483 二人のハッピーバースデー [sage] 2010/02/22(月) 22:36:48 ID:EzvOgPYqO
「憂、明日お誕生会しようよ!」
2月21日、日曜日。夕飯を食べていると、お姉ちゃんがこんなことを言い出した。
そう、明日は2月22日。私が生まれて17年になる日だ。
「お誕生会?」
「皆でお菓子とか食べてお祝いするの!たーのしいよ~♪」
「へぇー、すごく楽しみだよ!」
「でしょー♪じゃあ明日の放課後部室に集合ね!あ、4時過ぎじゃなきゃダメだよ、サプライズするんだから!」
「お姉ちゃん、先に言っちゃったらサプライズにならないんじゃないかな?」
「え?…あ!い、今のなし!忘れて忘れて!」
「あはは…うん、わかった。とにかく楽しみにしてるからね」
「うん♪」
お姉ちゃんの笑顔を見てると、本当に楽しいお誕生会になるんだろうなってわくわくする。
そういえば、去年のお姉ちゃんの誕生会にはプレゼントの準備で出られなかったんだよね…
招待される私が言うのもなんだけど…楽しい誕生会になったらいいな。
そして私もお姉ちゃんも楽しめる、そんな最高の誕生日になったらいいな。
484 二人のハッピーバースデー [sage] 2010/02/22(月) 22:37:44 ID:EzvOgPYqO
そして22日の放課後。
律「憂ちゃんお誕生日おめでとー!」パーン!
律さんの合図で、私の誕生会は賑やかに幕を開けた。
軽音部の5人、そしてさわ子先生…こんな大勢にお祝いしてもらえるなんて、私幸せ者だな…
紬「憂ちゃん、今日は思う存分食べてね?このケーキも好きなだけどうぞ♪」
憂「ありがとうございます!でもホントにいいんですか?私部外者なのに…」
澪「いいんだよ、憂ちゃんは半分軽音部員みたいなものだからな」
律「ギター上手いしな!なんならホントに入部したっていいんだからな?遠慮しないでさ!」
梓「なんで入部届持ってんですか…」
さわ子「モグモグ…そういえば唯ちゃんはどこ行ったの?」
気付くと、お姉ちゃんの姿が忽然と消えていた。
ついさっきまで美味しそうにジュースを飲んでたのにどうしたんだろう。と心配になりかけたところで…
バーン!
唯「いえーい!」
憂「お姉ちゃん!?」
お姉ちゃんはいつぞやのメイド服に身を包み、ギターを抱えて華麗に部室に飛び込んできた。
もしかして、昨日言ってたサプライズって…
唯「今日は
憂の誕生日ってことで、私、平沢唯のサプライズソロライブを開いちゃうぜー!」
485 二人のハッピーバースデー [sage] 2010/02/22(月) 22:38:50 ID:EzvOgPYqO
…そういえば、去年のお姉ちゃんの誕生日。
『今夜は私がバースデーライブをやってあげる!』
あの時もこんな風に演奏してくれたっけ。考えてみたらおかしな話だよね。自分の誕生日なのに演奏聞かせてくれるなんて。
なんだか私、お姉ちゃんにもらってばかりだ。
唯「ういっ!」
憂「な、なに?」
唯「楽しい?」
憂「…うんっ♪」
律「あれ、憂ちゃんもしかして泣いてる?」
憂「え、あ、いや!」
唯「えへへ~♪私の演奏があまりに上手すぎて感動しちゃったんだね!」
澪「上手かどうかは置いといても、感動してるっていうのは間違いじゃなさそうだな」
憂「あはは…そうかもしれません」
唯「じゃあ次いくぜ!」
…やっぱりお姉ちゃんはすごいや。単純に上手だとかそういうんじゃなくって、本当に素敵な演奏をする。
深く魅き込まれるような、夢見心地になるような、そんな演奏。
梓「…最初はね、軽音部の皆で演奏しようってことになってたんだ。でも唯先輩、どうしても一人で演奏したいって聞かなくて」
憂「そうだったんだ…」
梓「先週くらいからすごく頑張って練習してたんだよ?あの唯先輩がお菓子も食べないなんて、私びっくりしちゃった」
憂「お姉ちゃん…」
486 二人のハッピーバースデー [sage] 2010/02/22(月) 22:39:50 ID:EzvOgPYqO
「はー、今日は盛り上がったねー!」
帰り道、隣を歩くお姉ちゃんは、声の明るさとは裏腹に少し疲れた様子だった。
一人で演奏していたのに加えて、あの後皆で演奏したり歌ったりしたから仕方ないんだろうけど。
「そうだ、今日は夕飯に出前取ろうよ!何にする?お寿司?ピザ?あ、オードブルもいいかも!」
「…ううん、今日も私が作るよ」
「え、なんで?せっかく誕生日なんだからのんびりしてなよー」
「いいの。誕生日だからこそいつも通りに作らなきゃ」
「そんな…憂はいつも頑張ってるんだし、誕生日くらい怠けていいんだよ?」
「…あのさ、去年のお姉ちゃんの誕生日、覚えてる?私がギター演奏プレゼントしたこと」
「え…?うん!覚えてるよ。憂、指の皮剥けちゃったんだよね」
「あの時だってさ、お姉ちゃんギター弾いてくれたじゃない」
「あれは…そんなんじゃないよ。ただ私が弾きたかっただけだし」
「それでも嬉しかったんだよ。お姉ちゃんの演奏」
「そう…なの?」
「おかげでわかったんだ。誕生日は誰かに何かをもらうだけの日じゃなくて、あげる日でもあるってこと」
「憂…」
「…だからね」
487 二人のハッピーバースデー [sage] 2010/02/22(月) 22:42:04 ID:EzvOgPYqO
私は寒さで赤らんだお姉ちゃんの頬をそっと撫でた。
お姉ちゃんがいたから、私は今日まで生きてこられた。お姉ちゃんが笑っていたから、私も笑っていたんだ。
「だからお姉ちゃんのために、頑張って夕飯作りたいんだよ」
あの時お姉ちゃんがしたように、私は私がしたいことをする。
それでお姉ちゃんが嬉しくなるなら、私はどんなプレゼントをもらうよりも嬉しいから。
「…わかった。でも.」
「…!」
お姉ちゃんは私の手を握りしめて、そっと自分の手のひらに包んだ。
そのぬくもりは、小さな頃からずっと変わらない。そしてきっと、これからもずっと変わらないと思う。
「手伝いくらいはさせてよね?じゃなきゃ気が収まんないよ」
「うん…お願い」
「それじゃ何作ろっか!寒いからすき焼きなんてどうかな?あ、シチューもいいかも!」
「じゃあスーパー行って決めよう?」
「おー!」
――今日は2月22日。私が生まれて17年になる日。そして…
「ほら憂、寒いからもっとくっついて歩こっ♪」
お姉ちゃんの妹になってから、17年になる日。
…ねぇお姉ちゃん、私幸せだよ。あなたの妹に生まれて、本当によかったよ。
「ありがとう、お姉ちゃん♪」
END
最終更新:2010年02月23日 00:03