竹林の奥に、ひっそりと佇む、月から幻想郷へと移り住んだ者達が住む永楽亭。
その地下には、和風の屋敷には不釣り合いな内装の研究室がある。その部屋の中で机に座った、看護師のような服を着た銀髪の美し
い女性が片肘を突きながらガラスケースに入った何かを見つめていた。
「おねえさん!おめめがいたいよ!おうちかえる!」
大きめのガラスケースに入っているのは、今や幻想郷でお馴染みとなった。
ゆっくりれいむだった。
しかし、何やら様子がおかしい。
「なにもみえないよ!」
ゆっくりれいむの両の眼球には、手術用のメスが深々と突き刺さっており。その眼からは、涙と餡子が混ざった液体が流れている。
ガラスケースの中には、その液体が飛び散った跡があり、
ゆっくりれいむが痛みで暴れていた痕跡が窺える。
「あらあら、何も見えないのね?それじゃあ、お友達の姿も見えないし、お花見もできないわね?」
微笑みながら、
ゆっくりれいむに語りかける銀髪の女性は、“月の頭脳”こと、八意永琳だ。
「
ゆっくりできないよ!」
体を左右に揺らしながら訴えるゆっくり霊夢。
「うふふ、私はとっても
ゆっくりしてるわよ?」
ニコリっとする永琳。その優しい笑顔で何人の男性を虜にしてきたのか。
「
ゆっくりさせてよーっ!!!」
泣き叫ぶ
ゆっくりれいむ。
「
ゆっくりれいむちゃん、安心して?私はお医者さんなのよ?こっちにいらっしゃい?あなたのお目々を治してあげるわ。」
永琳がそう言うと、少し間をもった後、
ゆっくりれいむは声のする前方へ恐る恐る向かう。
ゴツッ
「ゆ゛ぐぅぅぅううぅぅっ!!!」
しかし、
ゆっくりれいむの前には当然、ガラスケースの面が立ちはだかっている。両目のメスはより深く突き刺ささる。
実は、こんなやり取りがもう五回程続いている。
激痛に泣き叫ぶ
ゆっくりれいむ。
「あら、ごめんなさい。ケースの扉を開けるのを忘れていたわ。ほら、もうこっちに来れるわよ。」
もちろん、そんな扉は無い。
「もうやだ!おばさんはうそつきだよ!!!」
さすがに知能の低い
ゆっくりでも、こう何度も騙されていたら少しは学習するようだ。
しかし、
ゆっくりれいむがせめてもの抵抗で発した。その単語がいけなかった。
「お・ば・さ・ん…?」
突如、八意永琳の顔が豹変した。顎を思いっきり横にずらしながら歯ぎしりし、眉毛は釣り上がり、目線は斜め上に向かっている。
顔中にシワが走り、血管が浮き出る。
「だ・れ・が、おばさんじゃこのちくしょうがあああぁあああぁあぁぁぁっ!」
永琳は凄まじい勢いで席を立つと、棚から濃硫酸の入ったビンを取り出し、すぐさま元の席にかけ戻り、
ゆっくりれいむの
入ったガラスケースの上部の扉を開け、ドボドボと濃硫酸をそそぎ込んだ。
「ゆぅーーーっ!!!」
どんどん溶けていく、
ゆっくりれいむ。
「わしはまだまだティーンエイジャーじゃああああああっ!!!」
発狂しながら濃硫酸を注ぎ続ける永琳。
「[[ゆっくり]]ゆるしてね![[ゆっくり]]ゆるしてね!」
必死に命乞いをする
ゆっくりれいむ。
「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ……。」
しかし、
ゆっくりれいむはドロドロの液体になり、ガラスケースには饅頭のジュースが出来上がった。
「ふぅっ、ふぅっ、ふぅ……。」
肩で息をしながら、我にかえる八意永琳。
「あらいやだ、もっと時間をかけて楽しむつもりだったのに……。うどんげっ!うどんげっ!!」
「はい!何ですか師匠!!」
八意永琳の弟子、鈴仙・優曇華院・イナバが部屋へと駆けつける。
「このドロドロの汚いの、皿に分けて隣の部屋の
ゆっくりどもの餌にしておいてちょうだい。」
「はい!師匠!」
ガラスケースを抱え上げ、部屋を後にするうどんげ。
「…!」
ふと、あることに気づく八意永琳。
「あらあら…私ったら…ウフフ……。」
彼女の股は濡れていたのだ。
狂気を操る自分でさえ、師匠の持つ狂気にはかなわないだろう。
ガラスケースの中の、溶けた
ゆっくりれいむを見つめながら、うどんげはそんなことを思っていた。
今宵は新月、永楽亭の静かな夜は続いていく。
おわり
最終更新:2022年01月31日 02:40