短編
ここは俺の家の中
目の前にはビクビクしている一匹のぱちゅりーが居る
「ま、そういう事だから俺の実験的な何かに付き合ってほしいんだな。これが」
恐怖心を和らげるようフレンドリーに話しかけてみる、が
ぱちゅりーは話を聞いているのか聞いてないのか、怯えた顔でプルプル震えているだけだ
まあ突然、家族と一緒に拉致られてここまで来たんだから恐怖心を持たない方がおかしいわけではある
ちなみにその家族(ぎゃーぎゃー煩いまりさと子
ゆっくりども)は、透明な箱に押し込んで物置の中である
しっかし、物置に押し込んでから10分。よくあんなに騒ぎ続けられるなぁあいつ等
「む、むきゅ~……お、おにいさんはぱちゅたちにひどいことしないの?」
ボーっとしながら1時間
微かに物置から聞こえてくる声も聞こえなくなった頃
やっと落ち着いたのだろうか、ぱちゅりーがぼそぼそ喋りだした
「ああ勿論、俺のお願いを聞いてくれさえすれば何もしないよ」
「ほんとにほんとなの?にんげんさんはしんらいできないわ」
自分の立場が分かってないのかねこのぱちゅりーは
まあそれで怒るほど狭量でもないが
「俺の魂を賭けて誓うよ、君の家族には何もしない指一本触れやしない」
どうよこの信頼感溢れる満面の笑顔
と思ったら、ぱちゅりーの顔が引き攣ったよ
何かムカつくがまあ良いや
「それでやって欲しい事は―――――」
――――――――――
一ヶ月後
「むきゅっ!これでおにいさんのおねがいはぜんぶきいたわよ!はやくゆっくりしながらぱちゅのかぞくをかえしてね!」
人間なら顎に当たる部分を踏ん反り返らせるぱちゅりー。何とも得意気である
ひ弱なぱちゅりー程度にでも出来る事をやらせたから当然だが
「おお!さすが森の賢者って言われるだけはあるな。俺の頼み事を聞いてくれてありがとうぱりゅりー!」
俺の一言に照れたのか。むきゅんと赤くなってぐねぐね体を曲げるぱちゅりー
きめぇ
さて、それじゃ本題に移ろうか
「約束通り、君の家族を連れて来たよ」
「む?むきゅ?」
俺の手の中にある物を見て怪訝な顔をするぱちゅりー、そりゃ怪訝な顔もするだろう
透明な箱に入ってる物は、とんがり帽子が付いた干乾びた饅頭一個だけ
この一ヶ月の間、ぱちゅりーがぼそぼそと呟いてた、綺麗なまりさや可愛い赤ちゃん達の影も形も無いのである
「どうした?一ヶ月ぶりのご対面だぞ?もっと嬉しそうな顔はしないのか?」
「だ、だってそのはこさんのなかには、ぱちゅのかぞくがいないわ……むぎゅっ!?」
ぱちゅ種の中でも結構頭の良い固体だな、俺が説明するまでもなく気付いてくれた
「この干乾びた饅頭は……大きさ的に見て君の旦那だったまりさだね」
透明な箱の中から、故まりさ現干乾びた饅頭、を取り出してわなわな震えるぱちゅりーの目の前に置く
他に干乾びた饅頭が存在しない、って事は共食いしたようだ
一ヶ月も放置したから当然っちゃあ当然だが
「む、むぎゅっ!げぶっ!」
わなわな震えていたと思ったらこれだよ
口から大量にクリームを吐き出して痙攣するぱちゅりー
成し遂げる事が困難な(だとぱちゅりーは思っていた)一ヶ月もの試練に耐え抜いた結果がこれだよ!
だもんな
「う``う``ぞづぎぃ``」
「俺が嘘を突いた?どこが?」
「ばぢゅりーのまりざどあがぢゃんをごろじだでじょおおぉぉぉ」
「何を言ってるんだ?俺は約束を完璧に守ったぞ?」
「うぞだあああああ」
「おいおい、俺はぱちゅりーの家族には何もしてないぞ?」
「でもごろじだじゃないいぃ…………むぎゅっ」
約束を完全に守ったのに酷い言われ様だ
ぱちゅりーは何が気に入らないのだろう?俺には全く分からない
やはり、ゆっくりと人間は絶対に分かり合えないんだろうなぁ。悲しい事だ
完全に息が止まったぱちゅりーの亡骸を前にしながら俺は涙を流した
最終更新:2009年02月13日 01:24