「みんなあつまってね!!!」
大きな森の中に、大きな
ゆっくり魔理沙が住んでいた。
きれいな後ろ髪にはたくさんのリボン。
普通サイズのゆっくり達が、どこからか持ってきたのであろう紐を結んでいるのだ。
それは同時にこの魔理沙への信頼の証になっている。
「ゆゆ!! どうしたの?」
「ゆ~~~♪」
魔理沙の一声で集まってくるゆっくり達。
数多くの種類がいるが、どれもこの魔理沙の言う事を守っており、人にも襲われずにゆっくりと暮らしていた。
「そろそろ、ふゆをこすじゅんびをするじきだよ!! ことしはみんなでにんげんのおてつだいいをして、すこしたべものをわけてもらおうね!!」
魔理沙がこのように言うには訳がある。
確かに、ゆっくりと暮らしてはいるが、越冬となれば話は別、毎年数件の家族が冬を越せずに命を落としてしまうのだ。
「だから、ことしはにんげんのおてつだいをして、たべものをわけてもらおうね!!!」
これが、パチュリーやアリス達と相談して決めた今年の新しい越冬計画だった。
「ゆ!! わかったよ!!!」
「ゆっくりおてつだしいてたべものをわけてもらうよ!!!」
「ことしはみんなふゆをこせるね!!!」
そう、全てはゆっくり冬を越すため。
そのために、人間のお手伝いをしようとしているのだ。
翌日、普通サイズのパチュリーとアリスに、先に村に行ってもらった。
このサイズで突然里に行ったら、人間たちが吃驚してしまうと考えたからだ。
あくまでも、人間とはイーブンで付き合いがしたい、この魔理沙はそう考えていた。
「ゆゆ!! あしたきていいよ、っていってたよ!!!」
「むっきゅ!! みんなそれぞれちがうしごとをしてほしいから、ぜんいんつれてきてね、っていってたよ!!!」
戻ってくるなり、ひどく興奮した様子で二匹が報告をしてきた。
「ゆ!! わかったよ!! それじゃあ、あしたはみんなでいこうね!!!」
良かった。
人間達は自分達の事をキチンを認めてくれたようだ。
明日のために、何時もより早く床に就いた魔理沙は、まどろみの中でそんな事を考えていた。
――
そして、当日。
「ゆゆ!! もっときちっとしてね!!」
「ゆ!! わかったよ!!!」
魔理沙は、朝から数匹のゆっくりにお願いして自分の身なりを整えていた。
帽子の汚れを落とし、リボンを結びなおし、髪を梳く。
ちょこまかと動き回るゆっくり達を眺めながら、魔理沙はきちっと食べ物を貰おうと決意を固めた。
「ゆっくりみんなついてきてね!!!!」
「「「「ゆっくりついていくよ!!!!!」」」」
森中から集まった総勢500匹のゆっくり達。
全員を一度見まわした後に、魔理沙はゆっくりと人里に向かって進んでいった。
「ゆ~~~? おか~~しゃん、れいみゅたちなにするの?」
「にんげんのおてつだいして、たべものをわけてもらうんだよ!!!」
「まりさたちならぱぱっとできるよ!!!」
「う~~~♪ れみりゃはてんさいだどぉ~~~♪ なんでもできるどぉ~~~♪」
「むっきゅ~~♪」
「ゆゆ~~~♪」
捕食種も、被捕食種も入り混じった奇妙な一団が日が当たらない森から抜け出していった。
――
「こんにちは!! ゆっくりやってきたよ!!!」
人間の里。
そこの中心にある大きな広場にゆっくり達は通された。
魔理沙は、リーダーとしての威厳を見せようと、少しふてぶてしい顔を作って話し始める。
「まりさたちがふゆをこすしょくりょうがたりないから、にんげんのおてつだいをするかわりにすこしわけてもらえますか?」
この日のために必死で考えた文句を言い終え、人間の反応を見る。
「いいよ。それじゃあさっそくやってもらいたい仕事があるんだけど、ここからちょっと遠いから、仕事別にこのコンテナに乗ってもらえるかな?」
そこには、大きな箱が置いてあった。
一面に鉄柱が入っており、さながら小さな牢屋のようだ。
「ゆ? わかったよ!! みんな、おじさんたちのいうとおりにこのなかにのってね!!!!」
「ゆっくりわかったよ!!!」
よく意味が分からなかったが、どうやらコンテナというものに乗って仕事場に運ばれるらしい事はわかった。
魔理沙の言う事を聞き、親子、種族に分かれてドンドンコンテナに入っていく。
「う~~~♪ れみりゃはてんざいだからてきばきとできるどぉ~~♪」
一番入るのに時間がかかったれみりゃもコンテナに入り終え、男たちが荷車に載せていく。
「ゆゆ!!! おじさんたち!! まりさはなにかおしごとがないの?」
皆が楽しそうに仕事場に向かう様子を眺めながら、待ちきれないといった様子で魔理沙が尋ねる。
「お~!! あるぞ。この方が、お前に仕事があるそうだ」
「今日は。小悪魔といいます、よろしくお願いしますね」
「ゆ!! まりさもきちんとおしごとするよ!!!」
自分の前にやってきた女性に、えへんと胸を張って答える。
「そんな大したことはありませんよ。ただ、無様に泣き叫んで頂ければ結構です」
「ゆ?」
「意味がわかりませんか。じゃあ、説明するのは面倒なので簡潔にいますね」
スゥッと息を大きく吸い込んだ後に、小悪魔はコンテナに入ったゆっくりにも聞こえるように大声で魔理沙の疑問に答えた。
「コンテナに入ったゆっくりは加工場へ、あなたはここで美しい悲鳴を上げてゆっくりしてもらいます」
にこりとした笑顔とは裏腹に、言葉は強烈で、簡潔で、ゆっくり達にも十分理解できた。
「ゆーーー!!!! なんでーー!!!」
「ゆっくりだしてね!!! まりさたちはしごとをしにきたんだよ!!!」
「むっきゅーーー!! だましたね!!!!」
「うーーー!!! ざぐやにいいつげてやるどーーー!!!!!!」
「うるせーよ!!!」
村人が、竹やりで檻越しに数匹のゆっくりを突き刺す。
これくらいでは餡子を流して死ぬことはないが、ゆっくり達には十分な衝撃になる。
「ゆーーー!!! いだいーーー!! おかーーしゃーーん!!!」
「あああ!! れいむのあがじゃんになにするのーーーー!!!!!!」
「うーーー!!! いだいーーーー!!! ざぐやーー!!! どごーーーー!!!!!」
その叫び声で、あの魔理沙もようやく我にかえることができた。
「ゆゆ!!! どういうこと!!!! まりさたちはおしごとしにきたんだよ!!!! どっちもりがいはいっていしているはずだよ!!!」
「馬鹿かお前? そもそも人間とゆっくりが同等なわけないだろ? お前達をうっぱらうのが、一番のお仕事だよ!!!」
運んで行くぞ!
威勢のいい声が聞こえると、ゆっくり達を載せた荷車がゆっくりと加工場に向かって進んでいった。
「むっぎゅーーー!!!! どうしてだましたのーーー!!!!!」
「とかいはのありすはかこうじょうなんていきたくないよーーー!!!」
「まってね!!! みんなをかえしてね!!!!!」
助走をつけて運んで行く男達に突進していく魔理沙。
しかし、飛び跳ねようとした瞬間に、体に鋭い衝撃が走った。
「待ってくださいよーー。まだあなたの仕事は終わってないですよー」
原因は小悪魔。
魔理沙の体に何かを放ったようだ。
見事に、あごの部分に大きな穴がぽっかりと空いているのだから。
「ゆぎぎーーー!!!!! どうじでーーー!!!!」
何が起こったのか分からない。
ただ痛みに耐えるだけしかできない魔理沙は、顔に汗を浮かべてその痛みに耐える。
「まだまだ終わってないですよ♪」
その傷穴に手を当てて、中に弾幕を放って行く。
「いぎぎーーー!!!!!」
それが終わると今度は真っ赤に熱せられた鉄の棒を突き込む。
「あががががっが!!!!!!!!!」
ぐるぐるとかき回す。
「っゆゆ!!! やめでーー!!! すぐにやめでーーー!!!!」
「どうしたんですか? ほかのゆっくり達はきちんと仕事をしていますよ?」
「ゆ!! ごんあの!! おしごとじゃ……ないーーー!!!!」
「いいえ。私が楽しんでいるのでお仕事です♪」
「うぐぇあ!!!!」
ずたずたになった傷跡が、べりべりと大きく削られていく。
そこから、一掬いの餡子を取り出し、味見をする。
「やっぱり、まずいですね」
それっきり、傷には興味が無くなったのか、魔理沙の裏側へ回り込みごそごそとやっている。
「ゆーー? おねーーざん!! なにじでるのーーー?」
「何って? リボンを取ってるんですよ?」
「!!! やめでーーーー!!!! おりぼんどらないでーーーー!!!!!」
いまや、この魔理沙にとっては大事な形見になってしまったリボン。
それだけはどうしても死守したい。
今までで一番の大声で、自分の後ろにいる小悪魔に懇願する。
「ちょっと待ってください。……はい? なんですか?」
「まりざのおりぼんとらないでーーー!!!!!!」
「……無理ですよ。ほら、全部取っちゃいましたから♪」
「!!!!!」
「ほら。ファイヤー――♪」
「ゆゆ!!!! ああああああああああ!!!!!!」
小悪魔の両手にドサッと乗っていたリボンが一瞬で炎に包まれる。
「はぁ~い!! 強火力で一気に灰になりました~♪」
残ったのは少しの灰のみ。
その灰も、風に運ばれて消えてしまう。
「ゆゆゆ!!!! まりざのたいせつななかまをーーー!!!!! ゆっぐししねーーーー!!!!!」
ドスンドスンと傷ついた体に鞭打って小悪魔に攻撃を仕掛ける。
「ん~? なんの冗談ですか?」
「ゆ? ゆゆゆ!!!!」
突如。
見えない力で空中に浮かべられた魔理沙。
目の前には小悪魔がいる。
「ゆっくりが人間以上の存在にかなうわけないじゃないですか?」
「ゆ!!!」
「あなた達が無い知恵を絞って考えたこの方法も、人間にとっては簡単に金銭を得られるいい機会だったわけですよ♪」
それじゃあ、お終いです。
「さようなら♪」
「ゆ!! ゆゆゆーーーーー!!!!!!」
今度は、体中を引き裂かれる。
小悪魔の手ではなく、自然と引き裂かれていくのだ。
「ゆゆゆーー!! まりざはなにもわるいごとじでないのにーーー!!!!!」
ゆっくりと、本当にゆっくりと体中至るところから餡子が噴き出してくる。
「本当にご自分が悪い事をしていないと思ってるんですか?」
「ゆ? まりざなにがわるいごとしてたの? だったらあやまるがら!! ゆるじでーーー!!!」
「生きてること自体悪いことなんですよ」
「!!!!!!」
でも、あなたには感謝していますよ。
それが、魔理沙が最後に聞いた言葉だった。
「さてと。そろそろ後始末に取り掛かりましょうか」
――
ここはゆっくりの住む森の中。
大きな洞窟の中には大きなゆっくり魔理沙が居る。
「ゆ? まりさがここにすんでるまりさ?」
声を掛けられた大きな魔理沙は、その体を俊敏に動かして一言。
「そうだよ!! にんげんたちにおそわれないように、ほかのゆっくりたちにいろいろとおしえているまりさだよ!! このりぼんもほかのゆっくりがくれたんだよ!!」
「ゆゆ!! おねがい!! れいむもうかってに、にんげんのいえにはいらないから、このもりでいっしょにくらしていきたきの!!」
「ゆ!! いいよ!! もうすぐほんかくてきにゆきがふるから。ことしはここでふゆをこそうね!!」
巣の中には、数匹のゆっくりと沢山のくず野菜。
そして、この魔理沙の頭には、数個のリボンが付けられていた。
最終更新:2011年07月27日 23:37