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気が付くと、いつのまにか夜遅くなっていた。
明日も学校があるからと、私たちは部屋に戻った。
憂ちゃんとは二階の階段を上ったところで別れ、唯ちゃんの部屋へ。
明日も学校があるからと、私たちは部屋に戻った。
憂ちゃんとは二階の階段を上ったところで別れ、唯ちゃんの部屋へ。
「ばっふーん!」
部屋に入るなり、唯ちゃんは謎の言葉を発してベッドに倒れこんだ。
唯ちゃん曰く、「テンションが高いときに出る擬音語」だそうだ。
唯ちゃん曰く、「テンションが高いときに出る擬音語」だそうだ。
「だって、ムギちゃんと二人だけで寝るのって初めてでしょ?だから嬉しくって」
嬉しいのは私だって一緒。
けど、唯ちゃんも嬉しいと言ってくれてその倍嬉しくなった。
けど、唯ちゃんも嬉しいと言ってくれてその倍嬉しくなった。
さっき敷いた布団に寝転ぶと、唯ちゃんが突然私の横に潜り込んできた。
「唯ちゃんの身体、暖かいねー」
「そう?」
「そう?」
そろそろ肌寒くなってきた季節で、アイスを食べたせいか冷えてしまった身体が、
唯ちゃんの体温で暖められていく。
唯ちゃんの体温で暖められていく。
「今日はムギちゃんの隣で寝ちゃおうかなー」
「どうぞどうぞ」
「じゃあそうしちゃおー!」
「どうぞどうぞ」
「じゃあそうしちゃおー!」
唯ちゃんは上半身だけを起こすと、ベッドから枕を引きずり落とすと私の枕の
隣にばさりと音をたてて置いた。
唯ちゃんがそのまま、その枕にダイブしたので私もうつ伏せに寝転がった。
隣にばさりと音をたてて置いた。
唯ちゃんがそのまま、その枕にダイブしたので私もうつ伏せに寝転がった。
「ムギちゃん、なんだか嬉しそうだねえ」
唯ちゃんは足をパタパタさせながら、私の顔を見てにこにこした。
そういう唯ちゃんだって嬉しそう。
そういう唯ちゃんだって嬉しそう。
「そうかな?」
「うん、すっごい嬉しそう!」
「誰かと一緒の布団で寝るの、初めてだから、かな……」
「誰かと一緒の布団で寝るの、初めてだから、かな……」
私が眠るときはいつも一人だった。ずっと幼い頃から。
斉藤が私が眠りに落ちるまで傍にいてくれたけど、それでも私は寂しかった。
一度でいいから、両親の温もりに包まれて眠りたいと何度も思った。
結局それは、今まで叶わなかった。だけど、両親ではないけど、大切な人が
私の傍にいてくれる。
斉藤が私が眠りに落ちるまで傍にいてくれたけど、それでも私は寂しかった。
一度でいいから、両親の温もりに包まれて眠りたいと何度も思った。
結局それは、今まで叶わなかった。だけど、両親ではないけど、大切な人が
私の傍にいてくれる。
だから私は、唯ちゃんの言う通りすごく嬉しくて、すごく安心できた。
「そっか……。ふふっ」
唯ちゃんは突然笑い出すと、布団の中に手を入れてぎゅっと私の手を握ってきた。
そして、温かい何かが足に触れた。唯ちゃんの足だった。
そして、温かい何かが足に触れた。唯ちゃんの足だった。
「ムギちゃんの足冷たいねー!」
「唯ちゃんの足は温かいよ」
「でしょー?だから私が温めてあげる!」
「唯ちゃんの足は温かいよ」
「でしょー?だから私が温めてあげる!」
唯ちゃんはそう言うと、両足で私の足を挟んで擦り合わせてきた。
摩擦で、足がだんだん温かくなってくる。
摩擦で、足がだんだん温かくなってくる。
「温かいねえ……」
「へへっ、私も温かくなってきた!」
「唯ちゃんは元々温かかったよ?」
「違うよー、足はそうだけど、身体は寒かったんだよ!?」
「そうなの?」
「へへっ、私も温かくなってきた!」
「唯ちゃんは元々温かかったよ?」
「違うよー、足はそうだけど、身体は寒かったんだよ!?」
「そうなの?」
そんなどうでもいいような会話を続ける。
それなのに、私たちは何がツボにはまったのかもわからないまま、笑い転げた。
楽しくて楽しくて仕方がなかった。
それなのに、私たちは何がツボにはまったのかもわからないまま、笑い転げた。
楽しくて楽しくて仕方がなかった。
こんな夜は、初めてだった。
「そろそろ寝ようかあ……」
日付が変わった頃、私たちは漸く話のネタがなくなり静かになった。
けど、目は冴えていて中々眠れない。
隣から、規則的な息遣いが聞こえてきた。
けど、目は冴えていて中々眠れない。
隣から、規則的な息遣いが聞こえてきた。
唯ちゃん、寝ちゃったかな。
そっと首を動かして横を見てみた。
すると、暗がりの中、唯ちゃんと目が合った。
すると、暗がりの中、唯ちゃんと目が合った。
「ムギちゃんも起きてたんだ」
「うん、なんだか眠れなくって……」
「うん、なんだか眠れなくって……」
「そっか……」
唯ちゃんが目を伏せた。
そして、もぞもぞと身体を動かして私のほうに擦り寄ってきた。
そして、もぞもぞと身体を動かして私のほうに擦り寄ってきた。
「唯ちゃん?」
「私、おかしいのかも」
「何が?」
「私、おかしいのかも」
「何が?」
訳がわからずに訊ねると、唯ちゃんは「だって」と言って寂しそうに笑った。
「ムギちゃんがどれだけ寂しかったのかなって想像すると、私まですごく寂しく
なってきて……」
なってきて……」
何でだろ、と唯ちゃんは私の胸の辺りに顔を埋めながら呟いた。
何も掛ける言葉が思いつかずに、「……ごめんね、唯ちゃん」と謝ると、
唯ちゃんは「違うよ」と遮った。
唯ちゃんは「違うよ」と遮った。
「違うの、ムギちゃん。ムギちゃんが謝るとこでも、お礼言うとこでもないんだよ。
だって、こんなのって私の自己満足だもん。わかってる。本当のムギちゃんの
寂しさなんて、私わかんないから」
だって、こんなのって私の自己満足だもん。わかってる。本当のムギちゃんの
寂しさなんて、私わかんないから」
「唯ちゃん……」
「でもね、それでもやっぱり、想像するだけでも苦しくなっちゃうんだ……。
私の家だってよく両親も出かけてるけど、それでも小さい頃はずっと一緒にいてくれた
し、今だって憂もいてくれる。だけどムギちゃんはずっと一人なんだよね?」
私の家だってよく両親も出かけてるけど、それでも小さい頃はずっと一緒にいてくれた
し、今だって憂もいてくれる。だけどムギちゃんはずっと一人なんだよね?」
唯ちゃんはそこで言葉を切ると、視線を上げた。
けど、目は合わなかった。
合わせてくれなかった。暗いのに、唯ちゃんの目が少し光って見えた。
けど、目は合わなかった。
合わせてくれなかった。暗いのに、唯ちゃんの目が少し光って見えた。
「私、名前が“唯”のくせに、一人が苦手なの。ずっと誰かと一緒じゃなきゃ
怖くて。けど、皆がいてくれたら私はすごく幸せ。だからね、ムギちゃんの話聞いた
ときも、今だって、物凄く不安になって……」
怖くて。けど、皆がいてくれたら私はすごく幸せ。だからね、ムギちゃんの話聞いた
ときも、今だって、物凄く不安になって……」
「うん……」
「誰もいないなんて、嫌だよね。寂しいよね」
唯ちゃんの声が、だんだん震えてくる。
私は小さく首を振ると、ぎゅっと唯ちゃんの背中に手を回した。
私は小さく首を振ると、ぎゅっと唯ちゃんの背中に手を回した。
「寂しくないよ、今は……。唯ちゃんがずっと傍にいて、私の為に泣いて
くれてるから……」
くれてるから……」
寂しくない。だから唯ちゃんも泣かないで。
今夜だけでも、こうやって誰かと一緒の布団で眠れることが私は幸せだから。
今夜だけでも、こうやって誰かと一緒の布団で眠れることが私は幸せだから。
唯ちゃんは、私の腕の中で泣きじゃくった。
隣の部屋にまで聞こえるんじゃないかというくらい。
きっと、唯ちゃんの泣き声が聞こえたら、憂ちゃんはすぐに飛んでくる。
隣の部屋にまで聞こえるんじゃないかというくらい。
きっと、唯ちゃんの泣き声が聞こえたら、憂ちゃんはすぐに飛んでくる。
「唯ちゃんはいいなあ……」
唯ちゃんの頭を撫でながら、私は呟いた。
「え?」
「……唯ちゃんは、皆に愛されてるから」
「……唯ちゃんは、皆に愛されてるから」
皮肉でも嫌味のつもりでもない。
ただ、純粋にそう思った。
ただ、純粋にそう思った。
だから唯ちゃんは、こんなにも誰かの為に泣ける、優しい子になったんだと
思う。
思う。
「ムギちゃんだって、皆に愛されてるよ!」
唯ちゃんは涙を拭いながらはっきり言った。
「皆、皆ムギちゃんのこと、大好きだもん、絶対にムギちゃんのお母さんやお父さん
だってそうだよ、私だって、ムギちゃんのこと大好きだもん……!」
だってそうだよ、私だって、ムギちゃんのこと大好きだもん……!」
唯ちゃんは突然ガバリと布団を跳ね上げ起き上がった。
「ムギちゃんだって皆が好きなように、皆だってムギちゃんのことが大好きで……」
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寂しかった。
悲しかった。
結局、どこにも自分の居場所がないような気がしていた。
悲しかった。
結局、どこにも自分の居場所がないような気がしていた。
軽音部でだって、りっちゃんと澪ちゃんはいつでも仲が良いし、唯ちゃんと梓ちゃんだって
そう。私はその四人が楽しそうにしているのを見ているだけでよかった。最初は。
けど、いつのまにかその中に入りたいと思っている自分が居た。
そう。私はその四人が楽しそうにしているのを見ているだけでよかった。最初は。
けど、いつのまにかその中に入りたいと思っている自分が居た。
家でも、学校でも、私はずっと、一人な気がしていた。
必ず誰かが傍にいてくれるのに、私はずっと一人だと思っていた。
必ず誰かが傍にいてくれるのに、私はずっと一人だと思っていた。
私は愛されて無いんだって、心のどこかでへそを曲げていたのかも知れない。
だから気付かないふりをした。
皆の笑顔に、皆の温もりに。
皆の笑顔に、皆の温もりに。
自分の心の中に、閉じこもっていただけだった。
高校生になったら、自分の殻を破ろうと思っていたのに、結局何も変わって無い。
高校生になったら、自分の殻を破ろうと思っていたのに、結局何も変わって無い。
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「唯ちゃん、私、ほんとはね……」
「唯ちゃん、私、ほんとはね……」
「え?」
「寂しかったのもあるけど、唯ちゃんや梓ちゃんや、りっちゃんや澪ちゃんを見て、
誰かに愛されたいな、なんて変なこと、思ってたの」
誰かに愛されたいな、なんて変なこと、思ってたの」
唯ちゃんが、驚いたように私を見た。
私は身体を起こすと、何も声を発さない唯ちゃんと向き合った。
私は身体を起こすと、何も声を発さない唯ちゃんと向き合った。
「バカだね、私……」
私は笑った。
初めて、目頭が熱くなって、私は慌てて上を向いた。
初めて、目頭が熱くなって、私は慌てて上を向いた。
「ムギちゃん……」
「ごめんね、唯ちゃん、私が変なこと言って……」
「ごめんね、唯ちゃん、私が変なこと言って……」
唯ちゃんは「ううん」と首を振ると、私に抱き着いてきた。
今度は、ちゃんと、しっかりと。
今度は、ちゃんと、しっかりと。
「大丈夫だよ、ムギちゃん。……大丈夫。みーんなムギちゃんのこと愛してるよ」
「うん、ありがとう」
「私も、ムギちゃんのこと、大好きだから」
「……うん、私も」
唯ちゃんのこと、大好き。
目が合う。私たちは笑い合う。
やっと、通じ合えた気がした。
やっと、通じ合えた気がした。
放課後の部室を、学校を、教室を、広々とした自分の家。
りっちゃんや澪ちゃんや梓ちゃんや。クラスメートや先生、皆の顔。
全部全部、頭に思い浮かべる。
りっちゃんや澪ちゃんや梓ちゃんや。クラスメートや先生、皆の顔。
全部全部、頭に思い浮かべる。
皆温かくて優しかった。
もうきっと、大丈夫。
明日から、どんな朝も夜も、私は寂しくないよ。
明日から、どんな朝も夜も、私は寂しくないよ。
皆が、唯ちゃんが、ちゃんと私の傍にいるから。
終わる。