ややネチョグロ注意
――もう我慢ができないの。今夜、貴女を。
「いただきまーーす!」
「はい、どうぞ。
ゆっくり召し上がれ」
熱々のニシンのパイをほおばるゆっくり魔理沙。それを見つめるアリスの優しい笑顔。
彼女が森で見つけたゆっくり魔理沙を飼い始めてから一年。
ゆっくり魔理沙は自分に毎日の食事と温かな寝床、そしてゆっくりとした時間を提供してくれるアリスを心から信頼していた。
「うっめ、これめっちゃうっめ!」
「喜んでもらえて良かった、でもそんなに慌てて食べなくてもいいわ。まだ沢山作ってあるの」
「たくさん!?じゃあれいむとパチュリーにもたべさせてあげてね!」
「魔理沙がそう言うのなら、あの子たちにもご馳走してあげなくちゃいけないわね。いいわ、明日の夕食にはあの二人も誘ってあげなさい」
「やったあー!みんなでゆっくりしようね!」
「ええ。みんなでゆっくりしましょう」
アリスの優しげな声にゆっくり魔理沙の頬がゆるむ。
ゆっくりフランの群れに襲われ全ての家族を失って以来、ずっと一人寂しく森をさまよっていたあの頃に較べて、今の自分はどれほど恵まれているんだろう。
もう一人じゃない、友達がいる。優しいお姉さんがいる。
ゆっくり魔理沙は自らに与えられた幸福に感謝すると、更にパイをほおばった。
「うっめ、これめっちゃうっめ!」
「もう魔理沙ったら。ほら、顔にパイがくっついてるわよ」
「ゆっ、ゆー?」
「上海、魔理沙の顔を拭いてあげて」
「シャンハーイ」
「ゆーっ、くすぐったいよ!ゆっくりふいてね!!」
青く深い魔女の森に、楽しげな笑い声が響き渡っていた。
「あのね、魔理沙」
食事を終え、食後のお茶を楽しんでいる最中にアリスが切り出す。
「ゆ?」
「あのね、今日は魔理沙にお願いがあるの」
「なあに?まりさ、おねえさんのいうことならなんでもきくよ!」
「まぁ嬉しい。それじゃあ、こっちに来てくれるかしら」
そう言われたのを聞くと、ゆっくり魔理沙はテーブルの上をゆっくりと跳ね、アリスの膝にちょこんと乗っかかる。
「魔理沙が家に来てくれて、私は本当に幸せ者ね。あの日、森で貴女と出会えてなければ、私は今もきっと一人ぼっちだったわ」
「うん…まりさもおねえさんにあえてよかった!おねえさんはひとりじゃないよ!まりさがいっしょだよ!!まいにちゆっくりできてたのしいよ!」
どうして。この子はどうしてこんなにも……もう駄目。我慢の限界なの。
溢れる気持ちを抑えきれず、アリスは頬を染めつつゆっくり魔理沙を自分の目の前に抱き上げた。
「あのね魔理沙、お願いというのはね」
「うん……ゆうううう!?」
突然の出来事に驚きを隠さないゆっくり魔理沙、アリスはゆっくり魔理沙の口や頬に何度もその柔らかな唇を押し当てながら恍惚の表情を浮かべてつぶやく。
「ああ、魔理沙。本当に、ぷはっ、本当に大好きなの」
「ゆ"っ"、ゆ"う"う"う"う"?」
「食べちゃいたいくらいに。好きなの。だからね」
「ゆ"う"う"あ"う"っう"う""あ""う"う"あ"あ"あ"!!!!い"だい"い"い"い"い"い"!!!!!」
アリスは素早くゆっくり魔理沙の帽子を外すと、そのこめかみを一口大に噛みちぎる。
ふっくらとした弾力が心地よい表皮。滑らかで甘く芳醇な餡。
ゆっくり魔理沙を噛みしめては味わうごとに、アリスはまるで絶頂にも似た快楽に身を震わせる。
「や"め"で!!ゆ"っ"く"り"や"め"て"え"え"え"え"え"え"!!!どう"じでこ"ん"な"こ"と"ずる"の"お"お"お"お"お"お"!!??」
「どうして…っ?貴女を、んっ、愛しているからよ、魔理沙…」
こめかみを飲み込むと、次に頬を噛みちぎる。
生きながらに食われる恐怖に震え、泣き叫ぶゆっくり魔理沙の声や表情が、アリスの感覚をより鋭敏にする。
魔理沙がこんなにも美味しいなんて。
本来であれば今夜ゆっくり魔理沙を食べ尽くすつもりはなかった。
何日にも何週間にも分けて、ゆっくりと魔理沙の全てを味わうつもりだった。
ゆっくりと魔理沙と身も心も一つになる過程を楽しむつもりだった。
しかし、この熱く甘い誘惑は七色の人形遣いにとって余りにも抗いがたい。身を焦がす激情は、ゆっくり魔理沙を食べ尽くすまで収まりそうにない。
「い"だい"よ"お"お"お"お"!!!お"ね"え"さ"ん"、ま"り"さ"を"だべな"い"でえ"え"え"!!!!」
「どんな顔よりも、泣いている貴女が一番素敵よ。もっと、もっと泣いて欲しいの。叫んで欲しいの」
透き通った白い肌に、うっすらと青白い血管が浮き出るほどに腕に力を込め、両手でゆっくり魔理沙を強く握りしめる。
指先はゆっくり魔理沙の表皮に深々と突き刺さり、食い込んだ指先にはゆっくり魔理沙の中からはみ出した艶々とした餡がへばりつく。
「もっと、んむっ」
頭頂を噛みちぎる。
「い"や"だあ"あ"あ"あ"!!ゆ"っ"ぐり"じだい"よ"お"お"お"お"お"!!!!!」
「もっ、とっ、可愛い声を聞かせて」
鼻を噛みちぎる。
「ばめ"でお"べえざん"!!!!!ぶっ!!ぶっ"ぐりばべでえ"え"え"え"え"え"え"」
「素敵。素敵よ、魔理沙」
右目を噛みちぎる。
「だずげでえ"え"え"え"え"!!!!れ"い"む"う"う"う"う"う"!!!!ばじゅ"り"い"い"い"い"!!!!!!!」
アリスの動きがぴたりと止まり、ゆっくり魔理沙を握る両手から力が抜ける。
「……霊夢?パチュリー……?」
「ひっぐ…れ"いむ"だぢど……ひっぐ、ゆ"っぐりじだいょう」
「………そう。魔理沙はあの子たちとゆっくりしたいのね」
「ゆ"っ"、ゆ"っ"ぐり"びばい……ゆ"っ"ぐり"じ…だい"……ゆ"っ"ぐり"………じ……」
虚ろな表情でうわごとのようにゆっくりしたい、と繰り返すゆっくり魔理沙。体中から餡があふれ出し、まともに言葉を発することも難しい。
朦朧とした意識の中、それでも、ゆっくり魔理沙は友人たちとのゆっくりとした時間をひたすらに望み続けた。
「分かったわ、魔理沙。あなたがそう言うなら、みんなでゆっくりさせてあげる」
「…ゆ"っ"…ぶり"……」
「霊夢も、パチュリーも。あなたと一緒に、ずっとずっとゆっくり出来る場所に連れて行ってあげる。約束するわ」
「ぼ……どに…」
「本当よ。他ならぬ貴女のお願いだもの」
「ゆ"っ"ぐり"……でぎる"…の?」
「必ず出来るわ。まずは」
「魔理沙から、連れて行ってあげる」
そう口にするアリスの表情は、とても優しく、慈愛に満ちたものだった。
「……ふぅ。いくら魔理沙のお願いだからといっても、さすがに少しきつかったわね」
食事を終え、食後のお茶を楽しみながら独りごちるアリス。
薔薇のジャムを浮かべた紅茶が、豊かな香りを部屋いっぱいに広げている。
「ホウラーイ」
「ああ、丁度いい所に来たわ。このお皿も片付けておいてくれるかしら」
「ホウラーイ」
「お皿は重ねて運んじゃ駄目よ、蓬莱。それと、リボンと帽子は外で燃してしまってちょうだい」
それにしても、ひどい味だった。同じ種族だというのに、こうも魔理沙とは違うものなのかしら。
決して好みではないどころか、アリスにとっては吐き気さえ覚えるような味と匂いに耐えながら、
一度に二つの大きな饅頭を食べて、すっかり膨れてしまったお腹をさすりながら嘆息する。
昨夜に食べたゆっくり魔理沙のような最上の味なら毎日食べても飽きはしないが、汚らわしい巫女と日陰の女を続けて食べたのでは食事の楽しみもあったものではない。
明日の夕食は、いつもに増して豪勢なものを楽しまなくては。
そう決意したアリスの脳裏に、ある一つのアイデアがよぎる。
ゆっくり魔理沙でさえ、あんなにも美味しかったんですもの。本物の魔理沙は、いったいどれくらい美味しいのかしら。
愛しい愛しい魔法使いの味を空想しながら、アリスは再び自分のお腹をさすりつつ小さく呟く。
「みんな、私の中で、ゆっくりしていってね」
食べちゃいたいくらい可愛い、って言葉が幻想入りしてそうだと思って書いた。反省はしていない。
最終更新:2008年09月14日 10:52