに、どうして…
「……」
「唯ちゃん?」
「…なんでもない。ごめんね。私先に帰る」
「唯ちゃん?」
「…なんでもない。ごめんね。私先に帰る」
顔をムギちゃんから背けるようにして、私は早足で歩き出した。
このままそばにいたら、私は自分の感情を抑えきれなくなってしまうかもしれないから。
だけど…ムギちゃんの柔らかい手のひらが私の指先を包んで、それをさせなかった。
このままそばにいたら、私は自分の感情を抑えきれなくなってしまうかもしれないから。
だけど…ムギちゃんの柔らかい手のひらが私の指先を包んで、それをさせなかった。
「どうしてそんな顔してるの?隠したって分かるのよ」
「…なんでもないよ」
「唯ちゃんはなんでもないのにそんな悲しい顔するような子かしら」
「…離してよ」
「離さない」
「離してってば!」
「離さない!」
「なんで…っ!」
「…なんでもないよ」
「唯ちゃんはなんでもないのにそんな悲しい顔するような子かしら」
「…離してよ」
「離さない」
「離してってば!」
「離さない!」
「なんで…っ!」
その後の言葉を遮るように、ムギちゃんは私を強く抱き寄せた。そして――
「…好きな人がこんな顔してるのに、放っておけるわけないじゃない」
…え?今…なんて?
ムギちゃんが好きなのは…私?
そんな…そんなの…
「…嘘、やめてよ。ムギちゃんが好きなのは私じゃないよ」
「…どうしてそう思うの?」
「だって…だってずっと気付いてくれないじゃん!
私はこんなにムギちゃんのこと見てるのに、ムギちゃんのこと好きなのに、ムギちゃんはちっとも私のことなんて見てくれないじゃん!
なのに私のこと好きなんて、そんなの…」
「…どうしてそう思うの?」
「だって…だってずっと気付いてくれないじゃん!
私はこんなにムギちゃんのこと見てるのに、ムギちゃんのこと好きなのに、ムギちゃんはちっとも私のことなんて見てくれないじゃん!
なのに私のこと好きなんて、そんなの…」
――そんなのあり得ないよ。ムギちゃんは皆のことが好きなんだから。
ずっとわかってた。ムギちゃんは誰かのことを特別扱いなんてしないって。
私も、澪ちゃんもりっちゃんもあずにゃんも、分け隔てなく好きでいるんだ。
それでもいつか…なんてずっとムギちゃんのことを見てきたけど、やっぱりムギちゃんが私だけを見ることは絶対にないって痛感しただけだった。だって…
ずっとわかってた。ムギちゃんは誰かのことを特別扱いなんてしないって。
私も、澪ちゃんもりっちゃんもあずにゃんも、分け隔てなく好きでいるんだ。
それでもいつか…なんてずっとムギちゃんのことを見てきたけど、やっぱりムギちゃんが私だけを見ることは絶対にないって痛感しただけだった。だって…
「あるわけないんだよ…だって私はなんにもしてないんだもん…」
「なんにも…って?」
「好きって言ったこともないし、二人でいれる時間を増やそうって頑張ったこともないし…
こんな私のことを好きになるなんておかしいんだよ」
「ねぇ、唯ちゃん…」
「おかしいんだよ!なんにも理由もないのに誰かを好きになるなんておかしいよ!」
「…あるよ」
「…え?」
「なんにも…って?」
「好きって言ったこともないし、二人でいれる時間を増やそうって頑張ったこともないし…
こんな私のことを好きになるなんておかしいんだよ」
「ねぇ、唯ちゃん…」
「おかしいんだよ!なんにも理由もないのに誰かを好きになるなんておかしいよ!」
「…あるよ」
「…え?」
「唯ちゃんを好きになった理由、ちゃんとあるよ」
「…?」
「いつでも笑顔で明るいところ。のんびりしてるけど、自分に嘘をつかないところ。
言いたいことを言って、やりたいことをやるところ。優しくて、一緒にいる皆を楽しくするところ…他にもたくさんあるのよ?」
「……」
「…?」
「いつでも笑顔で明るいところ。のんびりしてるけど、自分に嘘をつかないところ。
言いたいことを言って、やりたいことをやるところ。優しくて、一緒にいる皆を楽しくするところ…他にもたくさんあるのよ?」
「……」
気付くと私はムギちゃんを強く抱きしめていた。
それは、さっき自分が発した言葉とはあまりに矛盾した行動だった。
それは、さっき自分が発した言葉とはあまりに矛盾した行動だった。
「ムギちゃん…」
「だから…おかしくなんてないわ。唯ちゃんはこんなに素敵な子なんだから」
「だったら、なんで今まで…」
「…私も唯ちゃんと同じだからよ」
「同じ?」
「私も何もできなくて唯ちゃんのこと、ずっと待ってたの。私にはそんな勇気なかったから」
「…それじゃ、私がムギちゃんのこと見てたこと気付いてたの?」
「うん…なんとなくだけど」
「でもムギちゃんは全然私のこと見てなかったよ…」
「だって恥ずかしかったんだもん。あれでもすごくドキドキしてたんだから」
「ホントに?」
「ホントよ。私が唯ちゃんのことを見てたのは、いつも後ろからだったの」
「…信じらんないよ」
「どうしたら信じてくれる?」
「……」
「…こうしたら、信じてくれる?」
「だから…おかしくなんてないわ。唯ちゃんはこんなに素敵な子なんだから」
「だったら、なんで今まで…」
「…私も唯ちゃんと同じだからよ」
「同じ?」
「私も何もできなくて唯ちゃんのこと、ずっと待ってたの。私にはそんな勇気なかったから」
「…それじゃ、私がムギちゃんのこと見てたこと気付いてたの?」
「うん…なんとなくだけど」
「でもムギちゃんは全然私のこと見てなかったよ…」
「だって恥ずかしかったんだもん。あれでもすごくドキドキしてたんだから」
「ホントに?」
「ホントよ。私が唯ちゃんのことを見てたのは、いつも後ろからだったの」
「…信じらんないよ」
「どうしたら信じてくれる?」
「……」
「…こうしたら、信じてくれる?」
ムギちゃんは私の前髪をそっと持ち上げると、ゆっくりと顔を近づけた。そして…額にキスをした。
「…おでこ、なんだ」
「ごめん…今の私にはこれが限界だから」
「ごめん…今の私にはこれが限界だから」
よく見ると、ムギちゃんの顔は真っ赤だった。その大きな瞳は涙で潤んでいる。
…そっか。ムギちゃんが私と同じっていうのは本当なんだ。勇気がなかなか湧かなくて、ずっと何もできなくて…
でも今こうして私のことを抱きしめて好きって言って、キスまでしてくれた。
それが簡単なことじゃないっていうのは、私が一番わかってる。
だったら…答えなきゃ。言わなきゃ。勇気を出さなきゃ。
…そっか。ムギちゃんが私と同じっていうのは本当なんだ。勇気がなかなか湧かなくて、ずっと何もできなくて…
でも今こうして私のことを抱きしめて好きって言って、キスまでしてくれた。
それが簡単なことじゃないっていうのは、私が一番わかってる。
だったら…答えなきゃ。言わなきゃ。勇気を出さなきゃ。
「…私信じるよ。ムギちゃんの気持ち」
「うん…」
「あのね、さっきの答えなんだけどね…私にもいるよ、好きな人」
「それは…誰?」
「…琴吹紬ちゃん。私が好きなのは、ムギちゃんだよ」
「うん…」
「あのね、さっきの答えなんだけどね…私にもいるよ、好きな人」
「それは…誰?」
「…琴吹紬ちゃん。私が好きなのは、ムギちゃんだよ」
私はムギちゃんにキスをした。今度は、唇に。
「唯…ちゃん…」
ムギちゃんの目からはとめどなく涙が流れていた。
私はをその頭を胸に強く抱きしめる。
私はをその頭を胸に強く抱きしめる。
「ごめんね。私が弱虫だったせいで」
「…だい…じょ…うぅっ…だい…うぅ…」
「…苦しいのは私だけじゃなかったんだよね。ムギちゃんもずっと苦しかったんだよね」
「…だい…じょ…うぅっ…だい…うぅ…」
「…苦しいのは私だけじゃなかったんだよね。ムギちゃんもずっと苦しかったんだよね」
「っ…う…」
「…大好きだよムギちゃん。大好き」
「う…うん…」
「私と…お付き合いしてくれるかな?」
「うん…!」
「…大好きだよムギちゃん。大好き」
「う…うん…」
「私と…お付き合いしてくれるかな?」
「うん…!」
そして私たちはもう一度キスをした。
おわり