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Case1/探偵―Detective―


ネオドミノシティ上層―通称シティの一角に、立ち並ぶ高層ビルや洒落たブティックとは凡そ似つかぬ、古びたアパートがあった。
ともすればそこだけ時代に取り残されてしまったようなこの奇妙な建物は、なんでもオーナーが再開発を断固拒否した結果、
ゼロ・リバースの惨劇より以前と変わらぬ佇まいを残しているそうである。
さて、そのうちの一室に、建物そのものと同じく奇妙な看板を貼り付けた部屋があった。
木製のいい加減に貼り付けられたその看板には、剥がれかけたペンキでこう書かれている。
――天原探偵事務所 デュエルモンスターズ絡みの事件歓迎します――と。

遊戯王Parallel Case1 探偵―Detective―

その日もこの男―天原葉鐘にとって、いつも通りに暇を持て余す日になる筈だった。
朝日と共に寝慣れたソファから置きだしてコーヒーを啜り、念の為着替えて朝刊を読み、
そして一日中チャンドラーの小説を読み耽っては暇を嘆き、一日の終わりにブランデーを呑んで床に就く。

その、筈だった。

「お願いだから手を貸してよ、葉鐘兄ちゃん!」
「僕達皆の大切なカード達なんだ!どうしても取り返したいんだよ!」
「――また、このパターンか。」

頭を掻きながら、そう呟く。
今、事務所には彼と小さな依頼人が2人。その手には、子供達に人気の「クリボー」を象った、陶器の貯金箱。

「仕方ねェ、要点を整理するぞー。」

そう言って仕事用の古びたメモ帳に目を落し、今回の間違いなく金にはならない依頼を確認する。

「要するに、だ。お前達のカードをデュエルギャングの生き残りが偉そうに踏ん反り返って持っていった。
カードが無ければデュエルもできねェし、何より一生懸命集めた大切なカードだ。
そこで困ったお前達は俺の元へやってきた――と。」

一度目を上げて子供達を一瞥すると、再びメモ帳に視線を戻した。
どのページを捲っても殆ど同じような内容が書き連ねてある。

「はぁ…コレで何度目よ?ヤバそうだったら逃げも隠れもしろって言ってるだろ?」
「だって、『勝つか負けるか分からないなら、まず立ち向かえ』って言ったの、兄ちゃんじゃないか。」
「んがっ…。」

言葉に詰まる。
ああ、確かにそうさ。そう、言ったとも。
しかしこの場合、十中八九「負けると分かっている勝負」だと思うのだが。
…だがそう言って追い返したのでは評判が悪くなるし、何より気分が悪い。
それに――あの大家の耳にでも入った日にはお終いだ。

「分かった分かった、俺の負けだ。」

両手を上げて降参のポーズをとる。
やれやれ、『謎めいた美女からの依頼で危険の中へ飛び込むハードボイルド』などという展開は、やはり小説の中の出来事に過ぎないのか。
少なくとも今、この男にとってはそうだった。

「ついでに、いつも言ってる通り報酬は別にいらねェ。お前達も大変だろうしな。」

サテライトに住む子供達は、殆どが孤児だ。
だから小遣いなどという物が貰える訳も無く、自分達の力で生計を立てなければならない。
葉鐘はそれを知っている。だから、報酬は取らない。
――その為に、食事が一日にカップ麺1つになろうとも。

「お前達はどうする?乗ってくか?」
「えっ、兄ちゃんのD-ホイール乗せてくれるの?」

目を輝かせる小さな依頼人達。本当に正直だ、子供ってヤツは。

「やったあ、兄ちゃんのD-ホイール、カッコいいからなあ。」
「あっ、でも…僕達2人だから、乗れないね?」

少し残念そうな顔をする少年。
それを見て葉鐘は「待ってました」とばかりに、ニヤリと笑った。

「安心しろ。――サイドカー付きだ。」

サテライトの一角、倉庫街。
嘗てはデュエルギャング達のアジトが無数にあったこのエリアだが、チーム・サティスファクションによるサテライト制覇後は、
彼等が運良く『狩り損ねてくれた』残党達が僅かばかりにたむろするばかりとなっていた。
――尤も、この一帯の様相は当時と何ら変わりない。
生き残ったギャング達が、力無い人々の上にあぐらをかいて座っている。
力が全ての「掃き溜め」。
その事実は、何一つとして変わってはいなかった。

「ふう~、今日も一仕事した後のビールが美味いぜえ。」
「あんなガキ共相手じゃあ、少しばかり退屈だけどな!」
「ま、コレもサティス何たらがチームの数を減らしてくれたお陰って訳だ。」
「ハハハ、違いねえ…あン?何か、音がしねえか?」

残党一味が耳を澄ますと、確かに此方へ近づいてくる音が一つ。

大地を蹴るタイヤ、力を蓄え、唸るエンジン。
風を切り疾走する鋼鉄の塊――D-ホイールの鼓動が。

そして扉まで近づいたその足音が軋むブレーキ音と共に鳴り止んだ次の瞬間、古びた倉庫の扉が蹴り開けられた。

「――邪魔するぜ、悪党共。」

鈍く輝くガンメタルのボディを持った猟犬、近頃この辺りで「厄介事」をバラ撒いていると言う鋼鉄の獣。
「生意気な探偵ヤロー」の駆るD-ホイール、クローム・ハウンドが、痛めつけたガキ共と疫病神を乗せて現れた。

「テメェ、何しに来やがった!」

一番手前に居た男が吼える。
しかし吼えられた当人は至極面倒くさそうな面持ちで答えた。

「あァ?馬鹿かテメーは。このガキ共のカードを返してもらいに来ただけだろうが。そう粋がんなよ。」
「何だとテメエ!?」
「ハイ其処うるせぇ。あー、あー。兎に角ー、カードさえ返してもらえれば手荒な真似はしなーい。大人しく武器を捨てて投降しろー。」
「やる気あんのかコラァ!」

あまりといえばあまりの葉鐘の態度に、遂にギャングの一人が噛み付いた。
尤も――その時点で既に術中に嵌っているのだが。

「無いね。俺平和主義者だから。でもそっちがやる気だっつーんなら…。」

口元にニヤリと不敵な笑みを湛え、残党一味を指差して声高に叫ぶ。

「一番強ぇ奴が来な!…泣かすがな。」
「ヤロー…二度とディスクが持てねェ身体にしてやる!」

掛かったな――と、小さく呟く。
啖呵を切ったのは始めに吼えた男。そしてこの自信は間違いなく子供達から奪ったカードでデッキを強化したばかり…
詰まる所、碌な調整すらしていない、と言う事だ。
更に付け加えると、ここに来る途中で奪われたカード群は把握済みである。
対策は万全だ。

ディスクを構えた両者が向き合う。
西部劇宜しく吹きぬけた風が、砂埃を巻き上げた。

「俺が勝ったらカードは返せ。あと迷惑な真似すんな。」
「ハン!じゃあテメーが負けたらそのデッキごと頂いてやるぜ!」
「別に構わねェ。ああ、そうだ――。」
「あァ?」
「ついでに俺が勝ったらテメー…」
「何だよ?」
「焼きソバパン買ってこいや。自腹で。」
「このヤロォ!調子に乗ってんじゃねーぞコラァ!」
「ガタガタ五月蝿ぇ!さっさとおっ始めようや。」
「舐めやがってぇ…いくぞオラァ!」

「デュエル!」
「デュエルだァッ!」

「先行は俺だァ!ドロー!」
(ン!こいつはツイてるぜ…!今朝方ガキ共から奪ったレアカードを早速引き当てるとは、日頃の行いが良い所為かなあ~…なんてなァ。)

そうほくそ笑むと、向かい合った生意気な探偵に視線を向ける。

――散々コケにしやがって…宣言通りディスクも持てずに震えて暮らす毎日を送らせてやるよ!

「どうした?早速"他人の"レアカードを引いたってか?」
「ハッ!何とでも言え…今の俺は最高にツイてんだ!吠え面かくなよ!」
「面白ぇ、見せてみな。」
「行くぜぇ!手札から<マシンナーズ・フォートレス>と<グリーン・ガジェット>を墓地へ送り!
<マシンナーズ・フォートレス>を墓地から特殊召喚するァ!」

<マシンナーズ・フォートレス>。
通常、2体のモンスターのリリースを必要とするLV7の最上級モンスターでありながら、手札の機械族モンスターをLVの合計が8になる様に捨てる事で
即座に特殊召喚する事が可能であり、攻撃力2500、守備力1600という優秀なステータスを持ちながら、戦闘破壊された際に相手のカード1枚を破壊し、
更には効果モンスターの対象となった際にも相手の手札1枚を確実に捨てさせる事の出来る優秀なレアカード。
情報にあった通り、エース級に相応しいモンスターである。

対策をしていなければ、の話だが。

「更に!<イエロー・ガジェット>を召喚!デッキから<グリーン・ガジェット>1枚を手札に加える!」

<イエロー・ガジェット>、攻守共に1200のLV4モンスター。
このカードを始めとするガジェットモンスターは、場に出る事で別の色のガジェットモンスターを手札に呼び込む効果がある。

しかし、やれやれと溜め息を吐いた。
本人は消費した<グリーン・ガジェット>を回収しつつモンスターを2体並べたつもりだろうが、手札消費は結局の所-2枚である。
枚数的には2体の通常召喚と変わらないとは言え、今此処でガジェットモンスターを手札に加える意義は薄い。精々もう1枚機械族モンスターを引けば、<マシンナーズ・フォートレス>が破壊された際
保険になるといったところだが、それならば手札に<イエロー・ガジェット>を握っていても変わらない。
加えて、返しに<マシンナーズ・フォートレス>で戦闘破壊するにしてもライフを失う事に変わりは無い。

矢張りこの男、奪った筈のレアカードに逆に自身の目を奪われている。

「カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー。」
この手札…やっぱテメーは"ツイてない"ぜ。と、胸中で一人ごちた。

確かに<マシンナーズ・フォートレス>は強力なモンスターである。
しかしそれも、"使いこなす事が出来れば"の話だ。

「魔法カード、<竜の早贄>を発動だ。このカードはメインフェイズ1の開始時、自分フィールドが空の場合のみ発動できる。
デッキの1番上のカードを表側にして互いに確認し、それがドラゴン族のモンスターだった場合、相手の伏せカード1枚を破壊し、表にしたカードを手札に加える。だがそれ以外のカードの場合、表にしたカードと相手がランダムに選んだ俺の手札1枚を、ゲームから除外する。」
「何ィ?いきなりギャンブルカードだと!?」
「デッキトップはコイツだ…<真紅眼の飛竜>。従って伏せカードを粉砕し、手札に加える。」
「ケッ、運の良いヤローだ…。」

破壊されたカードは<聖なるバリア-ミラーフォース->。
攻撃を受けたときに相手の攻撃表示モンスターを全滅させる効果を持つ罠カード。
これも、情報通り奴が奪っていったカードだ。

「続けていくぞ。俺は手札より永続魔法、<一族の結束>を発動。墓地のモンスターの種族が1種類のみの場合、
場の同じ種族のモンスターの攻撃力は、800ポイント上昇する。」
「オイオイオイ、探偵さんよ。テメーの墓地は空っぽだぜ?」
「黙って見てな。俺は更にカードを3枚伏せ…<ブリザード・ドラゴン>を召喚!」
「ハッ!高々1800かよ?<マシンナーズ・フォートレス>の敵じゃあねぇぜ!」
「ああ。だから、こうする。<ブリザード・ドラゴン>のモンスター効果、発動。」
「何ィ?」
「<ブリザード・ドラゴン>は!相手フィールド上のモンスター1体を凍りつかせる事で、
攻撃と表示形式の変更を次の俺のターンまで封じる効果を持つ。対象は<マシンナーズ・フォートレス>だ。」

対峙したギャングの口元が吊り上がる。「何だ、その程度かよ。」とでも言うように。

「そうかい!それじゃあ<マシンナーズ・フォートレス>の誘発効果発…」

そこでギャングはハッと気がついた。

――失敗った。アイツの残り1枚の手札は、確か――

「フン、気が付いたか。そう、俺の残り1枚の手札は―<真紅眼の飛竜>だ。」
「チィッ…!」

<真紅眼の飛竜>は墓地に存在する時、通常召喚を行っていないターンの終了時にゲームから除外する事で
墓地のレッドアイズシリーズを特殊召喚できるカード。
加えて、ドラゴン族であるが故に<一族の結束>のトリガーともなりうるカードだ。

<真紅眼の飛竜>の墓地への移動により、<一族の結束>発動条件成立。
<ブリザード・ドラゴン>攻撃力1800→2600

「バトルフェイズだ。<ブリザード・ドラゴン>、そこの歯車をぶっ壊せ!」
「うおおっ!」

<ブリザード・ドラゴン>の攻撃により、<イエロー・ガジェット>破壊。
ギャング残LP8000→6600

「俺のターンは終了だ。」
「クソッ、俺のターン…!」
(…やっぱりな、今の俺は最高にツイてやがる!)

「<マシンナーズ・フォートレス>をリリース!」
「チッ、<ブリザード・ドラゴン>のロックを抜けられたか。」

<ブリザード・ドラゴン>の効果を抜ける手段は豊富だ。
別のモンスターを呼び出して<ブリザード・ドラゴン>を破壊、そうして次の相手ターンでの効果発動を封じ、
改めて次の自分ターンに攻撃を仕掛ける。
或いは今回のように、別のモンスターのリリース要員としてしまう、等がそうだ。

「出てきな!<サイバー・ドラゴン>!」
「何!?」

<サイバー・ドラゴン>――LV5・攻撃力2100/守備力2000――は本来、相手フィールド上にのみモンスターが存在する時に特殊召喚出きる効果を活かし、
即座にシンクロ召喚や追撃のモンスターを並べるといった使い方が主だ。
それを<ブリザード・ドラゴン>を倒せない状況で通常召喚とは…一体何を考えているのだろうか。

――まさか。
奴が奪っていったと言うカードの中に、あるカードがあったことを思い出す。

名を<オネスト>、と言う。
このような輩に似合うカードではないが、その効果は強力無比。
場の光属性モンスターの戦闘時に手札から捨てる事で、相手モンスターの攻撃力と同じだけ、そのモンスターの攻撃力を上昇させると言うものである。

その可能性がある時点で此方の攻撃は常に<オネスト>を意識せざるを得なくなる。
果たして、如何に切り抜けるべきか。

対策は、ある。
だが今この手の中に<オネスト>を打破できるようなカードは、一枚として存在しなかった。

手にする鍵は…この3枚の伏せカード。

「ボーっとすんなや、探偵さんよォ!」

ハッと我に帰る。そうだ、今奴が<オネスト>を手にしていると言う保証は、どこにもない。

「行くぞコラ、手札から<二重召喚>、発動!」

<二重召喚>は、通常1度の通常召喚をもう一度だけ可能にする魔法カード。
と、言う事は、間違いなく<オネスト>を手札に加えるための布石…!

「<シャインエンジェル>、召喚!」
「チィッ、やはり…!」

<シャインエンジェル>は攻撃力1400と心許ないステータスだが、破壊された際にデッキから攻撃力1500以下のモンスターを場に特殊召喚することができる。
そして<オネスト>の攻撃力は1100であり、自身を手札に加える能力を持つ。

これにより、奴は間違いなく<オネスト>を回収する事ができる――。

「バトルだァ!さっさと死んでこいや<シャインエンジェル>ゥ!」

<シャインエンジェル>、攻撃により撃破。
ギャング残LP6600→5400

「<シャインエンジェル>のモンスター効果!来いよ、<オネスト>ォ!」
「クッ…!」
「メインフェイズ2だ。<オネスト>を手札に加えてターンエンドだ!」
「待ちな、このエンドフェイズに…罠カードを発動する!」
「あァ?」
「永続罠、<破滅へのクイック・ドロー>!このカードがある限り、御互いのプレイヤーはドローフェイズに手札が0枚だった場合、
続けて1枚をドローする。但し、このカードのコントローラーはエンドフェイズ毎に700ポイントのライフを支払わなければならず、
その時点でのライフが700に満たない場合はデュエルに敗北する。更にこのカードが破壊されたとき3000のダメージを受ける…!」
「オイオイ、ヤケになったかよ?どうせ<オネスト>の前では如何に攻撃力の高いモンスターを引こうが無駄だ!」
「そんな事、やって見なくちゃ分からないぜ…?」
「何?」
「他人のカードを奪い取って悦に入ってるような奴には分からねーだろうがな…」

風が、吹いた。
探偵の首のストールが、まるで翼のようにその風に靡く。
瞳には決意と信念の炎。
そして彼はその魂、を詠う。

「俺は共に闘ってくれるこのデッキの可能性を、仲間の力を信じる!何時だって切り札(ジョーカー)は――"そこ"にある。」
「葉鐘兄ちゃん!」
「五月蝿ぇ!粋がんな探偵ェ!」
「黙って見てな…俺のターン、ドロー!更に<破滅へのクイック・ドロー>の効果で追加ドロー!」

このカード…可能性は、見えた…!

「<ブリザード・ドラゴン>の効果発動!<サイバー・ドラゴン>を凍りつかせる!」
「ハッ、結局その場しのぎじゃねえか!大した口聞いた割にそのザマかよ!」
「黙って見てなつったろ…?俺はモンスターを1枚伏せて、ターンエンド…このエンドフェイズ、俺は700のライフを支払う!」

葉鐘残りLP8000→7300

「ヘッ、俺のターン!モンスターをセット、カードを1枚伏せ…ターンエンドだ!」
「罠カード発動!<砂塵の大竜巻>!伏せカードを破壊し、カードを1枚伏せる!」
「チッ、<奈落の落とし穴>は破壊だ…まあいい。」
「俺のターン、ドロー!更に追加ドロー!」

このカード…仕掛けるなら、今しかない…!

「罠カード発動!<無謀な欲張り>!デッキからカードを2枚ドローし、以後2ターンの間、俺のドローフェイズをスキップする!」
「何?1ターンで4枚のドローだと!?」
「そうだ!そして今…ジョーカーは俺の手の中にある!」
「何だと…!」
「行くぞ!フィールド魔法、<死皇帝の陵墓>!必要な生贄の1000倍のライフを払う事で、上級モンスターをリリース無しで召喚する!」
「リリース無しの…通常召喚だとォ!?」
「ライフを2000支払い…来い!<タイラント・ドラゴン>!」

葉鐘残LP7300→5300

「更に<二重召喚>を発動し…守備モンスターをリリース!現れろ、<マテリアルドラゴン>!」

不敵な笑みが、再び浮かんだ。

「ギムレットには――早過ぎたがな…!」
「馬鹿な…1ターンに上級・最上級モンスターを通常召喚で2体も並べるだと…!?」

3体のドラゴン。その圧倒的な力を前に、息を飲む。
喉の渇きを覚え、唾を飲み込もうとするが、喉が上手く動かない。
ギャングが自身が優勢であると――"優勢である筈だと"気付くのには、暫くの時間を要した。

「だ、だが<オネスト>がある限り、<サイバー・ドラゴン>は負けねえ!」
「試してみるか?バトルフェイズ!<タイラント・ドラゴン>の攻撃!」
「させるかよォ!ダメージステップ時に<オネスト>だッ!吹き飛べェ、<タイラント・ドラゴン>!」
「いいや、吹き飛ぶのはお前の方だ!罠カード発動!<メタル化・魔法反射装甲>!
このカードが装備されたモンスターの攻撃力・守備力は300ポイントアップし、さらにダメージ計算時のみ、
攻撃した相手モンスターの攻撃力の半分を装備モンスターの攻撃力に加える!」
「何だとォ!?」

<サイバー・ドラゴン>最終攻撃力
2100+4000=6100

<タイラント・ドラゴン>最終攻撃力
2900+800+300+3050=7050

「往け、<タイラント・ドラゴン>!」
「ぬああああっ!?」

<サイバー・ドラゴン>撃破。
ギャング残LP5400→4450

「更に、<タイラント・ドラゴン>のモンスター効果!相手フィールド上にモンスターが存在する場合、
続けてもう1度だけ攻撃できる!<タイラント・ドラゴン>!守備モンスターを粉砕しろ!」
「何だってェーッ!!」

守備モンスター<グリーン・ガジェット>撃破。
LP変化なし

「まだまだァ!<ブリザード・ドラゴン>でダイレクトアタック!」
「うおああっ!」

<ブリザード・ドラゴン>攻撃力2600
ギャング残LP4450→1850

「これが…最期だ!翔べ!<マテリアルドラゴン>!」
「ヒ、ヒィッ!?」

<マテリアルドラゴン>攻撃力3200
ギャング残LP1850→0

「やった!これでカードも取り戻せた!」
「一気に高レベルのドラゴンを続けて呼び出した上に、<オネスト>まで突破するなんて…流石葉鐘兄ちゃんだ!」
「そ、そんな…そんな馬鹿な…あれだけのレアカードが…。」

崩れ落ちたギャングに、ずい、と詰め寄る。

「オイ、お前。」
「ヒィッ!?」
「さっさと盗ったモン返せや。」
「こ、ここ、このデッキ全部そうですゴメンナサイィ!」

くるりと辺りを見渡し、残りのギャングを探す。
…が、その姿は既にどこにも無かった。

「逃がしたか…まあ、聞いていたカードは全部この中にあるようだな…。ああ、それと。」
「ハイィ!まだ何か!?」
「2つだ。一つは残りの連中に出くわしたら、"何かしたらこうなる"と伝えろ。」
「か、畏まりましたッ!で、も、もう一つは…?」

怯え竦むギャングの顔を覗き込むと、満面の笑みでこう言い放った。

「焼きソバパン、3つ。」

Case1・end


  • wikiで連載とかどう考えても無理ゲーです、ほんとうにありがとうございました -- 葉鐘 (2011-04-14 18:41:00)
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最終更新:2011年12月09日 05:19