キーンコーンカーンコーン…
部活の始まりを告げるチャイムが鳴った。いつもならお茶を飲んで、色々な話をしている時間だ。
でも、その日の部室にはいつもの紅茶の香りは漂っていないし、美味しいお菓子もそのテーブルの上には並んでいなかった。
というのは…
でも、その日の部室にはいつもの紅茶の香りは漂っていないし、美味しいお菓子もそのテーブルの上には並んでいなかった。
というのは…
律「ムギ、遅いなぁ…お茶飲まないとやる気出ないぜー…」
澪「いつもならとっくに来てるのに…どうしたんだろう」
唯「……」
澪「いつもならとっくに来てるのに…どうしたんだろう」
唯「……」
いつまで経ってもムギちゃんが部活にやってこない。掃除当番だっていうのは聞いていたけど、それにしたって遅すぎる。
メールを送っても返事はないし、一体どうしたんだろう…
メールを送っても返事はないし、一体どうしたんだろう…
梓「そうだ、迎えに行ってみませんか?もしかしたら掃除が長引いてるのかも」
律「そうだな、じゃあ皆で…」
唯「あ、私が行くよ!大人数で行くのもなんだし」
澪「それもそうだな…じゃあ唯、頼むな」
律「寄り道すんなよー?」
唯「しないよー!それじゃ行ってくるね!」
律「そうだな、じゃあ皆で…」
唯「あ、私が行くよ!大人数で行くのもなんだし」
澪「それもそうだな…じゃあ唯、頼むな」
律「寄り道すんなよー?」
唯「しないよー!それじゃ行ってくるね!」
私は急ぎ足で部室を後にすると、階段を一段飛ばしで駆け降りた。
憂に見られたら、危ないよ!と叱られてしまいそうだけど…でもそんなことは気にならなかった。
一刻も早く、ムギちゃんに会いたかったから。
憂に見られたら、危ないよ!と叱られてしまいそうだけど…でもそんなことは気にならなかった。
一刻も早く、ムギちゃんに会いたかったから。
薄暗い廊下を駆け抜けて、私は自分の教室へとやってきた。
確かムギちゃんは教室の掃除当番だったはずだ。中を確認するべく扉に手を掛けた、その時――
確かムギちゃんは教室の掃除当番だったはずだ。中を確認するべく扉に手を掛けた、その時――
「私…琴吹先輩のことが好きなんです!」
知らない子の声が聞こえてきた。
私はとっさに手を引っ込めた。
琴吹先輩って…ムギちゃんのことだよね…ムギちゃんを好きって…え?嘘、嘘…
私の頭は真っ白になる。そのまま扉の前に立ちすくんでいると、今度はムギちゃんの声が聞こえてきた。
私はとっさに手を引っ込めた。
琴吹先輩って…ムギちゃんのことだよね…ムギちゃんを好きって…え?嘘、嘘…
私の頭は真っ白になる。そのまま扉の前に立ちすくんでいると、今度はムギちゃんの声が聞こえてきた。
紬「え、えっと…どういうこと?」
「今言った通りです!私、先輩のことが好きなんです。だから…付き合ってください」
紬「い、いきなりそんなこと言われても…」
「お願いします!」
紬「え、えっと…」
「今言った通りです!私、先輩のことが好きなんです。だから…付き合ってください」
紬「い、いきなりそんなこと言われても…」
「お願いします!」
紬「え、えっと…」
ムギちゃんは黙り込んでしまった。何か返事をするのに迷っているようだった。
それってつまり…付き合ってもいいかもって思ってる…?
そう考えたとたんに、胸に鋭い痛みが走った。
それってつまり…付き合ってもいいかもって思ってる…?
そう考えたとたんに、胸に鋭い痛みが走った。
紬「私…」
気付くと私は走り出していた。ムギちゃんの言葉の続きを聞く勇気は、私にはなかった。
結局その日、私はそのまま家に帰った。その時の自分の顔は、皆には絶対に見られたくなかったから。
唯「はっくしょん!」
憂「38度…今日は休まなきゃだめだね」
憂「38度…今日は休まなきゃだめだね」
翌日、私は風邪を引いた。当たり前といえば当たり前だ。
カバンやギターはもちろん、マフラーも手袋も着けず、北風に吹かれて帰ってきたんだから。
カバンやギターはもちろん、マフラーも手袋も着けず、北風に吹かれて帰ってきたんだから。
憂「お姉ちゃん、昨日何があったの?律さんたちも心配して電話くれたんだよ?」
唯「…なんでもない」
憂「もう…じゃあ私は学校行くから、ゆっくり寝てなよ?」
唯「うん…」
唯「…なんでもない」
憂「もう…じゃあ私は学校行くから、ゆっくり寝てなよ?」
唯「うん…」
憂が出ていくと、私はぼんやりと天井を見つめた。
…あの後ムギちゃんは、OKしたのかな。…したんだろうな。ムギちゃん、女の子同士で仲良くするのはいいことだって言ってたし。
不意に視界が潤んだ。私、どうして泣いてるんだろう…ムギちゃんが告白されたのが、そんなにショックだったのかな。
…違う。もちろんショックだったっていうのもあるけど、本当は…
…違う。もちろんショックだったっていうのもあるけど、本当は…
唯「うぅ…ズズ…ムギちゃん…やだよぉ…」
本当は…ムギちゃんが誰かと付き合うのが嫌なんだ。だって私は、ムギちゃんのことが…
紬「なにが嫌なの?」
唯「きゃっ…!?」
唯「きゃっ…!?」
突然、私の視界にムギちゃんの顔が現れた。
私は心臓が止まるんじゃないかというくらいに驚いて、何も言えずにその笑顔を見つめた。
私は心臓が止まるんじゃないかというくらいに驚いて、何も言えずにその笑顔を見つめた。
紬「唯ちゃん、具合はどう?」
唯「あ…だ、大じょ…はっくしょん!」
紬「大丈夫じゃないみたいね?はい、鼻かんで?」
唯「ズズ…ムギちゃん、どうして…?学校は?」
紬「私もお休みしちゃった♪唯ちゃんが心配だったから」
唯「な、なんで…?」
紬「なんでって…お友達のことを心配するのは当たり前でしょ?」
唯「……」
唯「あ…だ、大じょ…はっくしょん!」
紬「大丈夫じゃないみたいね?はい、鼻かんで?」
唯「ズズ…ムギちゃん、どうして…?学校は?」
紬「私もお休みしちゃった♪唯ちゃんが心配だったから」
唯「な、なんで…?」
紬「なんでって…お友達のことを心配するのは当たり前でしょ?」
唯「……」
ムギちゃんの微笑みを見ていると、また胸が痛くなった。
こんな風に優しくされても、全然嬉しくない…だってもうムギちゃんは、あの子と付き合ってるんだから…
こんな風に優しくされても、全然嬉しくない…だってもうムギちゃんは、あの子と付き合ってるんだから…
しばらく、二人を沈黙が包んだ。その間、私はムギちゃんに背を向けてベッドに横たわっていた。
しばらくして、ムギちゃんは静かに口を開いた。
しばらくして、ムギちゃんは静かに口を開いた。
紬「唯ちゃん、私ね?」
唯「……?」
紬「昨日後輩の子に…好きって言われたの」
唯「……!」
唯「……?」
紬「昨日後輩の子に…好きって言われたの」
唯「……!」
ムギちゃんの言葉に、私は思わず体を起こした。それでも必死に平静を保ってムギちゃんに言う。
唯「…へぇ、よかったね。それで、なんていう子なの?」
紬「…知らないの」
唯「え?知らないって…?」
紬「だって私…断っちゃったから」
唯「な…え?だってムギちゃん、あの時迷って…」
紬「…知らないの」
唯「え?知らないって…?」
紬「だって私…断っちゃったから」
唯「な…え?だってムギちゃん、あの時迷って…」
紬「やっぱり唯ちゃんだったんだ。誰かが教室の前にいたような気がしたからもしかして…って思ってたんだけど」
唯「気付いてたんだ…ごめんなさい。盗み聞きしちゃって…」
紬「いいの。なかなか言わなかったのはね、知り合いには聞かれたくなかったからなの」
唯「なにを…?」
紬「私に好きな人がいるってこと」
唯「え…」
紬「さぁ、その人は誰でしょう?」
唯「気付いてたんだ…ごめんなさい。盗み聞きしちゃって…」
紬「いいの。なかなか言わなかったのはね、知り合いには聞かれたくなかったからなの」
唯「なにを…?」
紬「私に好きな人がいるってこと」
唯「え…」
紬「さぁ、その人は誰でしょう?」
ムギちゃんの好きな人。一体誰だろう。澪ちゃん?りっちゃん?あずにゃん?それとも、クラスの誰か?それとも…
紬「時間切れ♪正解は…」
唯「あ…」
唯「あ…」
ムギちゃんは、私の体をぎゅっと抱きしめた。
私の熱っぽい体を、日だまりのような温かさが包み込んだ。
私の熱っぽい体を、日だまりのような温かさが包み込んだ。
紬「唯ちゃんでしたー♪」
唯「む…ムギちゃん?な、なんで…?冗談でしょ?」
紬「冗談なんかじゃないわよ?私は唯ちゃんのこと大好きよ?」
唯「う、うそ…だって、だってムギちゃ…はっくしょん!うぅ…」
紬「大丈夫?はい」
唯「む…ムギちゃん?な、なんで…?冗談でしょ?」
紬「冗談なんかじゃないわよ?私は唯ちゃんのこと大好きよ?」
唯「う、うそ…だって、だってムギちゃ…はっくしょん!うぅ…」
紬「大丈夫?はい」
再びティッシュで鼻を噛む私を見ながら、ムギちゃんは言う。
紬「ねぇ…唯ちゃん?」
紬「私はホントに唯ちゃんのこと、大好きよ?
いつも美味しそうにお菓子食べてくれるところとか、
のんびりしてるところとか、ギターの練習ちゃんと頑張ってるところとか」
唯「……」
紬「ねぇ、唯ちゃんは私のこと、好き?」
唯「それは…」
いつも美味しそうにお菓子食べてくれるところとか、
のんびりしてるところとか、ギターの練習ちゃんと頑張ってるところとか」
唯「……」
紬「ねぇ、唯ちゃんは私のこと、好き?」
唯「それは…」
正直、嬉しかった。ムギちゃんに好きって言われることが、とても嬉しかった。
唯「私も…好き」
紬「…ありがとう唯ちゃん。じゃあ、私の恋人になってくれる?」
唯「う…うん…でもホントに私なんかでいいの?もっとかわいい子が…むぎゅ」
紬「…ありがとう唯ちゃん。じゃあ、私の恋人になってくれる?」
唯「う…うん…でもホントに私なんかでいいの?もっとかわいい子が…むぎゅ」
ムギちゃんは私を強く抱きしめた。その胸に顔を埋めると、なんだかいい匂いがした。
紬「問答無用♪私は唯ちゃんがいいの!わかった?」
唯「…うん」
紬「じゃあ決まり♪今日から唯ちゃんは私の恋人ね♪」
唯「う…うん」
紬「じゃあ早く風邪を治して一緒に学校に行きましょう?というわけで…はい♪」
唯「…うん」
紬「じゃあ決まり♪今日から唯ちゃんは私の恋人ね♪」
唯「う…うん」
紬「じゃあ早く風邪を治して一緒に学校に行きましょう?というわけで…はい♪」
ムギちゃんは鍋を私に差し出した。中身はおかゆ。どうやら憂が作ってくれておいたものらしい。
唯「これを…どうするの?」
紬「朝ごはんまだでしょ、栄養つけなきゃだから…はい♪」
紬「朝ごはんまだでしょ、栄養つけなきゃだから…はい♪」
ムギちゃんはスプーンにおかゆを一口取って、私の口に差し出した。
唯「いいよぉ、自分で食べられ…むぐ」
紬「さぁ、いっぱい食べて早く元気になってね、唯ちゃん♪」
唯「んぐぐ…っくしょん!」
紬「きゃあ!」
唯「ご、ごめん!」
紬「ぷっ…あはははは…」
唯「む、ムギちゃん?」
紬「私、おかゆだらけね♪」
唯「あはは…ホントだね」
紬「あ、唯ちゃんも口の周りに…あはははは!」
唯「え?ホントだ…ぷふふ、あはははは!」
紬「さぁ、いっぱい食べて早く元気になってね、唯ちゃん♪」
唯「んぐぐ…っくしょん!」
紬「きゃあ!」
唯「ご、ごめん!」
紬「ぷっ…あはははは…」
唯「む、ムギちゃん?」
紬「私、おかゆだらけね♪」
唯「あはは…ホントだね」
紬「あ、唯ちゃんも口の周りに…あはははは!」
唯「え?ホントだ…ぷふふ、あはははは!」
――こうして、私たちは恋人になった。これからよろしくね、ムギちゃん♪
――――――
夕方
夕方
憂「ただいまお姉ちゃ…あ、寝てる…ってなんでごはんつぶだらけなの!?紬さんまで!!
終わり