Case2/稲妻―Lightning Punisher―
先日デュエルギャングの残党に勝利した後、葉鐘は暇を持て余していた。
いつものようにチャンドラーのロング・グッドバイに手をかけ――はて、これを読むのは今週だけで何度目だったか。等と考えていた所、カタン、とポストに何かが落とし込まれる音がした。
戸口の看板には相変わらずいい加減なたてつけと掠れたペンキで書かれた「天原探偵事務所 デュエルモンスターズ絡みの事件歓迎します」
と言う文字が、虚しく風に晒されていた。
遊戯王Parallel Case2 稲妻―Lightning Punisher―
「さて、と…。」
本を閉じ、先程音がしたポストに向かう。
――今回は一体何の催促状だろうか。あるいは、依頼の手紙であれば最高なのだが。
中に入っていたモノは果たして、そのどちらでもなかった。
「何だ、チラシか…。」
ポストに投函されていたのは、近くにオープンしたらしいピザ屋の宣伝チラシだった。
催促状で無かった安堵と、依頼でなかった落胆が入り混じった微妙な心持ちでその文面に目を通す。
「何々…?『ピザパニッシュ、オープンしました!チェーン1・注文、2・調理、3・配送で効果を発動します☆』…って…。」
チラシにはピザを持った「ライトニングパニッシャー」の姿が描かれていた。そしてこの文面である。
「どこからつっこめば良いのやら。とりあえず、客に来てもらわなきゃなんない店が何でパニッシュしてんだよ…それに。」
「ライトニングパニッシャー」は3つ以上のチェーンが組まれた時に相手の場のカード1枚を破壊するモンスターである。と、言う事は…。
「注文したら破壊されちまうじゃねェか!」
――独りでツッコんでいても仕方が無い。そう言い聞かせて我に帰り、真剣な面持ちで考える。問題は一つだ。そう――
「ここのピザが美味いかどうか、だな。」
先日の件では子供たちから報酬は取らないつもりだったが、既に顔見知りの孤児院のマザーがせめて形だけでも、と言う事でいくらか報酬を貰っていた。
そこで葉鐘は、折角なので「ピザパニッシュ」のピザをその日の昼食にする事に決めたのだった。
「あ、もしもし。『ピリ辛ラヴァルシーフードピザ』のMサイズを一つの…コーラのセットを。あ、それからチーズ増量で。住所は――。」
手早く注文を済ませると、ソファに腰掛けてデュエルディスクからデッキを抜き、調整しながらピザを待つことにした。
「<真紅眼の飛竜>…この間は機械族って情報があったから火力増強の目的で<真紅眼の闇竜>のサポートに投入したが…。」
デッキは先日、デュエルギャングの残党と闘った時のままになっていた。
普段の葉鐘は真紅眼シリーズをデッキに投入していなかったが、機械族の攻撃力を考慮して墓地のドラゴン族の数によって攻撃力を上昇させる<真紅眼の闇竜>を投入していた――尤も、活躍する事は無かったのだが。
「やっぱ、攻撃力に関しては<メタル化・魔法反射装甲>のお陰でそこまで心配は要らなかったな。」
デッキを普段の形に調整し終えると、ふと時計を見やった。注文を受けてから調理するとしても、遅い。
何かあったのだろうか?そう思った時、一つ重大なミスを犯していたことに気が付いた。
「しまった…部屋番号伝え忘れた…!」
慌ててアパートの外へ飛び出すと、配送用のボックスのついたバイク――配送用と言うにはやや"尖り過ぎている"フォルムを見るに、D-ホイールに配送ボックスをつけたものだろうか――と、立ち尽くす女性の姿が見えた。
やれやれ、俺としたことがとんだミスだ。
そう独り語ちて近づいた葉鐘だったが、この時葉鐘は2つ目のミスを犯していることに気付いていなかった。
「あー、君、ひょっとして『ピザパニッシュ』の?」
「はい、そうですが…あっ、注文された方ですか?」
「良かった。いや、済まないな。部屋番号を告げ忘れちまって…。」
「いえいえ、ご注文は『ピリ辛ラヴァルシーフード』のMサイズ、コーラセットでお間違いないですか?」
「ああ。1100円だったな。すぐに――」
そこでハッと気が付く。――2つ目のミスに。
「あー…重ね重ね済まないんだが…。」
「…?」
葉鐘は今日は災難だ、と言わんばかりに肩を竦めてこう言った。
「部屋に…財布を忘れた。」
その40秒後、天原探偵事務所に二人は居た。
すぐに取って来ると伝えたのだが、それなら部屋まで、と言う事であった。
「いやあ、本当に済まない。全く暇が続くと気が抜けちまって仕方ねェ…。」
ピザの代金1100円を渡しながらぼやく。
「いえ、お気になさらずに~。それよりあれって――」
ピザの配達員が指差した先には、今しがた調整していたデッキがあった。
「デュエル、するんですか?」
「ん、ああ…。」
そういえば、配達に使われていたバイクにはどう見ても配達用の為とは思えない装備が搭載されていた。
と、言う事は。
「あのバイク…と言うよりはD-ホイールか。配送用のボックスこそ付いていたが…君のD-ホイールか?」
「あ、分かります?流石探偵さんですね~。」
嬉しそうにそう答える。成る程、この態度を見るに中々デュエルが好きなようだ。
「まあね。見た所整備も良く行き届いているようだし…良いマシンだ。名前は?」
「デスアミー号です。」
「…え?」
思わず聞き返した。デス…なんだ?今何と言った?
配達員はにっこりと微笑んで、再びこう返した。
「だから、デスアミー号、ですっ。」
とてもハイセンスなネーミングだった。
少なくとも、葉鐘が理解できない程度には。
「で、デスアミー号、か・・・いいんじゃないかな、うん。凄く…独創的で。」
「でしょう?毎日磨いてあげてるんですよ~。」
「そ、そうか…。」
「あっ、所でここのアパートにもD-ホイールが停めてありましたけど…。」
「ああ、俺の『クローム・ハウンド』だ。因みに便利なサイドカー付き。」
「へぇ~…クローム・ハウンドかあ…ん?どこかで聞いたような、聞いてないような…。」
「ん?ああ…最近仕事でよく乗っているからな…その所為じゃないか?」
「そうですかね?ま、いっか。」
葉鐘は内心ドキリとした。
――そうだ。嘗て俺はいつもこのクローム・ハウンドと共にデュエルを行い、そしてあの日――。
昔の事を思い出していた矢先、ふと疑問が浮かんだ。
「ところで君…、戻らなくていいのか?店に?」
「あっ…。」
その数時間後、葉鐘はクローム・ハウンドからサイドカーを外し、調整を行っていた。
帰り際に、あの配達員と仕事の後ライディング・デュエルを行う約束をしていた為である。
「ココの所スタンディングばかりだったからな…しかし久々にこいつでデュエルする事になるとはな。腕が落ちていなければいいが…。」
昔こそ毎日のように愛車と共にデュエルを繰り広げていたが、最近はライディング・デュエルとはすっかりご無沙汰である。
気まぐれとは言え、久々のライディング・デュエルだ。昔の事は気にせず、今日はデュエルを楽しむとしよう。
「これでよし、と。」
最後の調整を終えると、ライディング用ジャケットスーツのファスナーを閉め、市民サーキットへと愛車を走らせた。
暫くしてサーキットに着いたが、あの店員の姿は見えない。
どれくらいで着いたのか、と時計を見やる――少々早すぎたようだ。
「葉鐘、か。」
不意に声をかけられ振り向くと、長髪の男が立っている。
――失敗った。葉鐘はそう思った。
できれば昔の知り合いには会いたくなかったのだが、会ってしまった以上仕方がない。
「お久し振りです、リョウさん。」
「ああ。また――走る気に?」
「いや、今回は…只の気まぐれですよ。」
「フ…そうか。まあ、楽しみにしている。お前のデュエルは見ていて飽きないからな。その内気が向いたら…俺の所にも顔を出してくれ。」
そういうと男は踵を返して去っていった。
正直な話、顔など出せるわけが無い。
――今は、まだ。
5分後。店員のデスアミー号が姿を現した。
改めてハイセンスだ。
「遅くなりました、店の片づけが残ってて。」
「いや、まだ予定の10分前だし十分だ。早速だがルールを確認するぞ――。」
今回のルールはスピード・ワールドを使用しないハーフ・スタンダード形式。
先行は通常のライディング・デュエルと同じく第1コーナーを制したものに与えられ、ライフが0になった場合、特殊条件を満たした場合、ドローすべきタイミングでドローできなかった場合に加え、3週遅れとなった場合に敗北となる。またD-ホイールのトラブルでデュエルの続行が不可能となった場合も含まれる。これに加えて大会指定のゴールを先に抜けた方が勝ち、と言うオプションが設けられる事もあったが、今回は見送られた。
このルールはライディング・デュエルの黎明期から主に使用され、現在のスピード・ワールドを使用するルールが制定される以前は公式ルールとして採用されていた。
葉鐘にとっては馴染み深いルールであると同時に――過去のデュエルを思い出させるものであった。
「そう言えば名前を聞いていなかったな。俺は天原葉鐘―まあ、注文の時に聞いているとは思うが。」
「あ、リラ・バーネットです。宜しくお願いしますっ!」
「リラか、宜しくな。では…行くぞ!」
「ライディング・デュエル、アクセラレーション!」
「ライディング・デュエル、アクセラレーション!」
2台のマシンが唸りを上げて疾り出す。
コースは典型的な楕円形サーキット。
ならばファーストコーナーもトップスピードのままアウトからアウトへ抜ける事は容易い――!
「先行は貰ったぞ、俺のターン!ドロー!」
相手のデッキが分からない以上、迂闊な攻めはする訳には行くまい。ならば。
「俺はモンスターをセットし、リバースカードを1枚伏せてターンエンド!」
「私のターン、ドロー!<魔道戦士ブレイカー>を召喚!<魔道戦士ブレイカー>の誘発効果、このモンスターに魔力カウンターを1つ置きます。」
「<魔道戦士ブレイカー>…伏せカードキラーか…。」
伏せていたカードは<トラップ・スタン>、罠を無効化する以外には何の効果もない。このモンスターを止める手立てはない。
「<魔道戦士ブレイカー>の効果発動、伏せカードを破壊します!」
「いいだろう、<トラップ・スタン>は破壊だ。」
「バトル、<魔道戦士ブレイカー>で守備モンスターを攻撃!」
「守備モンスターは<ミンゲイドラゴン>だ…撃破される。」
守備モンスター、<ミンゲイドラゴン>撃破。
LP変化なし。
「メインフェイズ2、カードを2枚伏せてターンエンド!」
「俺のターン!ドロー!」
<ミンゲイドラゴン>はスタンバイフェイズにモンスターが居ない場合墓地から特殊召喚でき、ドラゴン族をアドバンス召喚する場合に限り2体分のリリースにできるモンスターだが、蘇生した場合ゲームから除外されてしまう。
手札に最上級ドラゴンが存在しない今、ここは温存しておくべきか。
それよりも、相手の出鼻を挫く…!
「メインフェイズ、手札から<コアキメイル・ドラゴ>を召喚。このカードが存在する限り、お互いに光、または闇属性モンスターの特殊召喚は許されない!」
罠の発動はなし、か。攻撃反応型の可能性もあるが…ここは臆さず攻める!
「バトル、<コアキメイル・ドラゴ>で<魔道戦士ブレイカー>を攻撃!」
「永続罠発動、<デモンズ・チェーン>!このカードの対象となったモンスターは攻撃と表示形式の変更が出来ず、効果を無効化されます!」
「何だと…!」
失敗った…単に攻撃を封じるだけなら兎も角、これでは特殊召喚封じの効果も発揮されない…!
「クッ、ターンエンドだ。」
「私のターン、ドロー!<魔道戦士ブレイカー>を手札に戻し、<A・ジェネクス・バードマン>を特殊召喚!」
「チューナーモンスター…不味い、な…!」
コアキメイル・ドラゴによって本来光・闇属性のモンスターの特殊召喚はできないが、<デモンズ・チェーン>で無効化されていてはその効果も無意味だ。更に呼び出した<A・ジェネクス・バードマン>はチューナーモンスター。強力なシンクロモンスターを呼び出されることになる…先ほどの無理な攻めでペースを握られてしまったか…?
「更に手札から<霞の谷のファルコン>を召喚!バトルフェイズ、<霞の谷のファルコン>は攻撃宣言時、手札にカードを戻す必要があります。<デモンズ・チェーン>を手札に戻し、<コアキメイル・ドラゴ>を攻撃!」
<コアキメイル・ドラゴ>撃破。
葉鐘LP 8000→7900
「クッ…!」
「更に<A・ジェネクス・バードマン>でダイレクトアタック!」
<A・ジェネクス・バードマン>攻撃力1400
葉鐘LP 7900→6500
車体がガタガタと揺れる。だが、この程度では幸い走行に問題はない。
「レベル4<霞の谷のファルコン>に、レベル3<A・ジェネクス・バードマン>をチューニング!」
「来るか…シンクロモンスター…!」
「疾風を纏いし雷よ、嵐となりて敵を穿て!シンクロ召喚!来て、<霞の谷の雷神鬼>!」
<霞の谷の雷神鬼>。2600の攻撃力を、好きなタイミングで1枚カードを手札に戻すことで更に500上昇させると言うトリッキーなモンスターだ。ここまで早くエース級を出されるとは…力量を測り損ねた――と言うよりは単純に侮っていたか。
「カードを1枚伏せてターンエンドです。」
「…面白ぇ、行くぜ!俺のターン、ドロー!」
…来たか、俺のエースモンスター…!
「スタンバイフェイズ、<ミンゲイドラゴン>を墓地から復活させる。但し、このカードがフィールドを離れた場合、ゲームから除外される!」
「そうは行きませんよ!永続罠<デモンズ・チェーン>!ダブルコスト能力を無効化です!」
「甘い!速攻魔法、<月の書>を発動!<ミンゲイドラゴン>は裏側守備表示となる!これにより<デモンズ・チェーン>の効果を受けず、更に完全蘇生となる為に除外もされない!」
「そんな…読まれた…!?」
相手は雷であり、風である。即ち嵐の化身。
良いだろう。嵐の終わりを告げるのは――陽光である。
「行くぞ、<ミンゲイドラゴン>を2体分のリリースとし…現れろ!<フェルグラントドラゴン>!更に永続魔法、<一族の結束>を発動!墓地のモンスターがすべて同じ種族の場合、フィールド上の同属モンスターの攻撃力は800ポイントアップする!」
<フェルグラントドラゴン>
攻撃力2800→3600
「バトル、<フェルグラントドラゴン>で<霞の谷の雷神鬼>を攻撃!」
「くうっ、<霞の谷の雷神鬼>の効果発動!<デモンズ・チェーン>を回収して攻撃力を500ポイントアップ!」
<霞の谷の雷神鬼>
攻撃力2600→3100
<霞の谷の雷神鬼>撃破。
リラLP 8000→7500
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
「私のターン、ドロー!」
攻撃力3600のフェルグラントドラゴン、更に墓地のミンゲイドラゴンは容易に蘇生が可能…そう簡単に突破は出来まい。
守備を重ねてきた所で俺のデッキには貫通効果を持つ<ランス・リンドブルム>が3枚…決まったか。
「私は手札から<闇の誘惑>を発動!デッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外します!私は2枚ドローし…<魔道戦士ブレイカー>を除外!」
ここで手札を増強だと…?一体何をする心算だ。
「行きます…手札から<終末の騎士>を召喚!召喚に成功した時、デッキから<ライトニングパニッシャー>を墓地へ送ります!」
「デッキから墓地へ…?まさか…!」
「魔法カード、<死者蘇生>!墓地の<ライトニングパニッシャー>を特殊召喚!」
<ライトニングパニッシャー>…同名カードを含まないチェーンが3つ以上組まれた場合にカード1枚を破壊するモンスター…。だが伏せカードは1枚、チェーンが組めなければ<フェルグラントドラゴン>はやはり突破できない。
"組めなければ"。
「終末の騎士を手札に戻し、<A・ジェネクス・バードマン>を特殊召喚!更に、永続罠<血の代償>!ライフを500払い、手札の<終末の騎士>を通常召喚します!」
リラLP
7500→7000
これで2チェーン。――まさか、な。
「そして手札から<D.D.クロウ>の効果発動!墓地の<ミンゲイドラゴン>を除外!」
「何…!?」
「そしてこれによってチェーンが3つ詰まれました…<ライトニングパニッシャー>のモンスター効果!<フェルグラントドラゴン>を破壊します!」
「クッ・・・読みが甘かったか…済まない、<フェルグラントドラゴン>・・・!」
「バトルフェイズ!<A・ジェネクス・バードマン>の攻撃!」
<A・ジェネクス・バードマン>攻撃力1400
葉鐘LP6500→5100
「更に<終末の騎士>の攻撃!」
「クウッ・・・!」
<終末の騎士>攻撃力1400
葉鐘LP5100→3700
「<ライトニングパニッシャー>の攻撃!」
「うおおおおっ!?」
<ライトニングパニッシャー>攻撃力2600
葉鐘LP3700→1100
大きく煽られ、車体が衝撃で揺らぐ。
流石にダメージを受けすぎたか。タイヤが一瞬ロックし、スピンしそうになる。
「チッ…アクセルを10%カット、スタイビライザーを手動制御…!」
手早くコンソールを操作し、何とか持ちこたえた。
――久々だった。ライディングデュエルで、こんなに熱くなれたのは。
「カードを1枚伏せてターンエンドです。」
「――ありがとう。」
「え?」
「こんなに楽しいライディング・デュエルは…久しぶりだ。正直、忘れてたぜ。」
「そんな、大袈裟ですって…それに、葉鐘さん、負けそうなんですよ?」
「あァ。だからこそ――勝ちたくなる性分でな!」
万感を込めて、最後のカードに賭ける。
伏せカードはほぼ間違いなく<デモンズ・チェーン>…打開して勝つためには、あのカードしかない…!
「俺の…ターン…!」
――引き当てた…最後のパーツを…!
「相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合、<バイス・ドラゴン>はステータスを半分にして手札から特殊召喚できる!現れろ、<バイス・ドラゴン>!」
<バイス・ドラゴン>最終攻撃力
攻撃力2000/2+800=1800
守備力2400/2=1200
「そして、手札から<スタンピング・クラッシュ>を発動!ドラゴン族モンスターが存在する場合、相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊し、500ポイントのダメージを与える!伏せカードを粉砕!」
「くうっ、<デモンズ・チェーン>が…!」
<スタンピング・クラッシュ>効果により500ダメージ。
リラLP
7000→6500
「更に罠カード発動!<バーストブレス>!フィールド上のドラゴン族モンスターをリリースし、その攻撃力以下の守備力の表側表示モンスターを一掃する!」
「なっ…!?」
「今、リリースした<バイス・ドラゴン>の攻撃力は1800…従って!<バーストブレス>はフィールド上のモンスターを遍く焼き尽くす!」
「<ライトニングパニッシャー>がこうも簡単に…!」
「そして手札から<ランス・リンドブルム>を召喚!<一族の結束>により、攻撃力を800ポイントアップさせる!」
<ランス・リンドブルム>最終攻撃力
攻撃力1800→2600
「コイツがジョーカーだ…!魔法カード、<死者蘇生>!甦れ、<フェルグラントドラゴン>!更に<フェルグラントドラゴン>は死の淵から蘇った時、墓地のドラゴン族1体のレベルの200倍、攻撃力をアップさせる!よってその攻撃力を<バイス・ドラゴン>のレベルの200倍、即ち1000ポイントアップさせる!」
「1000…ポイント…!?」
<フェルグラントドラゴン>最終攻撃力
2800+800+1000=4600
「バトルフェイズ!<ランス・リンドブルム>でダイレクトアタック!」
「ううっ…!」
<ランス・リンドブルム>攻撃力2600
リラLP6500→3900
「これが最後だ…<フェルグラントドラゴン>でダイレクトアタック!」
<フェルグラントドラゴン>攻撃力4600
リラLP3900→0
――数分後。市民サーキット入り口。
「はー、やられました…。」
「いや、先に雷神鬼を倒せていなかったら危なかったぜ?」
「まあ、そうなんですけど…<終末の騎士>を手元に残しておけば攻撃も防げましたし…。」
「ま、俺も最後に<スタンピング・クラッシュ>を引けなかったら手詰まりだったしな。」
「ん~…。」
リラは何かしら考え込んでいるようだった。先のデュエルで改善点でも上がったのだろうか?
「どうした?」
「あ、あの…迷惑じゃなかったらなんですけど、これから時々デュエルしてもらってもいいですか?」
「それは構わんが…周りに居ないのか?」
「仕事の時間とか有りますから…。」
「そうか…。」
それは構わなかった。しかし、今日のようにサーキットに顔を出せば昔の知り合いに会う事も少なくあるまい。
そうなると少しばかり面倒だが――これだけ面白いデュエルができる機会を減らす事に比べれば、大したリスクではなかった。
「よし、分かった。いつも居るとは限らないが…事務所に連絡をくれ。」
「はい、ありがとうございますっ。…あ、もうこんな時間…そろそろ帰りますね、またよろしくお願いします!」
「ああ。宜しくな。」
去っていくデスアミー号を見送ると、葉鐘はゆっくりと振り返った。
「――オフィシャルな場に戻るって訳じゃないんですがね…。」
其処にはサーキットに着いた時に話した長髪の男が立っていた。
「気付いていたか。流石は探偵だな?」
「まァ…あれから結構経ちますからね…。」
「俺としては何時になっても構わんが…少なくとも俺が生きている内に来て貰わないと、困るだろう。お前も――お前の"アーキタイプデッキ"、そして"
ノクターン・ドラゴン"も…。」
「――いずれ、行きますよ。」
「そうか。…引き止める形になって済まなかったな。また会おう。」
そういい残すと男は去っていった。
その背中を見つめながら、葉鐘は内心穏やかではなかった。
――分かっている。何時までも放って置く訳には行かない。だが…。
だが今は、その時ではなかった。
葉鐘にとっては。
Case2・END
最終更新:2011年12月09日 05:20