唯「夏だから」
膨らんだ顔した雲の色。太陽が夏だと叫んでいる。
暑さにやられた神経は、私の身体を壊していく。
こんな日は、早く部活に行くのが良い。冷たい紅茶と、優しい微笑みが待っている。
私を包んだ熱気は消えて、甘い香りが広がっていく。
暑さにやられた神経は、私の身体を壊していく。
こんな日は、早く部活に行くのが良い。冷たい紅茶と、優しい微笑みが待っている。
私を包んだ熱気は消えて、甘い香りが広がっていく。
「あら、唯ちゃん」
扉を開くと唄う声。私を迎える柔らかな腕。
知らないでしょう?
この感触。知りたいかな、でも教えない。
私は代わりに力を込める。
私の気持ちを明るく示す。
知らないでしょう?
この感触。知りたいかな、でも教えない。
私は代わりに力を込める。
私の気持ちを明るく示す。
「唯ちゃん、苦しいわ?」
「えへへ、ごめんね」
暑くないんだ、温かいんだ。この瞬間は。
それでも、やっぱり汗はかく。なら、ムギちゃんは優しく言う。
それでも、やっぱり汗はかく。なら、ムギちゃんは優しく言う。
「うふふ。紅茶、入ってるよ」
「有難う、いただきまーす!」
「どう?」
「もちろん美味しいよ!」
「そう、よかった」
謙虚な彼女は慎ましく笑う。馬鹿な私は筒抜けに笑う。でも、届けやすいから良いのだ。
私はすっかり幸せで、彼女に教えてあげたくなる。だから言う。
「ムギちゃん、何時もありがとね」
「ううん、気にしないで。お礼を言われることではないわ」
「それは如何して?」
「だって、私がして貰ってる事も、やまほど有るもの」
私は少し思い出す。だけれどやっぱり思い直す。
「ううん、私、何もしてあげれてないよ」
何だかとても悪いと思う。だから私は下を向く。
「そんなことないわ。唯ちゃんが私にくれるものに比べたら、私がしている事なんて、何の意味もないもの」
「だからお礼が要らないの?」
「うん、要らないの」
私はちょっぴり不思議に思う。
そんな事、彼女の気持ちは関係ないのだ。
嬉しいから、有難う。それだけなのに。
そんな事、彼女の気持ちは関係ないのだ。
嬉しいから、有難う。それだけなのに。
「ムギちゃんは、おバカさんだね」
「あら、どうして?」
「ムギちゃんは大した事、してないかも知れないけど。
私はとっても嬉しいんだ。だから、お礼が要らないなんて言わないでよ。
私の気持ちも、要らないみたい」
私はとっても嬉しいんだ。だから、お礼が要らないなんて言わないでよ。
私の気持ちも、要らないみたい」
ムギちゃんは、少し困った様に微笑んで、やおら口を開く。
それは、照れているから、かも知れない。
それは、照れているから、かも知れない。
「いいえ、どういたしまして」
「えへへ……」
「唯ちゃんが嬉しくて、私も嬉しいわ」
今、彼女は夕陽を浴びて、私の前で眩く光る。
紅茶は澄んだ色を何処までも広げ、ほのかな香りを宙に運ぶ。
私は霞んでしまいそうだ。
だから、手を差し伸べて、彼女は繋ぎとめる。
紅茶は澄んだ色を何処までも広げ、ほのかな香りを宙に運ぶ。
私は霞んでしまいそうだ。
だから、手を差し伸べて、彼女は繋ぎとめる。
「唯ちゃん、おいで」
「ムギちゃん!」
どん、ムギュー。
柔らかな肌。二度目の感触。
肌と肌との間に汗が。二人の汗が、境界線を曖昧にしていった。
夏だから、暑いだけだ。
燃える頬を誤魔化す為に、私は彼女に埋れて行く。
でもそこで、私は聞いた。
誤魔化しようのない、確かな響きを聞いたのだ。
柔らかな肌。二度目の感触。
肌と肌との間に汗が。二人の汗が、境界線を曖昧にしていった。
夏だから、暑いだけだ。
燃える頬を誤魔化す為に、私は彼女に埋れて行く。
でもそこで、私は聞いた。
誤魔化しようのない、確かな響きを聞いたのだ。
「ムギちゃん……」
「なあに?」
私の声に呼応して、彼女の心臓は脈打った。
なら、私も誤魔化さなくて良いのかも知れない。
そう思う。
なら、私も誤魔化さなくて良いのかも知れない。
そう思う。
「……大好き」
「……有難う。私も大好き」
音が重なる。私の内から熱い流れが。
心音は、追いかけっこを繰り返して一つになった。
二人で身体を任せあって、何処までも深く沈んで行く。
私はそっと目を閉じて、淡い睡魔に溺れて行った。
心音は、追いかけっこを繰り返して一つになった。
二人で身体を任せあって、何処までも深く沈んで行く。
私はそっと目を閉じて、淡い睡魔に溺れて行った。
お仕舞い。