873 軽音部員♪ [sage] 2010/08/22(日) 20:35:39 ID:JX0tg3O.0 [2/4]
窓を開け、網戸にして部屋の空気を入れ替えると
さっき降った夏の夕立の独特の香りが部屋に入ってきた。
この匂いが嫌いという人もいるけれど、私は結構気に入っている。
「お姉ちゃ~ん、雨やんだよ~」
夕立だからすぐにやむよと言っても、心配だからと一生懸命てるてる坊主を作っていたお姉ちゃんに一声掛ける。
「おぉ、飾る前に雨がやんじゃったよ」
お姉ちゃんはティッシュペーパーを丸める作業に夢中になりすぎて、
雨がやんだことに気づいていなかったみたい。
「あはは、そうだね。でも、せっかく作ったんだし、飾っておこっか。」
「うん!途中でまた雨が降ったら困りますからな~」
鼻歌を歌いながら最後に手にしていたてるてる坊主を完成させ、今まで作った物を全てカーテンレールにくくりつける。
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今日は近所の神社で小さな縁日がある。
たまたま隣のおばあちゃんから聞きつけたお姉ちゃんの誘いで、
久しぶりに二人で出かけようということになった。
そんなに大きくないこの縁日は小さい頃はよく行っていたのに、最近はいつやっているかということも
忘れてしまっていたので本当にずいぶん久しぶりだ。
「お待たせ、じゃあ、いこっか♪」
「よ~し!しゅっぱぁ~つ!!」
準備を整えてリビングに下りると、すでにお姉ちゃんは準備万端らしく嬉しそうに玄関に向かう。
そんなお姉ちゃんを見て、私まで嬉しくなりながら後を追う。
せっかくのお祭りだから、浴衣でも着たいところだったが
少し急だったので今日はいつもの私服。
うぅ~ん、お姉ちゃんの浴衣姿見たかったなぁなんて少し残念だけど、
お姉ちゃんと二人でお祭りなんてそれだけで嬉しいので贅沢は言わないでおこう。
「おぉ~!お祭りだ!結構人が多いね!」
「うん、お姉ちゃん、転ばないように気をつけてね」
小さなお祭りだといっても、近所の人には意外と親しまれているらしく
神社には結構な人が集まっていた。
「憂!何から食べようか!?」
「みんなおいしそうだね~。お姉ちゃん、何が食べたい?」
「うぅ~ん、やきそば、カキ氷、フランクフルト、お好み焼き、
りんご飴、たこ焼き・・・」
ぶつぶつと真剣に悩んでいるお姉ちゃんは、いつまでも見ていたいほど
可愛いけれど、これじゃあいつまでたってもお姉ちゃんのお腹は膨れない。
「とりあえず、一通り見てみようか」
「うん、そうしよう!」
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「はぁ~、ごちそうさまでした」
一通り屋台をうろうろして食べたいものを食べて、お姉ちゃんは満足そうにお腹をぽんぽんとたたいた。
「ついてるよ~」
「ん、ありがと~」
そう言いながらお姉ちゃんの口の端についた青のりを、ハンカチで拭く。
お姉ちゃんは顔を差し出して、されるがままだ。
「ふ~、一通り見て回ったし、そろそろ帰ろうか?」
「そうだね~、もうこれ以上何も入らないよ」
「ふふ、お姉ちゃん、食べることばっかり」
「む~、そんなことないよ~」
「きゃっ」
話しながら歩いていると、子供連れのお父さんとぶつかって転びそうになってしまった。
「ごめんんさい」
体勢を立て直して謝ると、あちらも同じように謝ってくれる。
「ほい」
少し黙って何か考えていたお姉ちゃんがにこにこと笑いながら手を差し出す。
「もう転ばないようにね!」
少し自慢げにさらに手を私のほうに近づける。
そういえば、私がまだ泣き虫だった頃。
この縁日で同じように私が転んで、お姉ちゃんが手を差し出してくれたあの日のことを思い出す。
「えぇ~~~ん、お姉ちゃ~ん…痛いよ~」
「痛いの痛いの飛んでけ~。ほら、憂、飛んでったよ!」
「…ほんと?」
「うん、痛いのはあっちに飛んでいったよ!」
「…うん!ありがとうお姉ちゃん」
「ほい、もう転ばないように手を握ってあげる!」
「わ~い」
「私は憂のお姉ちゃんだから!」
874 軽音部員♪ [sage] 2010/08/22(日) 20:38:54 ID:JX0tg3O.0 [3/4]
遠い記憶を掘り起こして、あったかい気持ちになりながらお姉ちゃんの手に自分の手を重ねる。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「ん、私は憂のお姉ちゃんだからね!」
重ねた手が離れないようにぎゅっと力強く握ったお姉ちゃんのその手は凄く暖かくて頼りがいがある。
いつもぐったりしているお姉ちゃんも大好きだけど、たまに見せる頼りがいのあるお姉ちゃんもかっこいいなぁ。
「ねぇ、憂。
私は一生憂の事守るからね~」
その言葉に一瞬どくんっと心臓がはねるけど
いつものようにへらっと笑いながら言うお姉ちゃんを見て別に他意はないんだろうなって思う。
わかってはいるけど全然大人しくならない心臓に、
恥ずかしくなりながら下を向いて、一言だけありがとうとつぶやいた。
その声は自分でも驚くほどに小さくて、お姉ちゃんに聞こえたかもわからない。
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手を繋いだままお祭りの明かりが遠くなっていく途中で、お姉ちゃんが急に立ち止まる。
どうしたのかな?
もしかして、繋いだ手から私のどきどきが伝わってしまうんじゃないかって
心配でお姉ちゃんのお話にうまく返事出来ていなかったのかもしれない。
「ねぇ、憂。」
顔を上げてお姉ちゃんの顔を見ると、少し困ったような泣きそうな顔をしている。
「ど、どうしたのお姉ちゃん?」
予想外のお姉ちゃんの顔に驚いて返事をすると。
「さっきのって、プロポーズだったり…」
「え?」
お姉ちゃんの言った言葉の意味がよく理解できなくて聞き返す。
「私じゃ頼りないかもしれないけど、
全然、憂とはつりあわないかもしれないけど…
でも、好きだから。
一生守りたいって言うか、一緒にいたいって言うか…
うぅ~ん、…もっとかっこ良く言うはずだったのになぁ…」
最後の方は真っ赤になった困った顔を隠すようにうつむいてしまう。
つながっているお姉ちゃんの手が少し汗ばんできて、緊張しているのが私にも伝わってくる。
私は。
涙が止まらない。
早く伝えなくちゃいけないのに。
不安そうなお姉ちゃんの顔をすぐにでも変えてあげたいのに。
溢れ出る涙が止まらない。
「どう…かな?」
恐る恐る顔を上げ、緊張した面持ちで上目遣いに聞いてくるお姉ちゃん。
「…お願い…うっ…しま…す」
やっとのことで搾り出したその言葉にお姉ちゃんがびくっとしてからぽかんとする。
「えぇ!!!
い、良いの?好きってこう、姉妹としてとか、そういうことじゃないよ?
ちゅ、ちゅ~とかそういう、こ、ことも!
そういう好きだよ!?」
お姉ちゃんは凄く意外そうに何度も何度も聞いてくる。
「ふふ」
私はそんなお姉ちゃんに可笑しくなって泣き笑いみたいになってしまった。
その泣き笑いの表情のまま。
「はい…お願いします」
みるみるうちに太陽のような笑顔になったお姉ちゃんをみて、私の心臓はまた大きくどくんっと跳ねる。
やっぱり私はおねえちゃんの笑顔が大好きなんだなぁ。
「…ありがとう憂!!」
つないだ手を急に離して勢い良く抱きついてきたお姉ちゃんを支えきれなくて少しよろけてしまう。
「あ、ごめんごめん」
「ふふ」
家までの
帰り道。
いつもより手を少し強く握ったまま二人で短い道のりを帰った。
「お姉ちゃん、さっきのだけど」
「ん、さっきの?」
「うん、ちゅ、ちゅ~とか///」
「お、おぉ///」
「まだ、ちょっと早いかな?///」
「う、うん、そうだよね///」
「ちょっとだけ、恥ずかしいよね///」
「そ、そうだよね!///」
「そ、そのうち…ね///」
おわり
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最終更新:2010年08月23日 18:01