735 夢の続きを[1/8] [sage] 2009/11/17(火) 23:00:43 ID:cbvPx/Vc
唇にそっと触れる優しい感触。
お日様みたいにあったかなお姉ちゃんのぬくもりが、私を満たす。
重ねた唇から伝わる微熱。
火照った体は理性を跳ね除けて、お姉ちゃんを求める。
私は、お姉ちゃんの背にそっと手をまわし、閉じていた目をゆっくりと開けた。
憂「……あ」
戸外から雨音だけが聞こえる静かな朝。
私の手は天井に向けて伸びて、虚しく空を切っていた。
憂「なんて夢見てるんだろう、私……」
まだ幾許か熱い顔を、枕に埋めて呟く。
冬も近付く土曜日の朝。
時刻は既に9時をまわっていた。
憂「く、9時!?」
休日とはいえ、寝すぎである。
私はベッドから飛び起きて着替えを済ませると、脳内で本日の予定を組み立てていく。
まずは朝食の準備をして、それから洗濯と掃除と……。
憂「っと、その前にお姉ちゃんを起こして……」
自分の口から漏れたその名に、再び顔が熱くなる。
憂「わぁああっ! 何考えてるんだよおおぉ!」
私は家事を後回しにして、ベッドに倒れこんでしばらく悶えた。
736 夢の続きを[2/8] [sage] 2009/11/17(火) 23:01:34 ID:cbvPx/Vc
唯「ういー?」
唯「憂ってば」
憂「あ、え!? なに、お姉ちゃん?」
唯「そんなに見つめられると食べにくいよ」
憂「うん、ごめん……」
唯「なんだかぼーっとしてるし……、大丈夫?」
憂「だ、大丈夫だよ。ほら、元気げん――」
元気をアピールしようと腕を振りかざした瞬間、左手がジュースの注いであるグラスに触れて、がしゃん、と言う音を立てた。
オレンジ色の液体が勢いよく広がる。
それはテーブルの上だけに留まらず、炬燵布団を浸食し、お姉ちゃんの白いフリースをも滲ませた。
憂「ご、ごめん!」
慌てた私は、テーブルの対角にあった布巾に手を伸ばそうとして、今度はお姉ちゃんのグラスに触れた。
唯「うわっ!?」
その衝撃でグラスは倒れ、テーブルの上の水溜りは私のグラスと合流して、更にその規模を拡大した。
普段ならありえないような失態に、私の脳は際限なく動揺していた。
このままではお姉ちゃんが風邪をひいてしまう――。
憂「お姉ちゃん、脱いで!」
唯「え、ええ!?」
憂「ほら、はやく!」
唯「いや、その前にここ拭かないと!」
お姉ちゃんのフリースに手をかけたところで、ようやく私は制止した。
そうだ、まずはテーブルの上の大洪水をなんとかしなくては――。
737 夢の続きを[3/8] [sage] 2009/11/17(火) 23:02:37 ID:cbvPx/Vc
数分後。ようやく片付いた炬燵を前に、私はがっくりと項垂れていた。
炬燵布団はお姉ちゃんのフリースと共に洗濯してしまったため、炬燵は既にその役割を果たしているとは言い難い。
そんな家具調炬燵を、寂しそうに見つめているお姉ちゃん。
確かにこの季節に、お姉ちゃんから炬燵を取り上げるというのは過酷な話である。
そして、その一連の原因が全て私にあるとすれば、もはや自己嫌悪に陥るしかなかった。
憂「ごめんね、お姉ちゃん……」
唯「い、良いんだよ憂。気にしないで。ほら、私もよく零したりするし!」
憂「お姉ちゃん……」
唯「本当にどうしたの? なんだか今日の憂、変だよ」
憂「……」
あんな夢を見たせいで、私はお姉ちゃんをずっと意識している。
お姉ちゃんの一挙手一投足が、気になって仕方が無い。
好きだという気持ちに変わりはなくても、今の今まで、こんな気持ちになったことは……。
憂「なんでも、ないよ」
唯「……」
……。違うよね。
この気持ちの正体は、私にだって分かっている。
本当は、もっとずっと前から、私は自分の気持ちに気付いてた。
けれどそれは、姉妹として抱いてはいけないものだから。
心の底に仕舞い込んで。押し殺して。ずっとずっと我慢して――。
ようやく、自然に振舞えるようになっていたのに。
私は、お姉ちゃんのことが好き。
姉妹だからとかそういうことじゃなくて、一人の女性として――。
憂「(私は……)」
気がつくと、目の前のお姉ちゃんの顔があった。
738 夢の続きを[4/8] [sage] 2009/11/17(火) 23:03:23 ID:cbvPx/Vc
唯「顔、赤いね」
……近い。
昨日の夢が、脳裏を掠めた。
このまま唇を奪ってしまえば、少しは楽になれるだろうか。
私の想いが、伝わるだろうか。
お姉ちゃんは、自分の額を私の額にそっと重ねる。
お姉ちゃんの静かな吐息とは対照的に、私の息は荒れていた。
そんな自分が酷く穢れたものに思えてきて、私は小さく自嘲した。
唯「ちょっと、熱っぽいかな……。息も荒いみたいだし」
憂「……うよ」
唯「え?」
憂「違うよ、お姉ちゃん」
ほんの一瞬、魔が差して――
唯「わっ……」
私はお姉ちゃんの肩を乱暴に掴み、力任せに押し倒した。
そして抵抗の素振りを見せないお姉ちゃんの、柔らかな唇を強引に――
――無理だよ。できるはず……ない。
唯「憂……」
憂「最低、だよね、こんな、こと……。ごめん、ね、お姉ちゃん、ごめん……」
視界は翳んでぼやけて見えた。
瞳に浮かぶその雫を、今度は零さないようにと懸命に言葉を紡ぎだす。
けれど堤防は限界を迎え、お姉ちゃんの頬に一粒、二粒と涙が零れ落ちた。
嫌われた、だろうか。
気持ち悪い妹だって、蔑まれるだろうか。
――しかし、それでも。
お姉ちゃんはたがわず柔和な微笑みを浮かべていた。
唯「いいよ、憂」
憂「お姉ちゃん……」
そっと伸ばされた両手が、私の背中を優しく包む。
重ねた唇は、夢みたいにあったかくて、どこまでも慈愛に溢れていた。
739 夢の続きを[5/8] [sage] 2009/11/17(火) 23:04:49 ID:cbvPx/Vc
昔の私。
お姉ちゃんはいつも私に優しくしてくれるけど、あの頃の私はお姉ちゃんに何も返せていなかった。
だから、お姉ちゃんの為に何かしたかったんだ。
お父さんやお母さんが居ない時、進んで家事をやろうとしたのも本当は全てお姉ちゃんの為だった。
お姉ちゃんの為に、一心不乱に努力してきた。
お姉ちゃんのあの笑顔に、「ありがとう」の言葉に、私は何度も救われてきたから。
『ういー、これういが作ったの?』
『うん、だけど失敗しちゃったから、今作り直し――って、食べちゃだめだよ!?』
『ぅえぐ。……おいしいよ』
『今呻き声みたいのが聞こえた気がしたけど』
『えへへ、ほんとはちょっと苦かった』
『もう、食べちゃだめって言ったのに……』
『ごめんね、うい。でも、しっぱいしてもおいしいんだから、ういはお料理の才能があると思うな!』
『ふふ、ありがとう、お姉ちゃん』
『かーねーちょんください!』
『カーネーションだよお姉ちゃん』
『どうしよう、うい。お金足りない……』
『いくら足りないの?』
『10円』
『……ふふ、いいよ。貸してあげる』
『ほんと!? ありがと~うい~!』
『母の日はね、お母さんにかーねーちょんをプレゼントするんだよ』
『そうなんだー。お姉ちゃんは物知りだね』
『えへへ、お姉ちゃんだからね!』
『お姉ちゃん、一緒に寝てもいいかな?』
『いいよ~、おいで、憂』
『えへへ、あったかい』
『全く、憂は寂しがり屋さんなんだから』
『ずっと一緒の部屋がよかったな……』
『だめだよ、そんなこと言っちゃ。お父さんだって気を使ってくれたんだから』
『お姉ちゃんは、私と一緒の部屋じゃ嫌だった?』
『嫌なはずないよー。だけど、いつまでもべったりじゃいけないと思うし、部屋が別でも毎日逢えるもん』
『お姉ちゃんが大人だ……』
『えへへ、お姉ちゃんだからね!』
『お姉ちゃん』
『なぁに、うい?』
『もっと、くっついてもいい?』
『うん、いいよ~。……ありがとね、憂』
『? どうしてお姉ちゃんがお礼を言うの?』
『実は私も寂しかったりして』
『ふふ、もう、お姉ちゃんたら』
――――。
私の脳裏には、優しい思い出ばかりが浮かんでいた。
740 夢の続きを[6/8] [sage] 2009/11/17(火) 23:05:49 ID:cbvPx/Vc
唯「落ち着いた?」
憂「……うん」
唯「ごめんね、私鈍感だからさ」
憂「お姉ちゃんが謝ることなんてないよ、悪いのは私――」
言いかけたところで、お姉ちゃんの人差し指が私の口を塞いだ。
私の口から発せられようとした言葉は、嘘偽り無い私の本心だ。
お姉ちゃんを押し倒したあの瞬間、今まで築き上げてきたものが音を立てて崩れたのだ。
唯「嫌われたかも、とか思ってる顔だ」
憂「……」
唯「残念。私はこんなことで憂のことを嫌いになってなんてあげません」
憂「……」
唯「あのね、憂。私は家事とかできないし、朝も起きれないし、ダメなお姉ちゃんだから、憂にはいつも感謝してるんだ」
気恥ずかしそうにしながら、お姉ちゃんは言う。
――ダメなんかじゃない。
お姉ちゃんはありのままで、私に幸せをくれるから。
――ダメなのは、私。
私はそんなお姉ちゃんに、酷いことをしてしまったから。
唯「でもね。私が憂のことが好きなのは、料理ができるからとか、洗濯ができるからとか、そんな理由じゃないんだよ?」
小さな子供を諭すかのように、お姉ちゃんは続ける。
唯「憂が憂でいてくれるから――私は憂が好きなの」
そう言って、お姉ちゃんは私を優しく抱きしめてくれた。
鮮明に戻っていたはずの視界が、再び滲んで見えなくなった。
唯「憂は……、私のこと、好き、なんだよね?」
お姉ちゃんは緩やかに私から離れ、ぎゅっと肩を掴んで、しっかりと私の瞳を見据えた。
体が、震える。
憂「好き、だよ、好きに、決まってる……」
唯「私は予定がなければ一日ごろごろしてるし、家事もできないし、憂に頼ってばっかりだけど、それでも好き?」
――ごろごろしているお姉ちゃんが可愛くて好き。
――家事ができなくても手伝おうとしてくれるお姉ちゃんが好き。
――私を頼ってくれるお姉ちゃんが好き。
どうあっても、何があっても、私はありのままのお姉ちゃんが好き。
私は自分の気持ちを正直に伝えた。
唯「ありがとう、憂」
僅かに頬を朱に染めて、お姉ちゃんは照れ笑いを浮かべながら、それを隠すかのように再び私を抱きしめた。
クセのあるやわらかな髪の毛が、私の頬を優しく撫でる。
ほのかに香るシャンプーの匂い。心が満たされていく気がした。
741 夢の続きを[7/8] [sage] 2009/11/17(火) 23:06:29 ID:cbvPx/Vc
唯「ほら、一緒だよ」
憂「え……?」
唯「憂がありのままの私が好きって言ってくれたみたいに、私もありのままの憂が好きなの」
憂「お姉ちゃん……」
唯「だからね」
至って真面目な、けれど優しい声で。
こんなにも近くに居るのに、もうその表情は窺えない。
唯「もう少しだけ、自分を好きになってあげて」
憂「……」
唯「憂がこんなにも私のことを想っていてくれるのに、私が憂のことをなんとも想っていないはず無いじゃない。それなのに勝手に嫌われたって決め付けて、勝手に自分を責め立てて。それじゃあ、憂自身が可哀想だよ」
憂「う……、うあぁぁぁっ……」
唯「ごめんね、憂。憂の気持ちに気付いてあげられなくて」
僅かに震えたその声は、嗚咽混じりに紡ぎだされた優しい言の葉。
私はもう何も考えられなくなっていた。
お姉ちゃんは悪くないって、否定の言葉も。
自分を責める、戒めの言葉も。
ありがとうの言葉さえも、見付からなかった。
ただ、涙が止まらなかった。
742 夢の続きを[8/8] [sage] 2009/11/17(火) 23:07:55 ID:cbvPx/Vc
気がつけば外の雨は上がり、嘘みたいな晴れ間が覗いていた。
先程までの陰鬱な空気は霧散して、なんだか普段よりも部屋が明るく感じられた。
開けたカーテンの隙間から差し込む陽光を全身に受けて、それでもお姉ちゃんはごろごろしている。
炬燵がなければ毛布にくるまればいいんだよ! というのがお姉ちゃんの持論らしかった。
憂「お姉ちゃん、私ね」
唯「うん?」
憂「……夢をね、見たんだ」
唯「へぇー、どんな?」
憂「お姉ちゃんと、キスする夢」
唯「……私と?」
憂「うん」
唯「そっか。それで現実でもちゅーしたくなっちゃったのかぁ」
憂「だ、だって、それは、お姉ちゃんがあんなに近くに来るから……」
唯「言ってくれればよかったのに」
憂「え?」
唯「言ってくれれば、いくらでもしてあげるのに」
憂「……」
唯「うい?」
憂「じゃあ、お姉ちゃん。今ここでしてくれる?」
唯「え、うん……。でもそんなにストレートに言われるとちょっと照れる……」
憂「自分に正直に生きることにしたの。そうすればもっと自分が好きになれる気がするから」
唯「……そっか」
夢を含めて三度目のキスは、優しくてあったかくて――、甘酸っぱいイチゴみたいな味がした。
744 さる食らった [sage] 2009/11/17(火) 23:23:36 ID:B+z53vIF
唯「さっきイチゴ食べたからだよ」
憂「そんなオチ!?」
,. -‐'""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //|
|l、{ j} /,,ィ//| 俺はほのぼのSSを書いていたんだ。書いていると思ったら
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ いつの間にか変態ルートだった。慌てて軌道修正してみたら
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ | ガチ百合モノになっていたんだ。
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言っているのか わからねーと思うが
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何を書いているのかわからなかった…
,゛ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった…
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
/'´r ー---ァ‐゛T´ '"´ /::::/-‐ \ 羞恥だとか黒歴史だとか
/ // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
ごめんなさい。次は頑張ります
あー、死にてえwwww
最終更新:2009年12月14日 23:31