ゆっくりいじめ系896 ハチとゆっくり


 人間じゃない生き物が主人公です。
そいつの独白とかはありませんが、それでも難点があるでしょう。
「ハチにそんな知能あるのかよwwww」とか「成長はええwwwwww」とか「毒は?wwww」とかですね……。
気になる方は多いと思われます。若干胸を悪くするような描写もあります。
また昆虫嫌いの方にはお勧めいたしません。それでもよろしければ、
色々と見逃しつつお楽しみください。


 そのハチは困惑していた。そろそろ産卵しようと決めていたが、
未来の子供達のための、あたたかな寝床を見つけあぐねていたのだ。
ようやくしつこい雨があがって、涼やかな秋の風が吹き始めたため、
『彼女』はようやく、ねぐらを抜け出したのだった。

 幻想郷の森にも、多様なハチが生息している。
大きなクマンバチから、猛毒を持つスズメバチまで。
一般にハチの巣というと、見慣れたあの形を思い起こすだろう。
人家や、樹木にぶら下がるようにしてある、球形のアレである。
しかし、このハチの場合は少し違っていた。
壮大な巣を地道につくりあげていくのではなく、
自らより弱い生き物をとらえ、毒を注射し、そこに産卵するのだ。
犠牲者はすなわち、幼虫達の寝床であり、食料でもあるのだった。
神経毒によって麻痺した獲物は、ハチの住処に引き摺りこまれ、
じわじわと、生殺しにされるというわけである。
体長2cmほどの小さなハチではあったが、捕食者としての能力には、
並外れたものがあると言ってよいだろう。

 そして、そのハチ――ジガバチは、どこからともなく漏れ聞こえてくる、
ハチにとっても「間抜け」に思われる、珍妙なリズムを感じ取った。



「ゆっゆっゆ~♪ゆっゆゆ ゆっゆ ゆっゆ~♪」
「「「わぁおかあさん、おうたがじょうず!!!」」」


 それはどうやら、巷で噂の「ゆっくり」の家族であるらしい。
『彼女』はたぐるようにして、いびつな調べの発生源へと向ってゆく。
あくまで静かなその様子は、まるでステルス戦闘機のようである。


「ゆっ!そろそろおゆうはんのじかんだね! ゆっくりごはんにしようね!!」
「「「ゆっ! おゆうはん!おゆうはん!」」」


 『彼女』がたどりついたのは、大樹の根元にかまえられた、ゆっくり一家のねぐらである。
遠巻きに、一家団欒の様子をながめ、家族構成を調べる。
親れいむとまりさが一匹ずつ、子れいむとまりさがそれぞれ三匹ずつ。
計八匹の、中規模のゆっくり家族であることがわかる。


「きょうのごはんは そとにころがってた むしさんだよ!
 まるまるふとっておいしそうだね! ゆっくりあじわってね!!」
「「「ゆ~っ!おいしそう!!!」」」
「うっめ!これメッチャうっめ!」
「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~~~!!」


 ゆっくりたちの晩餐がはじまる。あたりかまわず、食いかすをまき散らし、げっぷを連発。
小さな子供たちはまだしも、親である二匹まで、この有様である。しかし。
何より『彼女』の神経を逆撫でしたのは、昆虫にとってもクズに等しい「ゆっくり」どもに、
『彼女』の眷属たる、ハチや、たっぷりミツを湛えたミツアリたちが、既に絶命しているとは言え、
むさぼり食われ、はずかしめられているという事実であった。

 にわかに『彼女』の心の中に、「こいつらに産み付ければ一石二鳥」という名案が浮かぶ。
普段狙いをつける動物よりも、その図体は何倍も大きいというリスクこそあったが、
連中は何より、理想的な栄養源たる、餡子のかたまりなのである。
動きは極めて鈍く、昆虫に対する警戒心も果てしなく薄い。思考力も乏しい。
むしろ、いつもより「ゆっくりとした」狩りになるのではないか。
『彼女』は、見苦しい食事を続ける一家の巣穴へ、ふわりと舞い込んでいった。


「ゆっ!? おかあさん、はちさんがはいってきたよ!!」

「ゆゆゆっ、ほんとう!こんなおそくに、まよっちゃったのかな?」

「はちさん、ゆっくりしていってね!!」


 『彼女』の侵入に気付いた子まりさが、驚きの叫び声をあげる。
しかしながら、そこはゆっくりブレインである。まずはお決まりの文句をぶつけた。


「ゆぅ~っ、おうちをまちがえてるね!!」


 暢気なゆっくりたちは、どうやら揃って満腹したようで、『彼女』を捕らえるつもりはないらしい。
むしろ、一人合点して、心配する素振りをさえ見せ始める。


「はちさん、こんやはまりさたちのおうちでゆっくりしてもいいんだぜ!」
「ゆっ、そうだね!ここはれいむたちのじまんのおうちだからね!!」
「「ゆっ!おきゃくさん!まりさたちのおうちにゆっくりとまっていってね!!」」


 一日精一杯ゆっくりして、あたたかい巣に帰り、腹もふくれ、すっかり安心しきっているのだろう。
連中の言葉でいえば、まさしく「ゆっくりしている」状態だった。この状況を『彼女』は冷静に分析する。
「油断しきっているな」と。


「ゆっ、そろそろねるじかんだね!こどもたちはゆっくりおへやにもどってね!」
「ゆ~~っ、もっとはちさんとあそびたいよ!!」

 だだをこねる子ゆっくりたち。しかし、遊び疲れた様子で、渋々自室へかえってゆく。
部屋といっても、扉などない、わずかなくぼみに過ぎないものではあった。


「ゆぅぅ~っ、すりすり♪れいむのほっぺはあったかいね!!とてもゆっくりできるよ!!」
「まりさだってとってもゆっくりしてるよ!!いっしょにゆっくりできるね!!」


 そんな、あたたかいお部屋のなかで、ほっぺたをすり合わせ、今日一日の楽しかったできごとを反芻する。
こうしたスキンシップや回想も、ゆっくりたちにとって重要な作業なのである。
次第に夜はふけてゆき、まどろみ始めるゆっくり一家。
空高くにきらめく星たちが、一層輝きを増す頃、一家は完全なるノンレム睡眠のさなかにあった。
そして、狩人の時間が代わりに訪れる。積まれた枯れ枝の陰に息を潜めていた『彼女』が、静かに舞い上がる。


 翌朝。小鳥たちの騒ぐ声で、いつものように、一番最初に目覚めたのは、母れいむだった。
数日前の悪天候もどこへやら、外はすっかり、爽やかな秋のムードに包まれているようだ。
――だが。同時に母れいむは、自らの後頭部(?)に、言いようのない異物感をも感じていた。


「ゆっ!みんな、ゆっくりおきてね!きょうもはれたから、ぴくにっくにいくよ!!」
「…ゆぅ~っ」
「…ゆっ!ぴくにっく!」
「ゆゆっ、まだゆっくりねてたいよ…」


 奇妙な感覚を忘れ去ろうとするかのように、母れいむは夫と子供たちを起こしにかかる。
その反応は様々だったが、「ぴくにっく」という、とてもゆっくりした単語を耳にし、むくり、むくりと起きはじめる。
母れいむが、夢心地の子供たちを引率し、おうちの外に連れ出していく。
しかし、「おへや」の隅にむこうを向いて寝転がったまま、ぴくりとも動かない、末っ子れいむに気付く。


「ゆっ?れいむ、どうしたの?ゆっくりおきてね!おいていっちゃうよ!!」


 親まりさの呼び掛けにも、微動だにせず、眠りこける子れいむ。その後も、親の呼び掛けは続いたが、
一向に目覚める気配がない。痺れを切らせた親まりさが、子れいむに近付き、リボンをぐいぐいとひっぱり始めた。


「ふぇいふ!ふゃっふゃひょほひはいほほいへふほ!(れいむ!さっさとおきないとおいてくよ!)


 親まりさが子れいむのリボンを引っ張った為、自然、ぐるりと体の向きが入れ替わる。
しあわせな夢を見て、実にゆっくりとした表情で眠っているのであろう。
いくばくかの微笑みを湛えて、わが子の安らかな寝顔を想像していた親まりさ。――しかし。


「れいむ、はやくおきな―――ゆ゛っっ゛!?れいむ゛?れ゛いぶっっ!??」


 ごろん、と、力なく転がり、こちらを向いた子れいむの表情は、「安らかさ」とはかけ離れたものだった。
白目をむき、その目を見開き、歯茎をむきだしにしつつ、歯を食いしばっている。
よく見れば、その歯と歯のすきまからは、餡子色をした泡をさえ吹き出し、にじませているではないか。
いくら知能が低く、状況を認識・把握する能力を欠いたゆっくりでさえ、この、常識外れの苦しみを味わい尽くし、
地獄の大鍋の鍋底をさえ舐め尽したとでもいうような、苦悶の表情をうかべるわが子の様子からは、
異変を感じ取らざるを得なかった。


「でい゛ぶ!!!でい゛ぶぅぅぅぅっ゛!!!どぼぢだの゛おぉぉぉおっっっ゛!!!べんじじでよ゛ぼぉぉぉ゛っっ゛!!」


 巣穴の奥からの、けたたましい悲鳴に驚いたのは、ピクニックの準備をすませ、
おうちの前で、ゆっくりと母と姉妹を待っていた、残りのゆっくり家族たちだった。


「ゆっ!?おかあさんのこえだよ!!」
「ゆぅっ、ふつうのこえじゃないよ!!なにかあったの!?」


 にわかに、騒ぎ始める子ゆっくりたち。それを制する母れいむ。


「ゆっ、みんな、おかあさんはなかのようすをみてくるよ!おうちのいりぐちで、ゆっくりじっとしててね!!」
「「「ゆっくりみてきてね!!!」」」


 いったい、何があったというのだろう。まりさは普段、とても温厚で、声を荒げたことなど一度もなかった。
「これからもずっと、ゆっくりとして生きていきたい」という思いに、影を落とすような不安を振り払うかのように、
母れいむは懸命に跳ね飛び、大きな、立派なおうちの奥、こどもべやを目指して駆けた。


 そこで繰り広げられていたのは、想像を絶する惨状だった。
大切な、大切な子供たちの、ちょっと手狭で、寄り集まってゆっくりするには最高のおへやのなかでは、
同じくらい大切な、配偶者のまりさが、見たこともない泣き顔で、喉も裂けよと言わんばかりの声を張り上げ、
わんわん泣いていた。そのかたわらに転がっていたのは、すっかり冷たくなった、わが子の亡き骸であった。
見れば、尋常ではない表情を浮かべているではないか。急速に、母れいむのゆっくりブレインに、
「泣きわめきたい」という衝動がわきあがってくるが、家族のためを思い、必死にそれを制する。


「ばり゛ざ!!どう゛じだの゛!どう゛じでれい゛むのこどもがじんじゃったの!!!ゆ゛っぐり゛せつめ゛いじでね!!!」
「ゆっ…ゆ゛っ…ば…ばがら゛な゛びよおお゛ぉほぉぉっ!!!!い゛づまでもねてるから゛、ゆっぐりおごじだだげなぼびぃぃいっ!!!」


 駄目だ、とても会話ができる状況ではない。母れいむは、こみ上げる涙に潤んだ瞳で、わが子を見つめる。
つい昨日までは、みんなで仲良く飛び跳ねて、とてもゆっくりと暮らしていたはずだったのに。どうして。どうして。
母れいむの頭のなかにぎっしり詰まった餡子の分だけ、この末っ子との思い出も詰まっている。
ゆっくりという種族は、記憶力が乏しいとは言え、家族間の絆は、極めて強固なのである。
母れいむの餡子脳が、楽しかった思い出を求めて、ぐるぐると回り始める。どうして。どうして…!


「ゆ゛うぅ゛っ……!!…………ゆ゛っ??」


 泣きわめいていた母まりさが、しゃくり上げると同時に、ぴたりと泣き止んだ。死んでしまったとばかり思っていた、
子れいむの体が、ぴくりぴくり、とうごめきだしたからである。母れいむのほうも、空想に耽るのをやめて、
わが子に駆け寄った。


「れいむ!れいむ!!まだいきてたのね゛!!!よがっだ!!!」
「よ゛がっだあああぁぁあぁ!!でい゛ぶううっっ゛っ!!!」


 助かった。子れいむは助かったんだ。二匹の心やさしい親ゆっくりは、ない胸を撫で下ろしたい気持だった。ところが、である。
ぴくぴくと、子れいむは、確かに動いているようである。しかし、おかしいのは、浮かべた苦しみの表情にまるで変化がなく、
自発的に「動いている」というよりは、むしろ誰かに「動かされている」という感じなのだ。訝しげな両親。


「ゆぅぅっ…れいむ、どうしちゃったの……」


 もっと近くで、と母まりさが子れいむに近づいた、その時。母まりさは、わが子の皮膚の下でうごめく「何か」を見て取った。


「ゆ゛っ゛っっ!!?」
「ど、どうしたの、まりさ!!!ゆっくりれいむにもみせてね!!」


 母れいむが飛び跳ねて、近寄り、うごめく「何か」凝視する。それは――
まさしく、子れいむの中に詰まった、餡子をむさぼるっていた。しきりに、もぞもぞと動いていた。


「ゆっぎゃぎゃああああああ゛あ゛あ゛ああああああああああああ゛ああああ゛!!?」


 奇声ともいえる、珍奇な悲鳴を、大音声をあげる両親の目の前で、子れいむは何かに「食われて」いた。
それがいる部分の皮膚が大きく盛り上がって、そこから、音がしそうなほどの勢いで、ベコン、ベコンと、
愛しい娘の餡子が吸い取られ、むさぼられていた。丸々と肥えて、元気なゆっくりに育ちつつあった愛娘は、
見る見るうちに、皮とリボンと、つやのない髪を残して、その存在を消し去られてしまった。


「でい゛ぶの゛ごどぼ!!!!だびじな゛ごども゛があ゛あ゛ああああ゛あ!!がら゛っぼに゛な゛っじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「でい゛ぶ!でびぶぶぶっっぽおおおお゛おお゛がががあががががが!!!」


 堰を切ったように、両親の目から涙があふれ出した。さながら滝のようである。こどもべやをマイナスイオンが満たしてゆく。


「ゆ゛っぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でびぶぼごどぼ!!!でびぶのあ゛がじゃ゛ん゛!!!」
「ばびざぼごどぼ!!!!ゆ゛がががああがががが!!!!どぼじでええええぇぇえ!!!」


 泣き叫ぶゆっくりたちを尻目に、成果を見届けた『彼女』は子供部屋を後にする。
そう、『彼女』は、油断しきったゆっくりたちが爆睡していた真夜中に、一匹一匹、ゆっくりと、麻酔を注射し、産卵していったのだ。
そうした卵は、遅かれ早かれ、数日と経たぬうち、孵化して、中から獲物を食い破ってゆくのである。
今回は、一晩で、一匹だけが犠牲となった。若干のタイムラグは、致し方ない。――そうこうしているうちに。


「おかあさんたちおそいね!ゆっくりしすぎだよ!!」
「ほんとだね!!まりさたちまちくたびれちゃったよ!!」
「…ゆぅっ…ゆぅっ……」


 「おうちのいりぐち」で、待ちぼうけを食らっていた子供たち。中には、退屈してしまい、先刻の夢の中へ舞い戻っているものもある。
そんな子ゆっくりたちにも、むろん、分け隔てなく、卵は産み付けられているわけである。現在進行形で、卵は孵化しつつあるのだ。


「おうたでもうたおうね!!!」
「ゆっくりうたおう!!」
「「「ゆ~ゆ~ゆ~♪ゆっゆ~ゆっゆゆっゆ♪」」」
「ゆ~ゆ~……ゆごぺっ!!?」


 突如、一匹の子まりさが、ゆっくりの生命にも等しい餡子を、もりもりと吐き戻しはじめた。顔面蒼白、餡子色の涙を流して。


「ゆっ!?お゛ねえぢゃん、あ゛んごはいじぢゃだめ゛えええ゛ぇぇ゛っ゛!!!!」
「ゆぅぅっ!?どうぢだの゛!!!!!????」
「ゆ゛ぎっ!!ごわい゛よ゛おぉぉおおっ゛!!!!」


 泣き叫ぶ姉妹をよそに、子まりさは痙攣しながら餡子を吐き出し続ける。僅かだった体内の異物感が、ある瞬間を境目に、
爆発的に膨れ上がる、おぞましい感覚。猛スピードで、体内の餡子を食い荒らされて、ものの数分で、子まりさは息絶えた。


「ゆ゛あ゛っ゛!!ぼね゛い゛ぢゃん゛がじんじゃっだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
「ゆぐぐっ゛!!!ごわ゛いごわ゛いごわ゛いごわ゛いいいい゛いいい゛!!!」


 当然のように姉妹たちは泣き叫ぶが、既に、それぞれの体にも、致命的な変化が起こり始めていた。


「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!ぼね゛え゛ぢゃ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!…ゆ゛!!ぶっ゛!???」
「ゆぎゃぴゆぴぃ゛ぃゅ゛ぃぃ゛!!!!!ぎゃ゛い゛い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!…ゆっく ぶびびるっ!!!!??」
「ゆ゛ぴっ!?ぶべるびばぼごぺっっっっっ!!!!!!ぶり゛ゅりゃ゛っ゛!!!!」


 「おうちのいりぐち」は、もはや阿鼻地獄、叫喚地獄の様相を呈していた。子ゆっくりたちは皆、餡子を噴き出して、
滝のような涙を流し、思い思いに泣き叫び、両親の名前を呼び続けた。無慈悲に、ジガバチの幼虫たちが、
子ゆっくりたちを食べ尽くし、いりぐちは静まり返っていた。


「ゆ゛っ゛…ゆ゛っ゛…ゆ゛…お゛があ゛ざん、でい゛ぶを゛ゆ゛っぐり゛だずげで…!!!」


 虫の息の子れいむが、両親のいるはずの、こどもべやへと這いずっていた。
どうやら、体内の幼虫の数が少なく、致命傷には至っていない様子である。その懸命さは、ゆっくりにあるまじきものだった。
こどもべやについたら、おかあさんたちに、きもちわるい虫を取って貰おう。
そして、おいしいごはんを沢山もらって、いっぱいほおずりをしてもらって、傷がなおるまで、
ずっとずっと、ずっとゆっくりしていよう。

 子れいむの餡子脳の奥に、母と言う名の希望の光が燃えていた。
その輝きを原動力に、満身創痍で、ボロ雑巾のような体で這いずってゆく。
おへやの直前の角を曲がった、子れいむの目に飛び込んできた光景は――


 餡子脳が凍りつく、恐ろしいものを見たかのような、驚愕の表情を浮かべた、姉れいむの残骸と、
「ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!ゆっ!……」と、餡子のつまった頭部をむき出しにし、
うわごとのように、意味をなさない言葉を繰り返し続ける、母まりさの姿。
床には、餡子の海が広がっており、その中央には、既に絶命し、苦痛に歪んだ顔をした、母れいむの死骸が転がっていた。
あまりの惨状に、言葉を失った子れいむ。
小刻みに震え、白目を剥いてうわ言を繰り返す、母まりさの頭頂部から、すぽん、と音を立てて、丸々と肥えた、
『彼女』のいとし子が、勢いよく顔をだした。
ある意味滑稽なその音は、絶望の淵にいた子れいむを一押しして、地獄の底へと転げ落ちさせるのには、十分すぎるものだった。

母まりさのうわ言が断絶し、完全な沈黙が、幸福だったゆっくり一家の「おうち」の支配者になり代わる。
『彼女』は満足げな羽音を立てて、最良の繁殖法を見出したことを、喜ばしく思った。








若干、ゆっくりどものせりふが少なかったと後悔しています。
至らないことばかりで、申し訳ありません。
お読みいただいて、ありがとうございました。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月20日 09:03
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。